1992年 10月28日

未練たっぷり? 稲垣潤一「クリスマスキャロルの頃には」はなぜ毎年流れ続けるのか?

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クリスマスは猫も杓子もカップルで過ごす甘美な時代


クリスマスはカップルで過ごす日、という流れになってきたのは、1980年代以降。それまではクリスマスは家族で過ごす日だった。1980年12月発売に発売された松任谷由実さんのアルバム『SURF&SNOW』収録の「恋人がサンタクロース」で、となりのお姉さんをサンタが連れて行ったきり―― という歌詞があり、このあたりが起爆剤になったのだろう。1983年12月の雑誌『anan』で、「クリスマスイブは素敵なレストランで過ごして、そのあとシティホテルに泊まり、ルームサービスで朝食を摂りたい」という記事がある。

私が大学1回生だった1984年、ホテルには泊まらないものの、クリスマスに当時の彼氏とふたりで郊外へドライブデートしてレストランで晩御飯を食べた。1980年代半ば以降、バブル景気もあって、カップルのクリスマス事情はどんどんエスカレートし、クリスマスをひとりで過ごすのは恥ずかしいような風潮さえあったように記憶している。猫も杓子もカップルで過ごしていたクリスマス時期だった。今思うと、ほんとうに甘美な時代であった。

ドライブデートにはBGMとなる音楽も大事だ。クリスマスの時期を盛り上げるには、やはりクリスマスをモチーフとした楽曲が欲しい。80年代の日本のポップスはそのあたりも狙ってきた。洋楽ではそれまでにも「ママがサンタにキッスした」や、カーペンターズの「Merry Christmas, Darling」をはじめとしたクリスマスソングがあったが、さきのユーミン以降、山下達郎さんの「クリスマス・イブ」をはじめとして、日本のポップスでもクリスマスをモチーフにした曲が増えてきた。流行歌・歌謡曲はその昔から時代を反映してきたが、日本でクリスマスソングが1980年代からバブル期に増えたのもその一例だろう。



1992年の歌謡曲「クリスマスキャロルの頃には」


前置きがやや長くなったが、「クリスマスキャロルの頃には」は、1982年にデビューした稲垣潤一さんが1992年に発表した27枚目のシングル。それまでにも稲垣さんはクリスマスを題材にした曲として、シングル「メリークリスマスが言えない」を1990年に発表している。ロマンティックな曲を多数発表している稲垣さんなので、もっと多くのクリスマスをモチーフにした曲を発表していると思っていたが、意外に少ない。

タイトルこそ「クリスマスキャロルの頃には」だが、よく知られているように楽曲の時制はクリスマス時期とは異なる。寺尾聰さんの「ルビーの指環」やEW&Fの「September」といった、想い出を歌う系の曲の楽曲とは逆の、きっと別れてしまう、カップルにとって明るくない未来について歌った楽曲だ。秋元康さんによる詞は、表面的には距離を置こうという言葉の裏に、未練たっぷりの男の情けなさを感じる。

私は、この楽曲を “1992年の歌謡曲” だと考えている。

歌詞に着目すると、楽曲に登場する男性は、情けない男、優しい男の唄が目立つ。強く、ぐいぐい引っ張っていくタイプではない。そういう男性の唄だからか、女子に圧倒的な人気がある。80年代から90年代にかけて、女子に「どんな男性が好き?」と聞くと、優しい男性が好き、と判を押したように返ってきたものだった。女性が強くなってきた時代だからなのだろうか。

稲垣潤一、初のオリコンチャート1位を獲得した楽曲


「クリスマスキャロルの頃には」は、稲垣さんがはじめてオリコンチャート1位を取った楽曲。それまでCMのタイアップは稲垣さんの楽曲には多数あったが、ドラマ主題歌のタイアップはこれが初めて。(TBS系ドラマ『ホームワーク』1992年10月〜12月)ドラマ自体も作詞の秋元康さんが企画に加わっている。

この『ホームワーク』というドラマ自体も、強い女性が目立つドラマ。主演の唐沢寿明が演じる男性は、一見明るく調子がいいが、どこか情けない男性に見える。清水美沙さんや浦江アキコさんが演じる女性陣のほうが強い印象を受ける。



ちなみにこのドラマの第4話に稲垣潤一さんと、稲垣さんのプロデューサーである重実博さんがカメオ出演している。TVドラマデビュー4作目の福山雅治さん演じるダメ男、滝本周二が以前に一緒に仕事をしていたドラマーの役で、稲垣さんはほんの数秒だが出演している。Paraviで視聴可能なので、ご興味がある方は視聴されたい。

強めの女性と情けない男性、2組のカップルが織りなすドラマの主題歌として作られた「クリスマスキャロルの頃には」。頭サビからAメロ、Bメロ、サビという王道のJ-POP構成。イントロや間奏にもわかりやすいフレーズが入って、どこから聴いても「あ、クリキャロ」という、非常にわかりやすい楽曲だ。既にJ-POPと言われる時代の王道ポップスなのだが、ポップな曲に載せて歌われることばは “未練” に溢れており、歌謡曲が「歌を謡う曲」であるという観点では、1992年の堂々とした歌謡曲といえる。

カラオケでもよく歌われている。おじさんたちがバックビートでない前打ちの手拍子で歌っている現場に、何度となく遭遇したものだ。これも私が1992年の歌謡曲であると考える理由のひとつ。

だからこそ、発売から30年経過したいまでも残っている。「クリスマスキャロルの頃には」は、大衆の耳に残る歌謡曲だからこそ、消えずにずっと、クリスマスが来る頃に毎年流れる唄として認知されているのだ。

特集 夏の終わり -Growing up-



2022.12.16
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カタリベ
1965年生まれ
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