1998年 2月11日

持田香織の歌声が響く ELT 初のバラード「Time goes by」90年代における最上級の名曲!

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3人体制時代のEvery Little Thingの絶大な人気ぶり


90年代のJ-POPシーンの特徴的な現象の1つに、女性のボーカリストを立てた男性2人、女性1人の3人組ユニットが挙げられる。80年代終盤のDREAMS COME TRUEの成功によるところが大きいが、Every Little Thing、通称ELTもその代表的なグループだ。

ELTはボーカルの持田香織、ギターの伊東一朗、リーダーでキーボードの五十嵐充の3人組。2000年に五十嵐が脱退し、現在は持田と伊藤の2人体制であるが、大ブレイクを果たした3人体制時代の絶大な人気ぶりも記憶に新しい。1996年8月にレコードデビューした彼らが、シングル最高売り上げを記録したのが、98年2月にリリースされた通算8作目の「Time Goes By」だった。

持田香織のノーブルなボーカルで表現された「Time Goes By」


「Time Goes By」は、ELTのシングル曲としては初のバラード。作詞、作曲を手がけたのは五十嵐充。穏やかで切ないメロディーラインと、繊細なリリックによって、時の経過とともに訪れたカップルの恋愛感情の変化が、きめ細やかに描かれている。これが持田香織のノーブルなボーカルで表現されることにより、聴き手の心の襞に触れる。

長く交際を続けてきたカップルが、ぶつかり合ううちにいつの間にか当たり前の愛し方を忘れていた。それに気づいた主人公は、タイトル通りTime Goes By = “時が経てば… いつかまた笑って会えるといいね” と最後は自身の正直な思いに向き合っている。ここで描かれる恋愛中のさまざまな出来事は、恋をした者、苦い別れを経験した者なら男女問わず誰もが受け止められる思いなのである。

こういったさりげない女性心理を、具体的なアイテムを用いて表現する五十嵐充の歌詞こそが、多くの女性リスナーを惹きつける点でもある。例えば、1作前の「Face the change」ではーー

 黒いベロアのワンピース
 欲しくておねだりよくしたね

という歌詞がある。「Time Goes By」のミュージッククリップで、持田のまとう、黒いキャミソールのワンピースや赤いワンピースは当時のトレンドでもあり、前作とのイメージの連動もはかられている。そして、その詞もまた、まるで持田香織自身が思う感情、発した言葉のように聴き手に伝わる効果があるのだ。

だが、「Time Goes By」の歌詞には、具体性のあるアイテムやディテールはなく、女性の心象だけで構成されている。「For the moment」や「出逢った頃のように」など、爽快感に満ちたポップチューンが中心だったELTが、初のバラードを発表するということで、その曲調にふさわしく、徹底して心象のみで語られているのだ。



ELT伊藤一朗の出自はハードロック


ELTをELTたらしめている要素は他にもある。それは、2番の後の間奏で聴ける、伊藤一朗のギターソロだ。

淡々と美しいメロディーを奏でるキーボード主体の演奏は、3人時代のELTならではだが、そこに差し込まれてくる伊藤のソリッドなギターソロも、このグループの特徴的な音だった。煌びやかなキーボードの音色に、ハードなギターが絡むスタイルは、その後のエイベックスの王道的なサウンドメイクとなり、以降、同社からデビューしたday after tomorrowやgirl next doorらにも通じるスタイルとなっていく。

ELTの誕生は、アイドル活動をしていた持田香織の歌声に、ZARDのような魅力を感じていたエイベックスの松浦勝人が、当時スタジオの電話版だった五十嵐充に楽曲を作らせ、この2人のユニットで売り出そうとしたことがきっかけである。当初はユーロビート系サウンドで行く予定だったが、曲に深みを与えるために、生音が欲しいと感じた五十嵐が、大学時代のバンド仲間だった伊藤を誘って3人体制となった。

横須賀出身の伊藤は元々、X JAPANのHIDEが結成したSAVER TIGERの弟バンド、The ACEのリードギタリストで、出自はハードロックなのである。伊藤は『ギター・マガジン』2019年11月号での、Do As Infinityの大渡亮との対談では、自身の存在は3番目のメンバーであり、「菊正宗を買うとついてくるおしゃれ小鉢のような存在」と冗談めかして語っている。

ことのほかアグレッシブだったELTのライブ


90年代からゼロ年代初頭までのJ-POPには、ポップなメロディーラインを持ったデジタル主体のサウンドに、エッジの効いたハードなギターソロが突っ込まれるケースが往々にしてある。もちろんポップスの範囲内であり、楽曲全体の構成を破壊してしまうものではないが、デジタル化が定着しつつあったサウンドの中で、人間的な感情を表現できるアナログな音が、こういったギターソロだったのだろう。

そのスタイルが顕著だったのがELTであり、このグループにおける伊藤のギターは、打ち込みに人間的な温もりを感じさせる必須のプレイだった。故に「Time Goes By」のようなバラード曲でもなくてはならない存在だったのである。伊藤のハードロック的センスが、通常、打ち込みのポップスではスポイルされてしまうところ、1つの楽曲の中で無理なく両立させているところがこのユニットの凄みでもある。

実際のライブではCD音源とはまた違っていた。アドリブを交えたギターソロを披露することが多く、バッキングに至っても、巧みなピッキングハーモニクスを入れたりと、他にないユニークな魅力を発揮していた。持田のボーカルもスタジオ音源とは異なり、凛々しく力強いパフォーマンスで歌われるため、ライブでのELTの印象は、ことのほかアグレッシブだった。

「Time Goes By」は、オリコンチャートでは2位止まりであったが、ミリオンセラー超えのセールスを記録し、彼らの最大のヒット曲となった。同年のJASRAC著作権使用料分配額の、国内作品ランキングで年間1位を獲得している。同年1月よりスタートしたフジテレビ系ドラマ『甘い結婚』の主題歌となったのちも、 TOYOTAやソフトバンクモバイルなどのCMに起用され、また2000年代以降は徳永英明、広瀬香美、井上昌己、JUJUら幾多のアーティストにカバーされ続け、90年代J-POPを代表する名曲として愛され続けている。

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2024.02.11
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