90年代を代表するロックバンド=オアシス
90年代のロックバンドというと、どんなアーティストが思い浮かぶのだろう?
アメリカでは、ニルヴァーナ、グリーン・デイあたりが順当なところかな。しかしイギリスでは、やっぱりオアシス! そんなイメージが強い。
オアシスは、英国マンチェスターの労働者階級出身で、中心メンバーはギターのノエルとボーカルのリアムのギャラガー兄弟。この2人はフーリガンみたいに素行が悪くて、デビュー当時は酔っ払ってはトラブルを起こしたり、ステージ上でも兄弟喧嘩を始めて、ライブが途中でキャンセルになるなんてことも日常茶飯事。
そのへんにいる、しょーもないヤンチャな兄ちゃんたち… そんなイメージがデビュー間もないオアシスだった。
そして、肝心の音はというと、これがもろにビートルズの影響を受けたメロディーとラウドなギターの組み合わせ。本当に何の工夫もないストレートなロックバンドなのだが、ソングライターのノエル・ギャラガーが作り出すメロディーが神がかっていて、ポップな曲は楽しく、バラードは切なく、1枚のアルバムを全て名曲で埋め尽くすほどの力量だ。
特にメロディーメーカーとしての絶好調ぶりをこれでもかと発揮した作品がセカンドアルバム『モーニング・グローリー』(1995年リリース)だ。
世界のトップバンドへ登りつめたオアシス
本作は、セールスもとんでもない実績を残しており、イギリスでは歴代5位となる470万枚、全世界では2500万枚という天文学的なセールスを記録し、世界のトップバンドにまで登りつめた。
しかし、本作は、クリエイション・レコーズからリリースされており、インディー・レーベル所属のアーティストがこれほどまでのメガセールスを記録するなんてことは、それまでの音楽シーンではありえなかった。しかし、インディー・バンドでも世界のトップを狙うことができるのだと証明したエポックメイキングな作品となった。
さて、本作のリリースの少し前にオアシスは日本で来日公演を行っている。幸運にもその時のライブを私は体験できたのだけれど、会場は新宿歌舞伎町にあったライブハウス「リキッドルーム」だった。世界の頂点を極める目前のオアシスをオールスタンディングのハコで体験できたことは貴重な経験だし、もちろんライブも素晴らしいものだった。
なぜかレコードで買いたくなってしまうオアシス
さて、話をアルバム『モーニング・グローリー』にもどそう。
このアルバムの主な収録曲を紹介しようかな… って思ったのだが、そんなことは、ネットで検索するとガンガン出てくるし、私が書けることと言ったら、とにかくメロディーがヤバい、素晴らしい、泣ける、ライブでは大合唱… みたいな当たり前の話になってしまう。
そんなわけで、このアルバムとの出会いという個人的なことを書かせて頂こう。
このアルバムがリリースされた時、私は23歳。大学を卒業してサラリーマンとして働き始めて、1年半が経過した頃だった。そして、このアルバムを買ったシチュエーションは、大学時代の後輩と渋谷で飲む約束をしていて、待ち合わせの前に渋谷HMVでリリースされたばかりの新譜アナログ盤(レコード)として購入した。
本作はアナログ盤だと2枚組、価格はCDより高かったと思うのだけれど、2枚組は一般的にレコードに刻む溝のカッティングレベルが高く、CDより音質が良いと言われていたので、レコードで購入したのだった。しかしそれ以上にオアシスというバンドの特徴であるビートルズ直系のイギリスらしさ、パンクロック以降の素行の悪さからくる不良っぽさ、マンチェスターの労働者階級出身といったイメージから、私は彼らにロックンロールバンドらしさを感じていたし、そんなイメージも大好きだった。
そして、彼らはきっと歴史に名を刻むバンドになるはず! しかも、名曲オンパレードのセカンドアルバム『モーニング・グローリー』は時代を象徴する名盤になるに違いないという直感が働き、そんなアルバムであれば、是非ともアナログでコレクションしたいと思わせたのだ。
決してナツメロにならない「モーニング・グローリー」そして途絶えない再結成の噂
そんなことを感じながら買った『モーニング・グローリー』もリリースから28年が経過し、私も50代になった。
でも、オアシスの『モーニング・グローリー』の瑞々しさと力強さは未だに鮮烈に私の耳を捉えている。端的に言うと、今の今までナツメロになることなく、リアルなロックンロールとして鳴り響いているのだ。
そんなオアシスも2009年に解散している。解散後、中心メンバーのノエル・ギャラガーはソロ活動を行い、コンスタントにアルバムをリリースしている。
弟のリアム・ギャラガーもビーディ・アイというバンド活動を経て、現在はソロシンガーとして活躍中だ。ギャラガー兄弟が充実したソロ活動を続けているにも関わらず、オアシスの再結成の噂や待望論は常に囁かれており、そんな噂や話題かが出るたびに兄ノエルが再結成はありえないというコメントを出すのが、ギャラガー兄弟のお約束となっている。
君は再結成に賛成? それとも反対?
私個人としては、オアシスは再結成しない方が良いと思っている。それは、ギャラガー兄弟がそろって充実した活動をしているし、リリースされるソロ作品もとても聴き応えある作品ばかりだからだ。
特に兄ノエル・ギャラガーはハイ・フライング・バーズというバンドを率いてアルバムを出しているが、その作品でもメロディーメーカーとしての才能は存分に発揮されている。王道のブリティッシュロックの憂いを帯びたメロディーを落ち着いたアレンジで聴かせてくれる作風を中心にしつつも、アルバムによっては、ダンスビートやサイケなアレンジを導入。その全ての作品が圧倒的なレベルの高さとなっている。
天才ノエル・ギャラガー、新作リリース
さて、2023年6月2日には、ノエル・ギャラガー・ハイ・フライング・バーズの5年ぶり4枚目のアルバム『カウンシル・スカイズ』が全世界同時リリースされる。
本稿執筆時点では、アルバム全編を聴くことはできていないのだが、収録予定曲10曲のうち先行配信されている4曲を聴く限りでは、相変わらずメロディーメーカーとしての天才ぶりを存分に発揮してくれている。
90年代のイギリスのロックは、UKロックとかUKインディーと呼ばれることが多いが、ソロになってからのノエル・ギャラガーが鳴らすサウンドは “ブリティッシュロック” と言いたくなる重厚さと奥深さで、まさにビンテージワインのような芳醇な味わいだ。
そんな極上なメロディーとサウンドに是非とも酔いしれてみてはいかがだろうか!
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2023.05.30