GLAYデビュー30周年、超満員のベルーナドーム
曇り空だけど、今日はこのくらいがいいかもネ!
時折涼しい風が吹く中、超満員3万人のバディ(GLAYファン)が続々と詰めかけるベルーナドーム(旧:西武ドーム)に、オープニング前のMCが流れる。
そう、これくらいがちょうどいい。25年前の1999年7月31日、幕張メッセ駐車場の特設ステージは灼熱の太陽を避ける場所もなく、20万人の野外コンサートという未経験の出来事に期待と興奮が渦巻いていた。当時、雑誌編集者として取材をするほうも初体験の規模だった。ライブが始まってステージ近くまで移動するのに4〜5曲を要した記憶がある。
その1999年が25年前であり、GLAYがデビュー30周年ということに改めて思いを馳せる。彼らはなんとデビュー5年でそこにたどり着いたのだ。そのスピードと、短期間に圧縮された高密度の音楽と存在を思う。
あの時のわけのわからないうごめく空気は、2024年6月9日のベルーナドームでは感じられない。涼しい風が吹き抜ける空間に、成長し大人になり、子供連れ、家族ぐるみで楽しみに来た── という姿をスタンドのあちこちで見かける。一方アリーナからはサウンドチェックのギターの音に素早く反応し歓声が上がる。
一瞬のタイムスリップ、1999年の夏が噴出
photo:田辺佳子空気が一変したのは、ステージ上方3面の巨大なスクリーンに30周年のメンバーの映像が映し出され、湧き上がる期待に膨らんだセンターステージのバルーンが弾けメンバーが現れた瞬間。TERU(Vo)、TAKURO(G)、HISASHI(G)、JIRO(B)それぞれが1999年の夏を彷彿とさせるイメージやモチーフで登場。一瞬のタイムスリップ、1999年の夏が噴出する。
元々ファン投票で決まった『GLAY EXPO ’99 SURVIVAL』の再演だ。大ヒットシングルが惜しみなく披露される。「口唇」「グロリアス」「サバイバル」「Yes, Summerdays」「HOWEVER」… 繰り返しになるが、驚くことに全てデビューから5年の間にリリースされたビッグヒットばかり。
スクリーンに映し出される歌詞で、改めて内在するイメージを再構築しながら聴くヒットシングル。心地よいメロディに乗りながら、“♪もう迷わない もう戻らない” という力強いフレーズが心に残る「生きてく強さ」をはじめ、どの曲にも印象的な単語や言葉が散りばめられていることに改めて気づく。琴線をくすぐるバラードにも、全身を揺り動かすハードなロックチューンにも、それこそパンキッシュなフレーズを叫ぶナンバーにも、気づきとカタルシスが存在する。
自らが開拓してきたJ-ROCKという大地に、さらに色鮮やかな作品が咲き誇る
photo:田辺佳子筆者は、GLAYではTAKUROを取材する機会が多かった、共に好きなビートルズの話で、彼は “ビートルズは1本のロープの上を、ポップとアヴァンギャルドのバランスをとりながら渡っている── のがいいんですよ… ” と話してくれた。どちらに傾き過ぎても落ちてしまう緊張感のなか、それを見事なバランスで軽々と渡る姿を見せる。そのスキルと感性、それはデビュー30年を迎え、尚も進んでいくGLAYそのもの。
25年前のコンサートの再現であるはずがなかった。60〜80年代の先達からバトンを受け取り、自らが開拓してきたJ-ROCKという大地に、さらに色鮮やかな作品が咲き誇る。“もしこの人がいてくれたら…” と空を仰ぎながら大先輩hideの曲「MISERY」を歌うTERU。hide本人のライヴ映像も交え、メンバーそれぞれも何度も天に向かい指をさし思いを伝えた。そしてパンキッシュな「COME ON!!」、ハードコアな「ACID HEAD」をヘヴィに決め本編は終了。
アンコールはJAYとTERUのボーカルバトル
アンコールの声が響く会場、突然スクリーンには最新曲「whodunit GLAY × JAY(ENHYPEN)」のミュージックビデオが流れ騒然とする中、JAY本人がステージに登場、エッジの立ったビートに乗り、ビデオ同様TERUと丁々発止のボーカルバトルを繰り広げる。これがGLAYの強み、様々なジャンルにチャレンジしコラボレートした作品を生み出す。そこにまた新たな地平が広がる。JAYはさらに「誘惑」にも参加、自身もギターパフォーマンスを披露した。
この後、何が起きるのか? お楽しみはこれからだ。騒然とした場内に再び歓声が上がり、フロートに乗ったメンバーがゆっくり外野側のバディに手を振りながら進み、アリーナ奥センター前のサブステージに移動。TERUがアコースティックギター、TAKUROがキーボードを奏で、披露される「I’m yours」「BE WITH YOU」「I'm in Love」。
サブステージを終え、再びフロートでメインステージに戻ったメンバーはさらに懐かしい「彼女の ”Modern…”」を。個人的にはGLAYに魅かれるきっかけとなった曲だ。当時は研ぎ澄まされた刃が皮膚を切る感触だったこの曲も、空間を叩き割るような剛刀としてよりハード&ヘヴィに成長、迫りくるフィナーレに向かいドライヴする。JIRO大活躍の「ビリビリクラッシュメン」、ハードコアパンキッシュな「BURST」、そして名残の「RAIN」──
GLAYはまだまだ続くので、これからも愛し合っていこうぜ
やはりGLAYはカッコいいロックバンドだった。ギター2本が絡み合い、掛け合いから生み出されるドラマティックかつ美しくストレンジなサウンド。そこにアグレッシヴに攻め入り煽り、そして時に支えるベース。それぞれが持ち味を充分に発揮したフレージングとサウンドメイクで生み出す世界。それを支えるドラムスのToshi、キーボードの村山☆潤。そして30年を通してさらにさらに成長、進化を遂げたTERUのヴォーカルが存在する。ロックの持つ多様性と雑食性を体現する楽曲に対し、全方向対応可能な強靭な歌声は “ロックの財産” だ。
3時間に及んだステージも、 “やっと30年がスタート!GLAYはまだまだ続くので、これからも愛しあっていこうぜ” というTERUのメッセージでフィニッシュ。ベルーナドームでの『GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025』が終わった。
そういえば、フロートで移動したサブステージ、フィナーレに向かう前の一息ついた小空間でメンバーそれぞれが短いコメントを発した。“死ぬまでGLAYをやらないか?” とGLAY愛を公言してやまないHISASHIが改めてセカンドステージでその心意気を叫び、それにTAKUROが “勝負する?GLAYクイズで” と応戦。“それは打ち上げで” と収めるTERU。
25年以上前の取材風景が蘇った。放課後の部室で繰り広げられるようなメンバー間の会話。これもGLAYが長年存続する理由なんだろう。変わらないもの、変わり続けるもの、変容し成長し続けるもの。新たな刺激と向き合い模索し高め合う── GLAYがGLAYである所以。
“かっこいいでしょGLAYって、やっぱロックだよね” とTERU。10月に発売されるというニューアルバム『Back To The Pops』、タイトルからして否が応でも期待と妄想が膨らむ。
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2024.06.20