加山雄三の芸能活動65周年と88歳・米寿の記念で作られた「旅人の詩」 “人生100年時代” と言われるなか、15年前からシニア世代に向けた「座・ロンリーハーツ親父バンド」という曲を発表したグループがいた。その名も、加山雄三とザ・ヤンチャーズ。この曲は、加山の芸能活動50周年を記念して、加山を慕う後輩ミュージシャンと共に制作された大傑作作品。さだまさし、森山良子、谷村新司、南こうせつ、THE ALFEEという名だたるミュージシャンが集結し、年をとることは悪くないと思わせてくれる応援歌を歌いあげた。
時は経ち、2025年。加山の芸能活動65周年と88歳・米寿を記念して、彼らが再び集まり「旅人の詩」という新曲を発表した。2019年には加山雄三&The Rock Chippers名義でロックナンバーを1曲発売しているが、ヤンチャーズ名義では2曲目の作品となる。作詞はさだまさし、作曲は弾厚作こと加山雄三。加山が1960年代に作曲した未発表音源にさだが歌詞をつけた。
加山の部屋で発掘されたデモ音源 きっかけとしては。数年前に自宅の部屋を整理した際、加山の未発表音源が収録されたオープンリールテープがたくさん見つかったのだという。その粒ぞろいの楽曲群から選ばれた1曲が今回の「旅人の詩」で、その元になったデモ音源も9月12日に発売されるCDに収録される。
今回のように、発掘された未発表音源を録り直して新発売することは実は初めてではない。それは自身でリメイクして発表した「紅いバラの花」(2021年)や、加山と最も交流の深いバンドの1つであるザ・ワイルドワンズに提供した「はじまりの渚」(2023年)などで日の目を浴びている。今後も様々な形で加山の未発表音源は公開されていくことだろう。
「旅人よ」をオマージュしたアコースティックナンバー ヤンチャーズというだけあって、1作目の “親父バンド” ではやんちゃなおじさんたちが景気の良いロックンロールを楽しんでいたが、本作は加山の名曲「旅人よ」をオマージュしたというアコースティックを基調としたナンバー。歌割の構成としては、出だしは加山、次にさだが語りかけるように歌い、THE ALFEEが得意の聴き心地の良い3声コーラスでハモる。そして南こうせつがサビに向けて盛り上げるように歌い、森山がサビをパワフルなハイトーンボイスで高らかに歌い上げている。
合間にコーラスが度々入ったり、重みのある印象があったりするため、初めて聴いたときは「旅人よ」に比べて難しい曲だと感じてしまうかもしれない。だが、聴く回数を重ねるにつれて深みが増し、心に沁みる印象深い1曲になっていく。現在ドリーミュージックの公式YouTubeチャンネルにて、真剣でありながら楽しんで録音したであろうレコーディング時の様子がミュージックビデオとして公開されている。そちらもぜひご覧いただきたい。
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さだまさしの作詞による、若者世代にも向けた深いエール サウンドの派手さはないものの、“親父バンド” と共通しているのは人生讃歌であるということ。そして “旅” というキーワードを “人生” に重ね、人生の多面性を比喩的に表現したさだまさしの歌詞は、優しく聞き手に語りかけているようだ。出会いと別れを繰り返し、迷い苦しみながらも希望をもって自分だけの人生を歩んでいこうという、同年代のみならず若者世代に向けた深いエールも込められている。
今回の新曲の発表に至るまで、ヤンチャーズのメンバーには様々な出来事があった。なかでも、コロナ禍におけるライブ活動の制限や、加山の小脳出血によるリハビリ生活、加山のコンサート活動からの引退、そしてメンバーの1人である谷村の逝去。数えきれない苦楽を生き抜いてきた彼らだからこそ、強い説得力と歌の重厚さを感じる。
ヤンチャーズのメンバーによる愛に溢れたステージ 新曲の発表だけでなく、9月12日に『トリビュートライブ 加山雄三のすべて』が東京国際フォーラムホールAにて開催されることも決定している。出演はもちろん、ザ・ヤンチャーズのメンバーだ。チケットは一般販売分のチケットを含め既に完売という盛況ぶりを見せ、当日は加山を愛する約5,000人のファンが集う予定だ。
残念ながら加山の出演はないが、彼へのリスペクトに満ちた、そして人生を音楽と共に楽しむヤンチャーズのメンバーによる愛に溢れたステージになることは間違いないだろう。永遠の若大将、そして船長 “キャプテン” である加山雄三の精神と共に、昔を懐かしむだけでなく、加山サウンドが未来に受け継がれていく起点となるライブになることを切に願う。
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2025.08.10