織田裕二主演ドラマ「踊る大捜査線」もしリメイクされるならどんなメンツで観たい？

1997年、「踊る大捜査線」が始まった

1997年って一体どんな年だったろう？ たまごっちやポケモンブームが起こり、映画『もののけ姫』が劇場公開された。酒鬼薔薇事件や東電OL殺人事件等の凶悪事件が社会的注目を浴び、フジロックフェスティバルが初開催され、コギャルの教祖・安室奈美恵が結婚してX JAPANが解散。社会人や大学生を中心にポケベルからPHSや携帯電話への移行が始まり、山一證券が破綻して消費税は５％になった。流行語は「失楽園」だった。

ーー そしてフジテレビがお台場に移転した。

1990年代半ばの私は20代で、とっくにバブルは崩壊していたけど、まだゆるくその余韻に浸り、モラトリアム期を引きずっていた。1995年、そこに阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が降りかかる。未曾有の社会状況を経験したことで、不況や不穏な未来を見つめたくないという恐れと同時に、退屈なサラリーマン生活よりも新しい日常を渇望するようになった。そして1997年、年明けと共に転職した。そのタイミングでフラッと始まったのがテレビシリーズ『踊る大捜査線』だった。

仮タイトルは「サラリーマン刑事」だった？

放映開始は１月７日、第１話のタイトルは「サラリーマン刑事と最初の難事件」。歴史はここから始まった。が、初回放送時はあまり人気を呼んではいない。視聴率20％を超えたのは最終回（23.1％）の１回限り。そのため、映画やビデオの発売は予定になかったらしい。ところが、意外なところから追い風が吹く。パソコン通信のドラマフォーラムやホームページ上でマニアックな議論が展開されるなど、口コミを中心にどんどん話題になったのだ。プラス、レンタルビデオ不足が大勢の鑑賞欲に拍車をかけた。本作の人気はそんなふうに噂で盛り上がっていった稀有なパターンだった。

仮タイトル自体が『サラリーマン刑事』だったという逸話も面白い。『ロング・バケーション』を手がけたフジテレビの亀山千広プロデューサーの「今までにない新しい刑事ドラマを作りたい」なる要望に応え、脚本家の君塚良一氏は刑事ドラマの金字塔『太陽にほえろ！』のパターンをあえて禁じ手にしたという。例えば刑事のニックネームや音楽付きの聞き込み場面、犯人と刑事の心情リンクといったお約束を封じ、本庁VS所轄やキャリアVSノンキャリアの軋轢、組織とは何かという階級闘争をテーマにして業界を仰天させた。まさにエポックメイキングだった。

モッズコートがトレードマークだった青島君

だが『踊る大捜査線』がエバーグリーンなのは、そんなシリアスな普遍的テーマをユーモアで包んでふわっと描いたからだ。「よくできたコメディー」とも評されるのは芸達者の役者が揃ったことと、カエル急便やキムチラーメンといったオリジナルの小道具をはじめとするディテールをきちんと表現したこと、篠原ともえやDJ DRAGON、つぶやきシロー等、時代を映し出すゲストの多用というフジテレビらしさを前面に押し出したことにもあると思う。

トレードマークのモッズコートを引っ掛けて事件に奔走する元営業マンの転職組、青島君（織田裕二）。もう少しで定年退職を迎える昭和の人情派デカ、和久さん（いかりや長介）。ストーカー被害とトラウマを抱える辛口女子盗犯係、すみれさん（深津絵里）。キャリア組として所轄に勤務する屈託のないお坊ちゃま、真下君（ユースケ・サンタマリア）。そして高圧的なキャリアからだんだん現場の所轄に歩み寄りを見せる秋田訛りの管理官、室井さん（柳葉敏郎）。



そこに事件被害者の家族役から物語の中枢に絡む雪乃さん（水野美紀）やスリーアミーゴスとも呼ばれた神田署長、秋山副署長、袴田刑事課長らが涙を誘ったり抑圧したり、呑気にちゃかしたりと、時に個々のバックボーンエピソードを挟みながら、事件の外郭を彩っていく。

物語を切なく反芻させる主題歌「Love Somebody」

第１話、お台場・東京テレポート駅からの青島君の湾岸署出勤風景は空き地だらけで、空撮シーンを見ても今とあまりに違ってびっくりするし、スポンサーがサントリーだったのか自販機前でやたら皆して缶コーヒーのBOSSを飲んでいる。青島君はどこでもすぐ煙草フカし始めてちょっと面喰らうし、すみれさんとの恋物語は友達以上恋人未満で進まないのがたまらない。

真下君が撃たれた時に「私が全面的に指揮を執る、上の者にはもう何も言わせない」って言い放つ室井さんはめちゃくちゃカッコいいし、重鎮和久さんがしみじみ宣う「正しいことをしたかったら偉くなれ」は名言だし、すみれさんがストーカーの囮になる回で「何でもっと早く助けてくれなかったのよ！」と文句垂れつつ半泣きで青島君に言う「ありがと！」は可愛すぎる。そして、最後に流れる主題歌「Love Somebody」はいつも人間味と情緒に溢れて物語を切なく反芻させるのだ。

90年に「Close To You」を世界的に大ヒットさせ、90年代を代表するレゲエ・ミュージシャンとして不動の地位を築いて “レゲエ界の貴公子” と呼ばれたマキシ・プリースト。彼の日本での人気を決定づけたのは、この織田裕二とのコラボによる主題歌「Love Somebody」だろう。マキシはラップと作詞、ボーカルを担当しただけでなく、ドラマ10話でのカメオ出演も話題を呼んだ。織田裕二にとっては13枚目のシングル。1997年度オリコン年間65位を獲得している。



ドラマの最終回、流れる「Love Somebody」に乗せて、いつも青島君がひとり歩く空き地が広がる道路を出演者全員が走ってゆくエンドロールが泣ける。終盤にピンで和久さんが出てきて「END」の看板を押さえたりして通り抜け、そこに青島君がひょこひょこっと登場してまぶしそうな顔で締める。なんとも言えず胸が熱くなる。

「踊る大捜査線」がもしもリメイクされたら?

警察のサラリーマン組織の縦割りは、これからも続いていくのだろう。でも組織のどのポジションにいても歯車であることを承知で、自分は必要な歯車であると自信を持つことがきっと大事なのだ。このドラマが受けたのはそうした誰もが抱えている問題が描かれていたからだ。今も日々必死に戦い続ける室井管理官や青島君、すみれさんの姿が見えるような気がする。だから「私もやらなきゃね」と思えてくるのだ。

その後『踊る大捜査線』はいくつものスペシャル特番化や映画化がなされ、いずれもが爆発的にヒットして大スペクタクルなシリーズ展開を見せるが、2012年の映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』をもって現状は制作を終えている。

最後に「妄想たられば」で、もしもドラマがリメイクされるならどんなメンツで観たいか勝手に考えてみた。青島君役は郷敦しかいない。和久さんは松重の新境地が観たい。北香那はどう化けるかに期待。生田斗真は信頼の配役。神木君は今どきの真下君像を創り上げてくれそう。石橋静河はちょっと異色かも。そしてスリーアミーゴスは皆制服姿が似合いそうで笑える。

◾️ 青島俊作：眞栄田郷敦
◾️ 和久平八郎：松重豊
◾️ 恩田すみれ：北香那
◾️ 室井慎次：生田斗真
◾️ 真下正義：神木隆之介
◾️ 柏木雪乃：石橋静河
◾️ スリーアミーゴス：梶原善、プチ鹿島、マキタスポーツ

さて、あなたならどうキャスティングする？

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2023.02.13