2024年 6月1日

【中村 中 インタビュー前編】歌謡曲を愛する人たちのライブ「歌謡サスペンス劇場」開催!

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中村 中のライブ「第一回歌謡サスペンス劇場」開催日(日本橋三井ホール)
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中村 中一夜限りのライブ、「第一回歌謡サスペンス劇場」


シンガーソングライターの中村 中が、6月1日、日本橋三井ホールにて一夜限りのライブ『第一回歌謡サスペンス劇場』を開催する。今回のライブは中村にとっても初の試みで、歌謡曲の奥深さを味わうべく中村自身が企画したもの。ゲストに一青窈を迎えるほか、劇団『good morning N°5』の主宰者で劇作家の澤田育子が脚本を担当し、歌謡曲にちなんだ劇中劇も披露される。中村が歌謡曲を通して新たに聞き手と共振する、その開催に向けての意気込みを伺った。

―― 今回『歌謡サスペンス劇場』のライブを開催するきっかけとなったのは、どんなことだったのでしょうか。

中村 中(以下:中村):きっかけは2つあって、1つは私のルーツに歌謡曲があるということ。中学の時に、研ナオコさんのCDを聴いて、その出立ちも歌声も、なにより自分の弱さや情けなさを包み隠さず吐露するような歌世界に惹かれました。研ナオコさんに楽曲を書いている作家陣を辿りながらフォークやムード歌謡、アイドル歌謡も聴くようになりましたね。学生の頃は周囲の人たち… 学校で会う人や、家族とコミュニケーションがうまく取れなくて悩んでいました。

学校では何故か揶揄われたりもしていたので、そうなると、周りの人たちが好きな当時流行っていた曲も好きになれなくて。だけど、研ナオコさんの歌を聴いて、好きだなって。しっくり来たんだと思います。はじめて聴いたのは「泣かせて」という曲でした。研ナオコさんが歌っているのをテレビで見て、“悲しい出来事は、どう化粧をして体裁を整えようとも、悲しいのだ” ということを歌われていて、その通りだなって。歌があるんだ、と思ったんです。

――「泣かせて」は小椋佳さんの作詞作曲ですね。

中村 はい。私はこの歌から、当時の周囲の大人や同級生からはもらえなかった言葉をもらったような気がしました。励ましの言葉など何の役にも立たないと思っていた学生時代だったので、“あなたの言葉より今は安い流行歌の方がまし” という歌詞はすごいなと思いました。10代の頃は、自分の悩みを周囲に話しても理解されないだろうと思っていて、孤立していたんです。唯一心を許せたのが音楽であり、歌謡曲でした。そこから、弘田三枝子さん、ちあきなおみさん、美空ひばりさんなど、いろいろな歌謡曲を聴くようになりました。

自分は何者なのか、どうして生きていったらいいのか、そもそもなんでこんなに毎日悩まなきゃいけないのか。そこから解放されるヒントを、人よりも音楽から貰ったような気がするので、歌謡曲には心の拠り所になっている曲がたくさんあります。それだけ好きなら、そういうライブをやってみようと思ったのが1つ。2つ目は、去年までコロナ禍の影響で、活動が制限されたりと苦しい状況が続いていたので、その反動もあると思うのですが、面白いと思ったことをどんどんやってゆきたいと思ったことです。

バイブル的な、心の支えになっている「かもめはかもめ」





―― 先ほどお名前の出た研ナオコさんは、中島みゆきさんの楽曲も数多く歌われています。「泣かせて」にしても、みゆきさんの書かれた楽曲にしても、どこか悲しい気持ちになっても、それを安易に励ましたりエールを送ることはせず、悲しみや不幸の感情をそのまま歌うことで、同じような気持ちの人たちの心に寄り添える曲になっていると思います。

中村:ええ。私はごく自然に「泣かせて」と出会ったのですが、傷を負ったらすぐ手当てみたいなことを言わないところが好きなのかもしれません。「泣かせて」と同様に中島みゆきさんの書かれた「かもめはかもめ」も、私のバイブル的な、心の支えになっている曲なんです。“あきらめました” という言葉に一生支えられて生きていくのではないかと思うくらい。本当は理想の生き方があるのに、なぜそうなれないのか?という悩みに囚われて苦しかった時に、"できることしかできない” と思わせてくれた1曲です。

鳩のように群れでいることも苦手だし、孔雀のように羽を開いて誰かを喜ばせられるわけでもない。そういう自分でも似合いの場所というものがあるのだと。そういう考えを歌という形で表現してくれる人がいるんだな、と思いましたから。

―― 中村さんはこれまでにも、2018年に『中島みゆきリスペクトライブ』に出演されたり、中島さんが定期的に開催されている『夜会』にメインキャストとして出演されたりと、ご縁があります。やはり中島さんへのリスペクトは大きいようですね。

中村:そうですね。ずっと楽曲は聴いています。はじめて買ったみゆきさんのアルバムは『愛していると云ってくれ』でしたが、いきなり語りから始まるのにびっくりしました。名盤ですよね。今日の時点で一番好きな曲は『臨月』というアルバムに入っている「友情」という曲です。

怖いだけじゃなく感動が立ち上がる「あなたならどうする」


―― 過去に中村さんが聴いてきた歌謡曲が、創作の上で与えた影響というのはありますか?

中村:あると思います。“疑う目線” が備わったというか、歌謡曲の、一聴すると甘酸っぱい恋の歌のように聴こえても、最後までよくよく歌詞を読んでみると凄く恨んでる歌だったりしますよね。元気な歌を聴けば元気が出るといった感覚をまず疑うタイプなので。そんな単純だったら世の中みんな元気だよ、って思うので。自分の楽曲も、そういう構造とかは影響を受けていると思います。

―― 例えば、どのような歌謡曲にそれを感じましたか?

中村:いしだあゆみさんの「あなたならどうする」には、曲の途中にゾクっとするフレーズがあって。ゾクっていうのは怖いってことじゃなくて、感動が立ち上がるんです。あの歌は、自分の元から大切な人が去っていったシチュエーションを歌っていますけど、途中までは歌の出来事が歌われていたのに、突然サビで「ところであなただったらどう立ち回る?」と聞き手に委ねてくるような歌詞になっていて驚きました。話しかけられたんですけど。みたいな。

―― それこそタイトルの “あなたならどうする” の連呼の後、こちら側に問いかけてくるところは、今聞いても斬新です。作詞はなかにし礼さん。

中村:歌を聴く時、聴き手がどこまで曲に足を踏み入れて聴くかは人それぞれですが、何も考えず聴いて、心地よければ良いと、一線をおいて聞いている人もいるでしょう。でもこの曲は歌の方からその関係性を壊してくる感覚があるんです。しかも “泣くの 歩くの 死んじゃうの” って3つも選択肢をくれるんだ、っていうか1個は死んじゃうんだ、みたいな(笑)。こういう音楽の構造が面白いし好きなんですよね。


私ならこうやって解釈する誤読の良さ




―― なるほど、主役が聴き手に移っていくところの面白さですね。

中村:あとは歌謡曲に限らずですが、誤読の良さというか、勘違いしたまま聴いてみる楽しさもあります。作家の人はどう思われるのか分かりませんが、“私ならこうやって解釈する” 的な聴き方ができるのも面白いですよね。

―― 例えばどのような曲でしょう。

中村:太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」。あの曲は都会に旅立った恋人と、ふるさとに残った主人公との手紙のやり取りが歌われていますが、相手が都会に行った以降は顔を合わせてないじゃないですか? 頼りとなるのは手紙の文字だけ。でも本当に本人が書いたものか、どうやって確認するんだろうとか、写真も送られて来たけど、誰が撮ったんだ? とか。

―― 本当にサスペンス劇場ですね。推理が入っている。

中村:ふるさとに残された主人公の “信じる” という気持ちだけで成立している関係ですよね。私が疑り深い性格だから、これ、本当は恋人が書いていない手紙なんじゃないか?って思って聴いてしまった日があって、そう考えて聴いてみたらゾっとしたんですよ。

―― 今回の『歌謡サスペンス劇場』を開催するにあたっての中村さんのコメントに、 “歌謡曲を聴いていて、その歌詞に耳を疑ったり、ゾッとした経験はありませんか?” という問いかけがありましたが、そういうことなんですね。今の解釈を聞いて、ちょっとゾクっとしました。

つまらない歌詞を書いたら承知しないわよ


――ところで、中村さんにとって魅力的な歌謡曲の作詞家では、どなたがおられますか?

中村:吉田旺さん。

―― ちあきなおみさんの「喝采」の作者ですね。

中村:阿木燿子さんも好きです。阿木さんとは対談させていただく機会があり、その時に “あなたの歌には “荷物” という言葉が多いわね” と指摘してくださったり、 “私と同じくらいの年代に生まれても面白かったかもしれないね” と言ってくださったことがありました。そして別れ際に “つまらない歌詞を書いたら承知しないわよ” と言ってくださいました。とてもありがたい言葉で、今も励みになっています。面白いものじゃなくちゃ意味がないのよ、と言われた気がして。大切にしている言葉です。阿木さんの作詞で、荒木由美子さんに書かれた「ミステリアス・チャイルド」という曲があるんですが…。

―― “♪子供が見てたの” という曲ですね。あれ、怖いですよね。

中村:あの歌が大好きで!大人の情事を子供が見ているというシチュエーション。なんか、すごい角度から歌詞を書かれるなあと思いました。

―― 歌謡曲の歌い手でお好きな方は。

中村:やはり、ちあきなおみさんです。佐良直美さんも好きです。「いいじゃないの幸せならば」は、悟りの境地ですよね。佐良直美さんのような歌の物語をそっと語り聞かせるような歌い方も好きですし、ちあきなおみさんのように、まるで芝居をしているかのように、歌の主人公の息遣いや体温までもが感じられるような歌い方も好きです。

―― 佐良さんは「いいじゃないの幸せならば」ではクールな歌い方をされているので、聴く側の感情が載せられるのかもしれませんね。


(取材・構成:馬飼野元宏)


第一回歌謡サスペンス劇場


▶ 公演概要
・2024年6月1日(土)
・日本橋三井ホール
・16:15開場 / 17:00開演
・全席指定 7,500円(税込)
・入場時ドリンク代 600円(税込)

▶ 出演:中村 中
▶ ゲスト:一青窈
▶ バンドメンバー:真壁陽平(Guitar)/ 大坂孝之介(Keyboards)/ 千ヶ崎学(Bass)/ 榊原大祐(Drums)
▶ 脚本:澤田育子(good morning N°5)

▶ お問い合わせ:
キョードー東京 0570-550-799(平日 11:00〜18:00 / 土日祝 10:00〜18:00)
▶ オフィシャルサイト:
https://atarunakamura.com/contents/714115

【中村中インタビュー 後編】は、5月12日(日)に掲載予定です。お楽しみに!

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