1月13日

テレビから聞こえてきた音楽【大人のドラマ編】岸辺のアルバム、阿修羅のごとく、金妻…

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photo:NHK  

傑作ドラマの裏に、名脚本家あり


12月13日(水)の深夜1時、bayfm『Wave Re:minder 懐かしむより、超えていけ!』に、私、平マリアンヌが出演し、1970年代〜80年代の大人のドラマについて語りました。radikoでは1週間アーカイブ配信で聴けるので、お時間がある方は是非に。

昭和の時代、宵っ張りで、大人のための番組が大好きな子どもが多かったと思います。学園ドラマや青春ドラマよりも、大人の世界を垣間見られる、私もそうした番組を小学生の頃から好んで観ていました。

あらためて印象に残ったドラマを振り返ると、脚本の力というものを強く感じます。当時は、「脚本家が〇〇だから」といった理由で観ていたわけではないのに、テレビ史に残る名脚本家が書いたドラマはやっぱりすごい!ドラマ好きの方から見れば、ベタなチョイスかもしれませんが、ちょっとお付き合いください。

家族、家、そしてホームドラマまでぶっ壊した問題作





TBS系ドラマ「岸辺のアルバム」(1977.6~1977.9)
◆ テーマ曲:ジャニス・イアン「ウィル・ユー・ダンス」
◆ 出演:杉浦直樹、八千草薫、中田喜子、国広富之

1974年9月に東京・狛江市で起こった多摩川水害から着想を得て、山田太一が書いた傑作ドラマ。幸せな中流家庭と思いきや、夫はヤバい商売に手を出し、妻は不倫に走り、娘は外国人に弄ばれ、すべてを知った息子は荒れ狂い……という問題作でした。

一番の衝撃は、清楚や貞淑を絵に描いたような妻・八千草薫の昼下がり不倫。出演を躊躇った八千草薫を山田太一自身が説得したとか。同伴喫茶や “連れ込み”(ラブホテル)も出てきて、生々しさと同時に、今観ると時代性も感じられます。

オープニングの映像で、ジャニス・イアンの珠玉のメロディーをバックに、多摩川水害のニュースフィルムを使ったのも衝撃でした。冒頭から、水害で家が流されるというネタバレをされたうえで、家庭崩壊の様子を見せられ……。そりゃ、この家族どうなるの? と視聴者は釘付けになるわけです。

一億総中流の時代に、家族、家、そしてホームドラマまでぶっ壊した山田太一。くしくもこれを書く直前に訃報が飛び込んできました。日常の中にこそドラマがある、そう教えてくれた名脚本家でした。合掌。

父親の愛人対策を話し合うはずだったのに。向田ドラマの最高傑作





NHKドラマ『阿修羅のごとく』(1979.1)
◆ テーマ曲:メフテルハーネ「ジェッディン・デデン」
◆ 出演:八千草薫、いしだあゆみ、加藤治子、風吹ジュン、緒形拳

三谷幸喜が朝日新聞の連載コラムでこのドラマのことを「神様が書いたシナリオ。どの登場人物も、言っていることと思っていることが違う」と書いていましたが、まさにその通り。向田邦子のドラマはどれも好きですが、これが最高傑作だと思います。

父親に愛人がいることがわかり、なんとかせねばと集まる4人姉妹。父親の愛人対策を話し合っているのに、鏡開きで鏡餅を揚げ、それをサクサクとつまむつまむ。ひび割れた鏡餅から、母親のひび割れた踵を思い出したり、長女の差し歯が取れたり。真剣に話していたのに、話があらぬ方向にいき、どうでもいいことが気になる。これ、誰もが思い当たるのではないでしょうか。

こんな風に、一つひとつの場面にいろんな要素が詰まっていて、観るたびに発見があります。なんてことない顔をしながらも妬んでいたり、嫌味を言いながらも世話を焼いたり。人間って単純じゃない、いろんな感情が交差しながら生きてるんだということを実感させられるドラマです。

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土曜ドラマ 阿修羅のごとく

しんどいエピソード満載。21年間に渡る、黒板家の成長期





フジテレビ系ドラマ『北の国から』(1981.10~1982.3)
◆ テーマ曲:さだまさし「北の国から 遥かなる大地より〜螢のテーマ」
◆ 出演:田中邦衛、吉岡秀隆、中嶋朋子

山田太一、向田邦子ときたら、倉本聰に触れないわけにはいきません。初回放送時は、山田太一のドラマ『想い出づくり。』の裏だったうえに、青大将、ジャージ姿の子ども、さだまさしのハミングの予告にまったく心動かず。田舎=善、都会=悪、みたいなほのぼのした話なんでしょ? と見くびっておりました。

あまりに評判がいいので、遅れて観始めたら、ぜんぜんほのぼのじゃない!となりました。”ヘナマズルイ” とみんなに疎まれ、愛馬を手放した夜に川に落ちて亡くなる笠松のじっちゃん。好きな男にふられて家出し、風俗嬢となるつらら。UFO目撃や怪文書が引き金となり、学校を追われる凉子先生。そういえば、黒板五郎が純と蛍を連れて、富良野の麓郷に移住したのも、妻の不倫がきっかけでした。

『北の国から』というと、泥のついた2万円や「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!」といった名場面がよくあげられますが、しんどいエピソードが多いからこそ、こうした場面に心を揺さぶられるんですよね。

連続ドラマ放映後も、8編のドラマスペシャルがつくられています。2002年にラストの『遺言』を観終えたときには、21年間に渡って黒板家の成長記を見守った、そんな気持ちになりました。

新興住宅地と不倫のイメージを変えた、大人の群像劇





TBS系ドラマ『金曜日の妻たちへIII 恋におちて』(1985.8~1985.12)
◆ テーマ曲:小林明子「恋におちて -Fall in love-」
◆ 出演:古谷一行、いしだあゆみ、小川知子、奥田瑛二

大人の群像劇を得意とする脚本家・鎌田敏夫らしいドラマではないでしょうか。ずばり、不倫を主題にしたドラマとして、大ヒット。1作目、2作目もよかったですが、3作目が最も印象に残っています。

舞台となったのは、神奈川県の田園都市線エリア。ありふれた新興住宅地だった土地をイメージアップし、地価さえも上げたのでは。主要の登場人物たちが住むのは、テラスと庭のあるおしゃれな家。ここに集まって、ガーデンパーティーをしたり、テラスでお茶会をしたりといったライフスタイルにも注目が集まりました。

さらに、“よろめき” なんて呼ばれ、ジトッと描かれていた主婦の不倫ドラマから湿気を取り(実際、『岸辺のアルバム』ではジトッと描かれていました)、不倫のイメージさえも大きく変えたような気がします。小林明子が歌うテーマ曲も、歌詞は切ないのですが、メロディーは爽やかです。

奥田瑛二の出世作にもなりました。私のまわりでは、古谷一行といしだあゆみの焼け木杭的不倫カップルより、奥田瑛二と森山良子のプラトニック不倫カップルの行く末に心ときめかす人が続出しました。

日本にもシットコムが!深夜に会いたい女友達みたいなドラマ





フジテレビドラマ『やっぱり猫が好き』(1988.10~1991.9)
◆ エンディング曲:RCサクセション「サン・トワ・マミー」
◆ 出演:もたいまさこ、室井滋、小林聡美

今や、押しも押されもせぬ大物脚本家となった三谷幸喜を知ったのが、このドラマです。深夜何気なくテレビをつけ、「あら、こんな夜中にドラマが?」と観始めたことからハマりました。

まず思ったのが、日本でもシットコム(シチュエーション・コメディ)ができるんだということ。舞台がいつも同じ、日常を軽妙に描写、一話完結、観ている人たちの笑い声が入る。『奥様は魔女』『ファミリータイズ』など、こうした特徴を持つアメリカのシットコムには親しんできましたが、日本ではコントがあるからつくらないのかなぁと思い込んでいました。ただし、三谷幸喜によると、『やっぱり猫が好き』の笑い声はスタッフのものなので、シットコムではない、本人の定義では日本初のシットコムは2002年に放送された『HR』とのこと。

ともあれ、私にとって『やっぱり猫が好き』は初めて出会った日本のシットコムです。舞台の脚本をたくさん書いてきた三谷幸喜だからこそ、こうしたドラマが生まれたのでは。

また、登場人物の恩田三姉妹に勝手に親しみを感じていました。当時は恋愛ドラマが多く、“恋に仕事に大忙し” なヒロインばかり。世の中的にも、“恋愛してこそなんぼ” みたいな圧があったように感じます。だから、愛とか恋とかより、なんてことのない日常をおもしろおかしく過ごす恩田三姉妹にホッとしていました。

ただし、90年10月、放送時間がゴールデンタイムに移動したら、なんとなく観なくなってしまいました。『やっぱり猫が好き』は、ゆるっとだらっと過ごす、深夜に観てこそのドラマだったのかもしれません。

さて、大人のドラマ編はここまで。後編として、12月20日(水)深夜1時からは大人のバラエティー編をお送りします。クリスマスなんて関係なし、夜10時台や深夜をにぎわせた、懐かしいバラエティー番組のテーマ曲を深掘りしていきますので、ぜひお聞きください。

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2023.12.15
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カタリベ
1967年生まれ
平マリアンヌ
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