80年代後半、ザ・スミスやザ・キュアー、デペッシュ・モード、コクトー・ツインズなどといったUKインディーズのバンドはアメリカにおいても、大学生が運営して放送を行うカレッジラジオやCMJ(カレッジ・メディア・ジャーナル)といった雑誌を中心に人気を博していました。 カレッジラジオやCMJが、UKのインディーズバンドばかりを取り上げていたのかというとそれだけではなく、スミザリーンズ、X(ジャパンじゃないほう)、ソニック・ユース、ブラック・フラッグ、バッド・レリジョン、ハスカー・ドゥなどフリーキーなバンドやパンク、ノイズといった、今でいうオルタナティヴなアメリカのバンドも積極的に推してました。そういったアメリカのバンドのなかで最初に人気の火が点いたのがR.E.M.です。 「カレッジチャートの雄」とか「CMJが生んだスター」などといった代名詞で日本に紹介されたR.E.M.は、前述のUKのアーティストに比べると、ビジュアル的にもサウンド的にも大きな特徴を見つけることができず、(私にとっては)どちらかというと地味な印象しかありませんでした。歌詞も何となく聴き取りづらく、アルバムのアートワークもあんまり印象に残らないものばかり。 ですが、そんなR.E.M.がインディーズで出した最後のアルバム『ドキュメント』(87年)からのカット、「燃える愛(The One I Love)」を聴いたとき、それまでのそんな考えは一気に吹き飛び、衝撃的な感動を覚えました。「これはアルバムもおさえなければ!」そう思い、初めてR.E.M.のアルバムをちゃんと聴きました。 アルバム全体の期待を煽るような冒頭の「最高級の労働歌(Finest Worksong)」のじわじわくる高揚感。その後のライヴのエンディング定番曲になった「世界の終わる日(It's the End of the World as We Know It)」のスピード感ある盛り上がり。ダークながらも深淵なラスト曲「オッドフェローズ・ローカル 151」など、もうほんとにいいアルバム。 でもやっぱりハイライトは「燃える愛」。 単語の少ないシンプルな歌詞。聴き取りやすくもなりました。ですからマイケル・スタイプの歌もそれまでのクールな印象から熱く感じます。 体を不自然にねじった都会人の写真のアートで有名なアーティスト、映画『JM』の監督でもあるロバート・ロンゴによるミュージックビデオも耽美(ニュー・オーダーの「ビザール・ラヴ・トライアングル」のPVでは、その都会人を宙に浮かせている)。雷や火花による閃光や演奏シーン、空や草木などを重ね合わせたロマンチックで美しい作品です。これで一気にはまりました。 R.E.M.は、その後アメリカではスタジアムバンドになるほどの国民的バンドになり、キャリアも30年以上。ドラマーの体調を理由とした脱退以外、メンバーは全員健在なのに、2011年にけじめをつけるようなかたちで解散を発表したことは、今では珍しいパターンかもしれません。 日本では大きな人気は得られませんでしたが、常に聴き手に色々な事を考えさせてくれる作品を作り続け、UKとは異種のインディーズ精神を身を以て体現していたバンドだったと思います。
2017.07.27
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YouTube / REMVEVO
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