高校二年生の一学期のある日、僕は放課後の体育館脇で体育教師にバリカンで丸坊主にされた。理由は何度髪を切って来いと言われても言うことを聞かずに切らなかったから。そんなに長く伸ばしてたわけでもないし、ヤンチャだったわけでもない。
そろそろ切ろうかな〜と思っていたところだったんだけど、やれと言われるとやりたくなくなっちゃう性格なもんで。まぁちょっといきがっていたのかもしれないけど、まさか本当に坊主にされるとは。さすがにこの時はショックだった、頭を触るとサクサクしてるんだから。生まれて初めて殺意らしきものが芽生えたもんね。
そんなことがあった1980年。この年はPANTA&HALの2ndアルバム「1980X」が発表された年で、そのアルバムに収録された曲が劇中で流れる映画「狂い咲きサンダーロード」が公開された年でもある。しかもこの3つの事件はほぼこの年の一学期中に起きているのだ。
Xデイ(天皇崩御)の東京を描いたPANTA&HALの「1980X」は、研ぎ澄まされた鋭さと冷静さを感じさせるアルバムだ。逆に大暴走する一人の男を描いた映画「狂い咲きサンダーロード」には、「おもしれえじゃねえよ、やってやろうじゃねえよ」と暴れまわる主人公・仁にとんでもなく異常な熱さを感じた。
近未来を描いた二つの音楽と映画が一緒になって丸坊主の少年に襲いかかってきたたというわけだ。「お前はどうするんだ、それでいいのか」と。そして髪が伸びた数ヶ月後、自ら体育教官室に行き「いつものように切ってもらえる?」とドアを開けながら床屋扱いにしたのが僕のささやか〜なXデイだった。
昨年、長いこと紛失したと思われていた「狂い咲きサンダーロード」のオリジナルフィルムが見つかり、傷や汚れを取り除き公開当時の状態に戻す復活プロジェクトが始動しているという。リマスター版をブルーレイとして発売、さらに劇場公開用のデジタル素材の制作も進められているようだ。なんともこれは待ち遠しい!ならば僕もあの時のように丸坊主になって復活を迎えようじゃないか…って、もう切る髪の毛、残ってないやね。
2016.06.24
YouTube / 前田敦夫
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