10月25日

風の時代にこそ聴きたい! ZABADAK が続ける “遠い音楽” の旅

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自然の命、森羅万象の音を探し放浪する旅人、ZABADAK


まるで、星や虹や月から出る音を探る「音の旅」をするように、活動を続けるユニットがZABADAK(ザバダック)である。

私とZABADAKの出会いはレンタルCDショップである。『遠い音楽』という美しいタイトルに興味を持ったのである。とても軽い気持ちの “ジャケ借り” だ。

ところが、いざ聴いてみると、秘密の地図を開いたような衝撃! スピーカーから溢れ出るギター、リコーダー、マリンバなどあらゆる楽器のせめぎ合い。上野洋子のシャーマンの如く澄んだ声、吉良知彦の暗号を呟くようなミステリアスボイス、美しい歌詞。

もしかして私は、ごく限られた人しか聴けない、極秘の民族音楽と讃美歌を偶然に聴いてしまったんじゃないの!?

収録曲「遠い音楽」の作詞家が、当時愛読していた吉本ばななの『哀しい予感』の表紙イラストを描いている原マスミだったことにも、「ああ運命!」などと余計テンションが高まったものである。

その後、彼らのCDを遡り買い漁っていった。ZABADAKの音楽性に大きな影響を与えたケイト・ブッシュも、このとき芋づる式で知った。

面白いのはZABADAKを聴いていると、その創造力に「ハマる」というのではなく、彼らに誘われ、これまで見えなかったものに「気付く」感覚が出てくることである。

ZABADAKは旅人で、自然の命、森羅万象の音を探し、放浪している。曲やアルバムはその旅の報告であり、私はその物語の壮大さに毎回驚き、何度も何度も聴き返してしまうのだ。

アメーバ的存在? ソロ期とアルバム「音」から感じるZABADAKの覚悟


ZABADAKに “広い世界を巡る音の民” というイメージがあるのは、民族音楽を彷彿とさせる楽曲のせいだけではなく、参加ミュージシャンの幅広さにもある。

吉良知彦は、ZABADAKについて「多くのミュージシャンに支えられた、不定型なアメーバ的存在というのが僕の認識です」と語っている。音楽を理解し合う仲間が、形を変えながら物語を作っていく。まさに音楽のアメーバである。

私が最初に出会った『遠い音楽』(1990年)は、5thアルバムで、吉良と上野洋子とのデュオ期(1887年~1991年)の代表作。1993年の『桜』を最後に圧倒的な透明感を放っていた上野の声は抜けたが、1994年に発表した吉良のソロユニット第一弾『音』は、可能性がパンパンに詰まった宝箱のようだった。

デュオ期が “地図のない国の祝祭” とすれば、吉良のソロ期は、“新たな探検に向けての仲間との意見交換” とでもいおうか。まるで童謡のように、互いの心の音を確認し合うような「14の音」も素晴らしいが、特筆すべきは「点灯夫」。ソロになった吉良が道なき道にぽつり、ぽつりと光を灯し、歩いていく。そんな静かな覚悟と美しさを感じる一曲である。

私にとって吉良知彦のイメージそのものであり、2016年彼が急逝したニュースを聞いたときも、この「点灯夫」を繰り返し聴いた。

新たな旅の始まりを感じる名盤「IKON~遠い旅の記憶~」


ソロ期も様々なアーティストが彩りを加え、『賢治の幻燈』や『光降る朝』『はちみつ白書』などアルバムを発表。ただし、アコースティックなイメージが強くなっていた。

そんななか、2000年に突如放たれた15thアルバム『IKON~遠い旅の記憶~』。

初めて聴いたときの興奮は忘れない。「時は満ちた。旅に出るぞ!」と、もう一度のろしを上げられた感! 抑えていたエネルギーを爆発させるように、プログレに振り切った楽曲が怒涛のように襲い来て「あぁ、これぞザバ!」と震えた。

時には駆け、時には立ち止まり180度広がる夜空をぐるりと見渡し、満点に輝く星に呆然とする。虹の出る音、砂煙、星の瞬き。そんな些細な音と風景まで、まざまざと見え、聴こえてくるのだ。

13分に渡る「遠い旅の記憶(~1.旅の予感~2.北の回廊~3.新しい場所)」の神秘と雄大、祈りにも似た「赤い鹿の伝説」、美しくも儚い「城」、そして吉良の声が哀しくやさしく落ちてくる繊細な「蒼の部屋」。希望多きラストの曲「Dreamer」――。

鈴木光司の小説『楽園』に大きな影響を受け、組まれた曲の構成はまさに音楽の旅だ。

この『IKON』により、地図にない国への彷徨いはこれからも続くのだ、と示された気がした。聴き返すたび、永遠に!

これまでの曲の全てが、新たな意味を持って聴こえてきた。そして、『IKON』後のアルバムには、物語の続き、新世紀の伝説の続きを感じた。第2次デュオ期は、ボーカル、小峰公子の不思議な包容力とともに。

現在も、小峰を中心にZABADAKの巡行は続いている。壮大な記憶の旅は、これからもずっと “途中”。目の前に広がるのは、生命の喝采と収穫祭だ。紡がれる伝説に耳を傾けずにはいられない。

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2022.01.17
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カタリベ
1969年生まれ
田中稲
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