2023年 5月17日

振り返らない泉谷しげる75歳【ビルボードライブ東京レポ】いつだって今が最高!

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泉谷しげるのライブ「泉谷しげる 75th Anniversary Live」Billboard Live TOKYO開催日
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photo:西岡浩記  

泉谷しげる 75歳。ビルボードライブ東京の舞台に立つ


「エ? ビルボード東京でやるんすか? マジすか?」

泉谷しげるのライブレポートの依頼が来たとき、会場を聞いて、つい驚いてしまった。だってビルボードライブ東京って、ディナー食べながら音楽聴くとこだよね?

…… 似合わねー!(すいません)

ただ、そういうハコで泉谷がいったいどんなライブをするのか、がぜん興味が湧いてきた。ビルボードライブ東京は、1日2ステージが基本。客が入れ替わるだけで、どのアーティストも1本目と2本目は大きく内容を変えたりはしない。だって大変じゃないすか。ところが泉谷はそうじゃない。ビルボードライブ東京の公式サイトを見たら「本公演はファーストステージ、セカンドステージでセットリストが異なります」とわざわざ明記してある。1本目は午後5時半、2本目は8時半開演。1ステージが1時間半弱。てことは、合わせて約3時間のライブを、間に少し長めの休憩を入れてやるのに等しいのだ。

「バカのひとつ覚えみたいに、2度も同じことできるか! バカヤロー!」

―― ってなもんで、なんて “ガチ” な人なんだろう。

しかも今回のライブは『泉谷しげる 75th Anniversary Live』だ。泉谷は5月11日に75歳の誕生日を迎えた。75歳といえば「後期高齢者」である。団塊世代は70代でもピンピンしている人が多いけれど、中でも泉谷は特別… というか異常だ。

あの日パワステで観た “全身ロケンローラー” の今は?


ここで時計の針を35年ほど前に戻す。私が初めて泉谷を生で観たのは、80年代末、大学生のときだ。今はなき新宿・日清パワーステーションで行われた『真夜中の雰囲気一発』という深夜のロックフェスに泉谷は出演。清志郎・チャボや憂歌団、頭脳警察とか、いま考えると錚々たるメンバーが集まっていたけれど、このライブを仕切っていたのが泉谷だった。

初めて観る “ナマ泉谷” は、パワフルで、客に暴言を吐きまくり、ギターをやかましくかき鳴らして歌い、他のバンドの演奏に乱入したりとやりたい放題。イメージどおりどころか、想像を上回る暴れっぷりで、まさに “全身ロケンローラー” だった。

その後何度も泉谷のステージを観てきたけれど、たぶん「年相応」という言葉は泉谷の辞書にないのだろう。いつ観ても、やかましさ、毒舌、暴れっぷりは同じ。いや、むしろそのボルテージは、年齢を重ねるごとに上がっているような気がする。いったいどうなってんの!?

そんなわけで「今の泉谷」は。はたしてどういうことになっているのか? もちろん2ステージ通しで観ることにして、5月17日、六本木の東京ミッドタウンへ。入口に誕生祝いの花が置いてあり、贈り主がなんと「ももいろクローバーZ」と「橋本環奈」!! ちょっとジェラシーを感じつつ会場へ。

5時半過ぎ、歓声に包まれ、おなじみのバンダナキャップに白シャツ+ジーンズ姿で泉谷が登場。バックは4名で、藤沼伸一(G)、渡邉裕美(B)、板谷達也(Dr)の泉谷バンド+小林香織(Sax)という面々。若い美女がしっかりメンバーに入っているのは、さすが泉谷だ。



事前リハで10時間!いくつになろうが直球一本勝負


「頑張ります! いくぞー!!」

―― の掛け声で、1曲目「突然、炎のように」がスタート。まず驚いたのは、1本目なのに、もう声が枯れている! なんで!? 後で聞いたところ、なんと事前リハを10時間近くやったそうで。本番の3倍以上リハに時間をかける、このガチっぷりはどうよ?

しかし、声が少々枯れ気味だろうが、泉谷はノンブレーキ。ノッケから飛ばす飛ばす! エレキギターをかき鳴らし、ありったけの声で絶唱。野球で言うと「150キロ台の荒れ球連発」である。

普通、ベテランになると技巧派に転向するものだが、泉谷はいくつになろうが「直球一本勝負」だ。それで三振が取れるからである。2曲目「スキル」を終えたところで、開演から13分経ってようやく最初のMC。

「きょうは意外と時間がないんでね、もう、いっぱい(曲を)ネジこみます!」
「皆さん、食事してるヒマがないかもしれない」
「ビルボードに合わない曲ばっかり選びました!」

…… 最高かよ!

4曲目「旅立て女房」をアコギ弾き語りで熱唱した後、泉谷が、

「ここでひとつ、特別にお断りしなければならないことがありまして…… 次の曲は『おー脳!!』という曲なんでありますが、きょうはTVが入っておりますので、ほぼ放送禁止なところがありまして…… 特にある国を誹謗しておりまして(爆笑)、このままレコードどおりやってしまいますと、いろいろ国際問題になってしまいますので、2番の歌詞のみ、かの国を “ピーの国” に変えさせていただきます。どうぞ、ご了承、よろしくお願いします!」

怒り炸裂の激唱に、こっちも

 脳にきた 脳にきた 脳まででたよ おー脳!!

―― である。どうやら泉谷ウイルスは、●毒よりも感染力が強いようだ。

ビルボードライブ東京じゃなかなか観られない!? 会場との丁々発止




そのまま6曲目に突入。泉谷ソロで「黒いカバン」。警官から職質を受けた際のやりとりを歌にした名曲で、原曲の警官へ言い返すセリフが、いつの間にか某宗教団体への怒りに変わりボルテージは最高潮。しまいには、

「いいか! オレはな、神も仏も頼ってねェんだ! 75歳だ、こりゃ!」

―― の啖呵に会場大喝采!「歌詞が違うぞー」のツッコミには、

「しょうがねえだろ! 全部アンチョコ見るわけにはいかねえんだから!」

―― こういう会場との丁々発止は、たしかに普段のビルボードライブ東京じゃなかなか観られないものだ。

「わが時代を(共に)生きた多くのアーティストは、引退するわ、病気になるわ、いなくなっちゃうわで、本当に寂しい限りですよ。ここはやっぱりね、75になっても元気な姿を見せたい!」
「けっこう臆病者なところがあって、酒・タバコをやめたり、いろんなものをやめたりして実は調整してるんだけど、やっぱちゃんとやりゃあね、アーティストってのはバケモンなんですから、そういう体力を使い切ります、私は!」
「(活動休止している)奴らがまた復活できるように、みんなで応援してください! よろしくお願いします!」

…… 泉谷がなぜ枯れずにこういうライブができるのか、その答えがこのMCに凝縮されている気がする。めちゃくちゃな荒くれ者のようでいて、アスリートのようにストイックで、ちゃんと節制もし、そして優しいのだ。

気分はライブハウス!? 今だからこそ刺さる「国旗はためく下に」


9曲目「眠れない夜」あたりから1階フロアでも立ち上がる人たちが増え、12曲目「火の鳥」では泉谷と一緒に拳を突き上げる人たちも。ヤバい、ビルボードライブ東京がライブハウスと化している。13曲目「国旗はためく下に」では、大きな日の丸の旗を振っている人もいた。このフロアで日本国旗がはためいたのは前代未聞、ビルボード史上初めてだろう。そしてこの歌は、今だからこそ刺さる歌だ。

 国旗はためく下に集まれ
 ゆうずうのきかぬ自由にカンパイ!

―― そういえば、泉谷が歌っているこの場所は旧防衛庁の跡地だった。

会場の興奮が最高潮に達しているうちに、1本目の終了予定時刻が迫ってきた。

「そうか、あと5分しかないのか! なんとか2曲やろう!」

―― とラス前、14曲目に歌い始めたのが、忘れちゃいけない「春夏秋冬」だ。ステージ背後のカーテンが開き、まだ陽が落ちきっていない六本木の景色が目に飛び込んできた。背後のビル群はまさに「季節のない街」だ。途中、泉谷が突然演奏をやめ「自分で歌え!」と命じると、客が全員アカペラで、

 今日ですべてが終るさ
 今日ですべてが変わる

―― と合唱。六本木のミッドタウンが、今度は新宿西口になった。魔術師・泉谷。



そして続けざまに「♪野性のごとく叫んでられたら…」とアコギをかき鳴らし最後の曲「野性のバラッド」へ。だが終了時刻となってしまったようで「この時間がもうないんで」と申し訳なさそうにサビまでをシャウトして締めくくった。

「どうだ、ビルボードらしくねぇだろう?」

―― とご満悦で、1本目のステージは終了。全15曲、ハイテンションなまま80分を “完走” した75歳。…… いやいや、これで完走ではない。1時間ちょっとで、すぐ2本目がやってくるのだ。てか、ノド大丈夫なの!?

セカンドステージは「長い友との始まりに」からいきなりシャウト!


しかし、夜8時半から始まった2本目、赤いシャツと黒いバンダナキャップでステージに現れた泉谷はへたるどころか、すっかりHP回復。最前列の女性客たちと嬉しそうにハイタッチしながらステージに立ち、ノドの具合も絶好調! なんて人だ。思うに泉谷は、ライブ前になると体内で特殊な物質が合成され「自然ドーピング」で勝手に元気になる特異体質なんじゃないか? そうとしか思えない。

てか、年配のアーティストの場合、1本目をあれだけハードな構成にしたら2本目は「バラード多めで」となりそうなものだが、泉谷の場合は逆だ。舞台上には、2本目も1本目以上にテンション高めで吠えまくる75歳がいた。1曲目、「長い友との始まりに」からいきなりシャウト! そのまま2曲目の「のけものじみて」へ。開演から10分近くノンストップで吠え続け、やっとMCである。「いいか!1本目よりもっと激しいからな! 最後までやれないと思う(笑)」と言いながら、そのまま3曲目「アンダープリック」へ。穏やかな曲なんか、ハナからやる気はないのだ。「なんでこんな大変な思いしなきゃいけないんだ!」と言いながらも「楽しい!」と叫び、5曲目「風もないのに」でまた吠える。

「ビルボードの時計を全部狂わせてでも、予定時間より長くやりたい!」

…… って、どっちだよ!(笑)

1曲だけカブった「春夏秋冬」はLOSERバージョン!


ところで、この日のサービスエリア(S席相当)の料金は1万円だった。「その料金に見合う幸せをなんとか作ろう! お前らを幸せにするぞ!」と宣言する泉谷。そもそも「アーティストに励ましだの応援だのしなくていい!」と諭す。「カネもらって、励ましももらって、それじゃ総取りだろ! カネもらったら吐き出せ、バカヤロー!」 泉谷は根っからのエンターテイナーだなあといつも思うけれど、入場料を払って来てくれた客は、金額以上に満足させて帰すのがこの人の信条だ。さらに「お前たちの面倒はオレが見る!」ときたもんだ。「諸君! もう休んでられないけど、いいか??」って、そもそも休む気なんかないでしょ? 7曲目「翼なき野郎ども」から「デトロイト・ポーカー」「俺の女」「ゲットー」「世代」「栄光か破滅か」とほぼ休みなしで骨太の曲が続く。1階フロアもいつの間にか総立ちになった。

13曲目、ここまで1本目のステージとは一切曲カブリなしで進めてきた泉谷だが、ここで初めて「カブらせてもらう。『春夏秋冬』なんだけど、LOSERバージョンでやっちゃうよ!」って、
どうです、この心憎い配慮は? 今回もこの曲でステージ背後のカーテンが開き、今度は夜のビル街が現れた。いまの日本社会は、頑張った人が必ずしも「今日ですべてがむくわれる」世の中ではなくなった。だがそれでも「今日ですべてが変わる」という意思を持ち続ければ、いつか夜は明けるし、明るい日はやって来る。そうやって泉谷しげるは半世紀以上、時代と向き合いながら、愚直にステージ上で闘ってきたのだ。てか、1日2回も違うバージョンで「春夏秋冬」が聴けるなんて、オレはなんて果報者なんだろうか。

振り返らない泉谷しげる。いつだって「今が最高」


やはり終演時間ギリギリということで、そのまま間を置かず14曲目「ハレルヤ」に突入。前半は泉谷が1人で弾き語り。途中からバンドが入ってくる構成は最高! この曲が終わったところで、「♪ハッピーバースデー・トゥ・ユー」の合唱が起こり、サプライズでケーキが登場したが「私は食べられないんで、出口に置いとくからみんなで食べてください!」には笑った。2本とも、75年の歩みを振り返るようなMCが一切なかったのも素晴らしい。だって泉谷はいつも「今が最高」だからだ。



「ビルボード、音がいい! さすが1万円!(笑)」
「お前らの面倒は、オレが見る!」

―― と最後まで吠えまくって、みんなと握手、女性客とは抱擁を交わしながら「皆さん、ガンバレ!」と叫んでステージを後にした泉谷。なんだかんだでトータル3時間弱、その体力面もさることながら、すべての客を入場料以上にきっちり満足させて帰す技倆。楽曲のクオリティの高さも含め、エンターテイナーとしての泉谷はもっと高く評価されるべきだ。この分だとおそらく10年後も、悪態をつきながら歌っていると思う。こっちも負けちゃいられないぞ。私も、75歳のとき、若いコから花を贈られるジジイになれるよう、頑張ります。うす!


<放送概要>
テレビ初独占放送決定!

この記念すべきステージ『泉谷しげる 75th Anniversary Live』を歌謡ポップスチャンネルで7月29日(土)テレビ初独占放送!
・番組名  :泉谷しげる 75th Anniversary Live in ビルボードライブ東京
・放送日時 :2023年7月29日(土)午後5時~
・公式サイト:https://www.kayopops.jp/feature/shigeru_izumiya/

<歌謡ポップスチャンネルとは>
CS放送『歌謡ポップスチャンネル』は、幅広い年齢層に向けて、様々な音楽や名曲をたっぷり放送する音楽専門チャンネルです。スカパー!、J:COM、ひかりTV、全国のケーブルテレビ局でご視聴いただけます。
・公式サイト:https://www.kayopops.jp/


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2023.06.01
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カタリベ
1967年生まれ
チャッピー加藤
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