1976年 5月25日

【山崎ハコ 最新インタビュー】④ イギー・ポップも魅了した「ヘルプミー」高まる海外評価

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2026年2月18日、山崎ハコの『綱渡り』(デラックス・エディション)がリリースされた。デビューアルバム『飛・び・ま・す』から7か月後の1976年5月に発表されたセカンドアルバム『綱渡り』。

新たに発見されたオリジナル・マスターテープからリマスタリングされたCDに加え、1976年に行われた新宿ロフトのオープンセレモニーのライブ音源7曲、さらに彼女のデビュー前のデモテープからの「許されざる恋」「捨てた友達」の2曲を収めたDISC2がプラスされた。

そう、山崎ハコのデビュー50年を機に、改めて彼女の原点を振り返るにふさわしいカタログになっている。今回は『綱渡り』のリリースを記念して、山崎ハコ本人にインタビューを試みた。この後編では、多忙を極めた当時の心境から現在に至るまでの思いを伺った。

世界中で聴かれている「ヘルプミー」


この数年にわたり山崎ハコの歌が海外で注目されている。その結果、『飛・び・ま・す』と『綱渡り』が2023年にスイスのレーベルからレコードとCDで発売されたり、配信でも『飛・び・ま・す』の収録曲「さすらい」がアクセス数を大きく伸ばし、日本のサラリーマンの姿を描いたアメリカのドキュメント映画のテーマ曲として使われているという。

山崎ハコ(以下:山崎):『綱渡り』の収録曲では「ヘルプミー」が世界中で聴かれているんです。とくにイギリスではイギー・ポップがBBCラジオの自分の番組で、ずっとこの曲をかけてくれていたらしく、イギリスの人がよくコンサートにも来てくれます。むこうに住んでいる人からも、「ヘルプミー」はよく流れていますよって言われます。



こうした海外での評価の高まりも、山崎ハコの歌に対する姿勢と無関係ではないだろう。

山崎:私、ある時に気づいたんですよ。歌は歌詞だと思っていたけれど、私はほとんど外国の曲の意味わかってないけど感動する… ということは、歌は歌詞じゃないじゃん、って。曲のノリもあると思うけど、歌からは何か思うところが見えるんだって。

デビュー当初、山崎ハコはフォーク歌手とは呼ばれていたけれど、孤高のイメージが強かった。それは事務所の方針でもあったという。

山崎:社長に、河島英五さんとか男の人とのジョイントはやるけれど、女の人はやらせないって言われたんです。中島みゆきさんとは学園祭とかで一緒で仲も良かったんですけど、先輩とかにいじめられるからと刷り込みをされていて、あまり女の人に寄って行くなみたいに言われていたんです。でも、イルカさんとかみんな優しくて、誰かにいじめられたりとかは一度もなかったですね。高田渡さんなんかも、ハコはフォーク界のアイドルなんだぞってかわいがってくれたし、中川イサトさんとかも優しくてね。

山崎ハコに暗いというイメージがついたのは、やはり1981年の「織江の唄」のヒットが決定的だったと思う。五木寛之のベストセラー小説の映画化『青春の門』の主題歌として大々的にプロモーションされたこの曲によって、山崎ハコのパブリックイメージが作られたと言っていいだろう。しかし、「織江の唄」はこの映画のために書いた曲ではなかった。その2年前に、五木寛之が小説のモチーフで書いた歌詞につける曲を募集した。その時、山崎ハコが曲をつけて歌ったテープを五木寛之が絶賛したというものだった。

山崎:「織江の唄」はね、1979年にレコーディングした曲で、「ララバイ横須賀」のB面に収録されました。これは特別で、自分の歌詞じゃないので、オリジナルアルバムではなく『軌跡』(1980年)っていうベスト盤におまけとして入れてたんです。

それとは別に、山崎ハコは映画『青春の門』の音楽を担当していた。自分の頭の中にある映像から曲をつくる山崎ハコのスタイルは演劇や映像作品との相性が良く、彼女はそれ以前から主題歌などを書き下ろしていた。しかし『青春の門』では大きな問題が起きた。

山崎:映画上映の都合で、封切り日が成人の日と決まっていた。でも撮影が年末までかかって音楽を録るスタジオが正月明け1月8日しかないので主題歌はとても間に合わない。でも、正月からテレビでスポットを流さなければ、というので前に録ってあった「織江の唄」を流した。それでああなったんです。

もともとはシングルのB面、ベストアルバムの片隅にひっそりと置かれていた「織江の唄」が、大宣伝のおかげもあって映画とともにヒットした。しかし、この曲によってそれまでとは違う受け取られ方をすることも多くなっていく。

山崎:「織江の唄」で離れたというコアな人もいっぱいいるんです。だからライブでやらない方がいいのかな、とも思ったけれど、やって欲しいと言われることも多くて。暗いと言われたりもしたけれど、どこかで “あの歌詞は私じゃないから” って思っていました。暗いと言われて、本当にやりづらい時期もありましたけど、今はきちっと乗り越えました。

もちろん、山崎ハコ自身が『青春の門』の世界観を感覚的に理解し、その本質を表現する力をもっていたからこそ「織江の唄」は多くの人に支持される曲になった。けれど、そのイメージが、山崎ハコの音楽を少しデフォルメしたニュアンスで世に伝えることになったのも事実だろうと思う。改めて、山崎ハコの歌から伝わってくる魅力とは何だろうと考えてしまう。



山崎:安田(裕美)さんがよく言ってたのは、日本にはそういうジャンルがないけど、ボーカリストなんだよねって。レコード会社で仕分けされる時に、私は絶対に演歌のコーナーには行かない。アダルトポップスのコーナーとかに行っちゃうんです。私にジャンルがないのはわかっているんです。シャンソンでも民謡でもなんでも歌うから、だからちょっと下世話だけど、どんなジャンルを歌ってもいい。演歌も上手いフォーク歌手、ファドも上手いフォーク歌手というのがいいかもって。やっぱりフォーク歌手の人といる方が居心地が良いし、憂歌団に “おにいちゃん" って言ってる方が良い。それがなんか楽な道です、ずるいけど(笑)

2024年、山崎ハコはデビュー50周年アルバム『元気かい』を発表した。しかし、2020年に音楽、そして人生のパートナーであった安田裕美を亡くしていたこともあり、生まれてくるのは悲しい曲ばかりだったという。

山崎:フィクションだったらいろいろ作れるけれど、自分の本心を出してつくるとなると、悲しいです、とかさびしいです、しかないんですよね。その時に、いちばん最後は “できません” という歌ができるなと思ったんです。もうできなくなっちゃった、ごめんねというのが1曲できるなって。

しかし、それでも曲ができたことに変わりはない。だったら行けるところまで行こう。そう考えた時、彼女は『飛・び・ま・す』のメンバーでもう一度やってみたいと思った。しかし、安田裕美、村上 “ポンタ” 秀一、大村憲司、松原正樹など、『飛・び・ま・す』や『綱渡り』に携わったメンバーには、すでに鬼籍に入ってしまった人も少なくない。

山崎:でも、残っている人はと考えてCharに連絡をとって『飛・び・ま・す』から50年経って、生きているのは私達しかいないと曲作りをやっていたら、そういう歌「50 YEARS」ができたんです。当時、実際には話していないけど、50年後にまたやろうぜってみんな思ってたんですよ。50年たって集まったらもっといいよねって。で、50年経ってまだ今も俺たちいるじゃんという歌ができた。その曲をCharに弾いてもらったら “まんま俺じゃん” って弾きながら言ってくれて、最後に “じゃ、また50年後に” って(笑)。そういう曲ができたんです。

同じ思いは、今回の『飛・び・ま・す』『綱渡り』のリマスタリングにも込められている。

山崎:今はもういない人のためにも、絶対にいい音で出してあげたいと思ったんです。味方は私しかいないから。だから、状態のいいオリジナル・マスターが見つかったのも大きいけど、びっくりするくらい、いい音になっています。『綱渡り』なんか本当に臨場感があるの、みんなで一緒にやっている空気感もあるし、歌も泣く寸前までやってるのがわかるから。

山崎ハコの歌の旅は、まだ続いていく。


Information
綱渡り(デラックス・エディション)


衝撃のデビュー作から僅か7ヶ月、全曲の作詞作曲を自ら手掛けた1976年の名作2ndアルバム『綱渡り』を、オリジナル・マスターテープからリマスター!1976年新宿ロフトオープン時の貴重なライブ音源と、1974年のデモ音源をDisc2に追加収録した50周年デラックス・エディションとして初リリース。
▶︎ 価格:3,850(税込)
▶︎ 仕様:UHQCD 2枚組
▶︎ 山崎ハコ50周年リリース特設サイト
https://hakoyamasaki-50th.ponycanyon.co.jp/

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2026.02.20
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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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