1998年 2月18日

【平成の春うた】SPEED「my graduation」卒業は新しい旅立ち!昨日までの自分にさよなら

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リレー連載【昭和・平成の春うた】vol.7
my graduation / SPEED
作詞:伊秩弘将
作曲:伊秩弘将
編曲:水島康貴
発売:1998年2月18日

少女たちが歌う卒業ソング「my graduation」


春といえば “卒業” 。卒業をテーマにした曲はこれまでにもたくさんの名曲が生まれてきた。松任谷由実の「卒業写真」や、尾崎豊、斉藤由貴、菊池桃子がそれぞれ歌う「卒業」など。タイトルに “卒業” の文字がない歌まで含めればキリがないほどだ。それだけ “卒業” は物語になりやすい。別れであり、旅立ちでもあり、その先には希望も詰まっているからだ。

中でも、SPEEDの「my graduation」は、せつなく、強く、何より清らかだ。歌っているのが14歳〜17歳の少女たちだからだろうか。

1995年日本テレビ系音楽バラエティ番組『THE夜もヒッパレ』に、きら星のごとく登場した4人組ダンス&ボーカルグループSPEED。翌年1996年に満を持して「Body & Soul」でメジャーデビューを果たすと、瞬く間にスターへと駆け上がっていった。デビュー当時の平均年齢が13歳という幼さがウソのように、ダンスも歌も抜群で多くの人の心を掴んだ。

SPEED最大魅力は歌声とキャッチーな楽曲


SPEEDのメインボーカルを務めたのは今井絵理子と島袋寛子。ダンス&コーラスを新垣仁絵、上原多香子が担った。SPEED最大の魅力といえば、その歌声とキャッチーな楽曲にある。メインボーカルの2人のハイトーンボイスは本当に素晴らしかった。よどみがなく、凜としていて、無邪気さの中にもどこか憂いを持ち合わせていた。ハイトーンだからこそ、聴く人の心の奥に眠る “キュン” を引っ張りだし、心の繊細な部分を刺した。

この曲のテーマは、タイトルが “卒業” ではあるけれど、いわゆる学校を卒業したり、仲間たちとの別れや光景が描かれた通常の “卒業ソング” ではない。春の卒業シーズンに聴きたくなるタイトルではあるが、歌詞の中に卒業式や学校を意識する描写は一切出てこない。それでも、別れの先にある春の光に包まれた一筋の希望のようなものを感じずにいられない。

10代前半の女の子たちが歌う “あの頃へ戻りたい”


歌詞をたどっていくと、恋の終わりを振り返る姿がせつせつと描かれている。

大切な人に出会えたことに感謝しながら、2人の思い出が綴られていく。初めてのKiss、喧嘩して仲直りした日のこと、クリスマスにくれたプレゼントのチョーカー… 時系列に思い出たちが溢れていく。

別れの理由は分からない。けれど、互いに気持ちを残しつつ別れを選んだ恋ということはなんとなく伝わってくる。10代前半の女の子たちが “あの頃へ戻りたい” と歌うところがなんだかすごい。10代という若さなのに、なぜか大人が聴いても心に響き、そこには説得力がある。春らしい希望に満ちた歌の世界に素直に引き込まれていく。それこそがSPEEDのすごいところだ。

 いつかまためぐり逢う 
 終わらない今日は私の
 my graduation

 人はいつか旅立つ 
 幼かった昨日の私に 
 さようなら

歌詞の中にはこのようなフレーズがあり、「my graduation」がこの恋への決別と、恋をした自分からの卒業を歌った曲だと分かる。

賛歌のような島袋寛子のハイトーンボイス




ミュージックビデオもとても印象深い。歌詞に登場する、彼からプレゼントされたチョーカーのアップのシーンから始まる。ちなみにこのチョーカーが欲しいという声が集まり、ファンクラブ内で発売されたのだとか。

そして、なんといっても一番印象深いのが4人が輪になって歌うシーンだ。4つに枝分かれしたマイクスタンドに向かって歌う4人。輪になって歌う4人の表情からも悲しみとせつなさが漂ってくるのだが… そんな少女たちの表情が変わるのが最後のフレーズの部分だ。

 あなたと過ごした青春
 輝きはずっと色褪せない
 my graduation

この最後のフレーズを歌い上げたときの4人の表情は一変、笑顔へと変わる。まるで恋を断ち切り浄化されたかのように…。これは、せつない恋にさよならをし、明日への扉に手をかけた瞬間の表情だ。どんな女性も恋を吹っ切ったときというのは、なぜかとてもいい表情になる。思い出を振り返り、最後は前を向き、明るい未来へと歩き出していく心情の変化を彼女たちの表情が物語っている。最後のフレーズを歌い上げた島袋のスーパーハイトーンボイスは、まるで賛歌のようだ。

渡辺美里や、久宝留理子などを手がけた伊秩弘将サウンドの集大成


SPEEDが幅広い世代に支持されたのは、圧倒的な歌声と、作詞・作曲、プロデュースを手掛けた伊秩弘将の力が大きかったように思う。渡辺美里や、久宝留理子などの楽曲を手掛けてきた伊秩サウンドの集大成がSPEEDのサウンドであり、知らず知らずのうちにそれらの曲に触れて育ってきた大人たちにとってもSPEEDの曲は耳馴染みが良く、年齢という壁を感じさせなかった。

また、SPEEDのダンスも親しみやすさが感じられてよかった。安室奈美恵の神の領域のようなダンスパフォーマンスではなく、カラオケで誰もが真似して歌えそうだった。だからSPEEDは、身近な存在にも感じられた。「my graduation」は未来を示唆するような輝きに満ち溢れている。それは春の陽射しのように暖かい。

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2024.03.29
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