1975年 10月1日

【山崎ハコ 最新インタビュー】① 再評価必至!令和に響くべき50年前の名盤「飛・び・ま・す」

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2025年12月、山崎ハコの『飛・び・ま・す』デラックス・エディションがリリースされた。山崎ハコがこのファーストアルバムでエレックレコードからデビューしたのが1975年10月だから、これは彼女のデビュー50周年記念盤ということになる。この機会に現在に至るまでの音楽経歴を踏まえたインタビューを試みた。前編では、衝撃のデビューに至るまでの少女時代の話を中心に伺った。

ファーストアルバム「飛・び・ま・す」で衝撃のデビューから50周年の山崎ハコ


それにしても、山崎ハコの登場はインパクトにあふれていた。小柄でほっそりした無口な少女がいったん歌い始めると、その圧倒的なパフォーマンスに否応なく引き込まれてしまう。しかも、そのブルージーな歌声には世代を超越したリアリティがある。当時の音楽シーンを見渡しても、こんなふうに染みる歌を歌える女性シンガーは浅川マキくらいだった気がする。そしてリリースから50年が経った今、改めて『飛・び・ま・す』を振り返った実感を本人に聞いてみた。

山崎ハコ(以下 山崎):当時は “あー、下手” と思ったんですけどね。何年もたって聴いてみると、自分のことを “なんじゃこの子は” って思います。この時18歳なんですよね。声は可愛いんだけど、感覚がすごいなあと思います。今、こんな18歳いないよって。

まったく同感だ。山崎ハコが生まれたのは大分県の日田市で、実家は兼業農家だったという。父親は郵便局員として働き、彼女が10歳の時に母親が小料理屋を始めた。そんな環境だったため、家には彼女と兄と祖母しかいないことが多かったという。



山崎:兄貴はエリック・クラプトンのいたクリームとかロックにかぶれていて、1年中エレキギターを弾いてるわけです。私は兄貴がいないスキに雑誌の歌本を見ながらギターを弾いてました。中学3年の時に音楽の教科書にビートルズの「イエスタデイ」とか出てたの。ちょうどその頃、学校がギターを購入したんです。それはクラシック用のガットギターだったけど、私は “次の教科の曲を練習するので貸してください” とか言って借りてきて、森山良子さんの曲とか、コードが簡単な曲を一生懸命弾いているという感じでした。

その後、両親は横浜に移住する。彼女は中学卒業までは実家で祖母と暮らしたが、卒業後に横浜に出て高校に進学。彼女が作曲を始めたのはこの頃からだ。

山崎:曲を作りだしたのは、高校に入ってから。友だちと赤い鳥とか小坂明子さんの曲とかを歌って、コンテストに出ようねと言ってたんです。その時、コンテストのポスターにオリジナル曲とあって、“オリジナル曲って何? 私が頑張ってつくってみるわ” と無理矢理作ったんです。それが『飛・び・ま・す』に入っている「影が見えない」という曲。歌詞に「♪たかが15年」とあるのは15歳の時に書いたからなんです。ロックが好きでレッド・ツェッペリンとかばかり聴いていたからブルースの感じで作りました。でも、友達はこの曲を覚えるのが大変だから、やっぱり『翼をください』で出ようって。



そして、高校2年生の時に横浜で行われたコンテスト『ジョイナス・フォーク・コンペティション』で優勝。その主催者のプロダクションに所属して、レコードデビューすることになる。

山崎:デモテープの段階で15〜20曲くらい入れたかもしれないです。その時のデモテープのテイク(「飛びます」「男と女の部屋」)が、今回のCDにも収録されてますけど。ミッキー・カーチスさんやかまやつひろしさんの歌が好きだったので、なんでも歌っていたんです。

この頃から、山崎ハコはオリジナル曲を精力的につくるようになった。

山崎:だけどできる曲がブルースなんですよね。ブルースってよくわからなかったけど、『飛・び・ま・す』のレコーディングの時、ドラムのポンタさん(村上秀一)に “三連か” って言われても意味が分からなくて。“三連って何ですか?” って聞いたくらい。それくらいなにも知らなかったんです。ただツェッペリンとかピンク・フロイドばかり聴いてたんで、そういう感じで作っちゃったんです。だから、トンツトトンっていうポップなノリも大好きなんですけど、今でも私は作れないんですよ。どうしても、ズーンチャッっていうタメのある曲になっちゃう。だから私の曲はヒットしないんだ、と思いました。

ファースト・アルバム『飛・び・ま・す』とセカンドアルバム『綱渡り』に収められている楽曲は、デビュー前に彼女が書き溜めていたものから選曲されたという。しかし、彼女の曲のつくり方はかなり独特のものだったようだ。

山崎:作詞作曲という意識がなくて、景色を作るんです。先に映像があって、そこから聴こえてくる感じがあるんです。ああ、こういう曲で、こういう映像だな。これを表現するのは何色なんだろう? という感じで言葉を考える。そういう作り方なんです。



山崎ハコがこうした曲のつくり方をする背景には、九州時代にジャンルを越えて多様な音楽を聴いていた経験も関係しているようだ。

山崎:10歳の時から家が飲み屋をしていたので、店の有線放送を聴きたくて “手伝いに行きます" と言って曲を聴きまくっていたんです。だから、中学校の頃とか有線放送で歌謡曲もいっぱい聴いていて育っています。森進一さん、藤圭子さんとか、昔の御三家(橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦)も新御三家(郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎)も聴いてるし、井上陽水さんとかジローズも聴いたし、(山口)百恵ちゃんとか、なんでも聴いてましたね。兄が好きだったのでプログレも聴いていたし、ショッキング・ブルーとかの洋楽も聴いている。ビートルズは小学生の時でしたから後追いで聴きました。そういうのがごっちゃになって、私の中に入っているんです。

彼女の作る曲の中に、15〜17歳の少女とは思えない年齢を超越した大人の世界がリアルに描かれていたことも、この時の体験がものをいっているのだという。

山崎:母の小料理屋でおしぼりを巻いたりしながら、大人たちをじーっと見てましたからね。もう、誰と誰が逃げたとか。いろんなぐちゃぐちゃを見ていました。だから歌えるんですよ。男と女がとか平気で歌える。そういう情景を生で見てきているから。それに九州なので周りのオトナたちが、普通の人でもちょっと気風が荒かったりする。だからそういうのはどうってことないんですよ。見慣れちゃっている。だから阿久悠さんの歌詞の世界も、よーくわかるんです。

確かに、山崎ハコの書く曲には、落ち込んでいる心情だったり、生きることの重さを感じさせる曲が少なくない。けれど、そうした曲でも、よく聴くとその奥に必ず前を向いて、次に進もうとする意志が感じられる。

山崎:そうです。落ち込んでるのは嫌いなんです。九州人だから “なんしよっと” (何してるんだ)って。そういう自分がいるから。

本当に暗い歌を歌うためには、その暗さを越える強さが自分になければ、先に進むことができない。それが解っているから、山崎ハコの歌は、一見絶望的に見えてもその奥に力強さがある。それが伝わるから、聴き手が励まされるのだ。

山崎:だからあの当時、現役大学生はユーミンを聴いて、浪人生は山崎ハコを聴くと言われたけど、わかる気がするんですよ。


ーー インタビュー後編では、今回リリースされる『飛・び・ま・す(デラックス・エディション)』の制作のエピソードを中心に伺っています。


Information
山崎ハコ「飛・び・ま・す」(デラックス・エディション)




1975年 18歳での鮮烈なデビューアルバム『飛・び・ま・す』をオリジナルマスターテープから初リマスター。1976年 新宿ロフトオープン時の貴重なライブ音源と、1974年のデモ音源をDisc2.に追加収録。50周年記念デラックス・エディションとしてリリース!
▶︎ 価格:3,850(税込)
▶︎ 仕様:UHQCD 2枚組
▶︎ 山崎ハコ50周年リリース特設サイト
https://hakoyamasaki-50th.ponycanyon.co.jp/

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2026.01.31
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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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