2018年 9月5日

大江千里デビュー40周年!ジャズアレンジで聴いてみたい珠玉の名曲ベスト5

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デビュー40周年!“転調界の首領” 大江千里


「1986-87年あたりは120分カセットテープの片面がいっぱいになるくらい一気に曲のカケラを書いていた」

―― そんな大江千里さんの楽曲は、実は結構難曲揃い。シングルでリリースされた曲は比較的親しみやすいメロディのものが中心だが、アルバム曲は、凝ったメロディも多いのだ。曲のカケラをいろいろつなぎあわせていた、若い頃の彼を想像すると愛おしくてたまらない。

さらに千里さんの楽曲は転調も多い。2020年8月の『ザ・カセットテープ・ミュージック』の配信イベントでも “転調界の首領” と言われていた。シングルだけでも「きみと生きたい」「GLORY DAYS」「APOLLO」「格好悪いふられ方」「夏の決心」…挙げていくとキリがない。コードはこれだ、と思ってカラオケで歌っていると、キーがわからなくなる、ということもよくある。

ちなみに「GLORY DAYS」は当初TMネットワークのような英語詞がサビにきた曲で、詞を書きなおして出来上がった曲、と2019年2月にエフエム仙台Date.FMでオンエアされたラジオ番組『大江千里 meets Boys & Girls, again』で千里さんは語っていた。

ジャズピアニストとしてキャリアを振り返った「Boys & Girls」


デビュー35周年の2018年にリリースした『Boys & Girls』は、ポップス時代の曲をジャズピアニストとしてキャリアを振り返った作品集になっている。5年前、この作品集を聴いたときのわたしの感想は、ピアノ1台でのポップス時代の曲をジャズピアノとして解釈したとき、その親しみやすい曲たちは、どこかイージーリスニング的に聴こえたものだった。

前述のラジオ番組では、『Boys & Girls』は、みなさんが知っているコンサートで盛り上がった曲、ジャズにするのは難しいものを、Pop Meets Jazz、Jazz Meets Popでやったもの。ポップスをジャズにするのは、空間をつくるプロセスが難しい。そんなことを千里さんは語っていた。



ジャズピアニストとしての最初のアルバム、2012年発表の『Boys Mature Slow』で既に「十人十色」と「格好悪いふられ方」はセルフカバー音源が披露されている。

「十人十色」は同アルバムでの他のオリジナル作品がジャズ寄り(ジャズピアニストとしてのファーストだから当然だが)なのに合わせて、サビの “十人十色 ぼくを選んだこと後悔させない” のみをフィーチャーしたようなかたちでオリジナルを感じながらもかなりジャジーに寄せた作品だ。一方で「格好悪いふられ方」は、ピアノ1台で、オリジナルのメロディに比較的忠実に、“Never See You Again” というタイトルの英訳に沿ったかなしさを見せている。

ジャズらしいといえばメロディの一部で半音下げたところか。言葉で説明するよりも聴いたほうがわかりやすいと思うので、興味がある方は見つけて聴いてみてほしい。



ジャズアレンジされた「魚になりたい」「ジェシオ‘sBAR」


時間は流れて2022年夏。凱旋公演のようなかたちで、千里さんは白馬、南青山、鎌倉、そして彼の母校である西宮市上ヶ原・関西学院会館でピアノ1台でライブを行った。題して 『Music with a View~納涼千里JAZZ天国 presents “4つの夏物語” JAPANツアー 2022』。わたしはその最終公演である関学でのライブに足を運んだ。当時のわたしの感想は「Boys &Girlsの第2弾的な、ポップス時代のジャズアレンジ作品をもっと聴きたい」だった。もちろんその頃にはデビュー40周年記念作品となる翌年発売の『Class of ‘88』の案もいろいろかためてきていたのだろう。

2022年12月には再来日し、ブルーノートとコットンクラブでのジャズトリオライブを行った。私が足を運んだのはコットンクラブの最終公演。ここでは、「魚になりたい」「ジェシオ‘sBAR」といったポップス時代のジャズアレンジとしての新曲が披露された。

「魚になりたい」は、1989年の作品。ジャズアレンジで聴きたいと思っていた曲のひとつだっただけに、実際にプレイされている現場に居合わせて ”Great!” とマスクの中でつぶやいたのは言うまでもない。赤ワインがとても美味しい夜だったことを鮮明に覚えている。

さて、2022年暮れの、ブルーノートとコットンクラブでの凱旋公演時期からしばらくの間、「あなたが聴きたい千里さんのセルフカバーを教えてください」というWebアンケートがSony Musicのサイトで開催されていた。ファンが聴きたい曲とエピソードや熱い想いが満載されている。

“転調千里天国” な大江千里5曲をピックアップ


そんな中で、わたしがこれからジャズアレンジで聴いてみたい大江千里さんの “転調千里天国” な楽曲5曲をピックアップしてみた。今回発売される『Class of ‘88』に収録されているものもあり、曲の一部はティーザーで既に聴ける。



「SEXUALITY」
1985年のアルバム『未成年』収録曲。Bメロの転調っぷりの変幻自在たるや。J-POPの転調モノの中でも素晴らしい展開。2023年9月6日の関学公演でも、メドレーに含まれていたのは、大江千里転調マニアのわたしとしては嬉しかった。

「向こうみずな瞳」
1989年のアルバム『red monkey yellow fish』収録。転調部分を大貫妙子さんが歌っている作品。このメロディは、ジャズアレンジに載せてもしっくりくるのではなかろうかと思っている。

「竹林を抜けて」
1990年のアルバム『APOLLO』収録。転調というか、メロディのキーがとりにくいというほうが正しい。こちらは「Bamboo」というタイトルで『Class of ‘88』にも収録されており、既に2022年12月のライブでも披露された。ライブで聴いたときは、“これ、なんじゃ?” からの展開にゾクゾクしたもの。スピード感とスリルがたまらない。

「夏の決心」
1994年のシングル。ポンキッキーズでも流れていた、“夏休みはやっぱり短い” という歌詞から始まる親しみやすいポップロック作品。これをジャズでやったらどうなるだろう、どんな解釈で音が聴けるのだろう。考えるとワクワクする。

「風が吹いてる」
2001年のアルバム『ROOM 802』収録曲。キーとしてはCなのだが、普通に落ち着かないという意味では “転調千里天国” に入れて申し分ない変態振り(誉め言葉)。もう、このころにはジャズ的な作品も目立っているのだが、当時のPopを今度JazzにMeetさせたらどうなるのだろう。全然違う作品になりそうで楽しみだ。

ポップスでのデビューから40年。リアレンジ作品を発表するシンガーソングライターはいても、ポップスをジャズにmeet、ジャズをポップスにmeetさせて、新しい世界を作り出すシンガーソングライターは日本では大江千里さん以外に誰もいない。未踏の道をひた走る千里さんを、わたしはこれからも追いかけていく。



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2023.05.20
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カタリベ
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