世界中で大ブームを巻き起こしたドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」
数ある海外ドラマの中でも、『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下:SATC)ほど、多くの視聴者を夢中にさせた作品はそう多くない。ニューヨークを舞台に、4人の30代女性の恋愛と友情を赤裸々かつファッショナブルに描いたこのドラマ、本国アメリカではもちろん、世界各国で大ヒット。全6シーズン94話ものエピソードが制作された。日本での初回放送は、アメリカでの放送開始から約2年半遅れての2000年12月。有料であるWOWOWでの放送だったが、じわじわと口コミで広がり、社会現象ともいえる大ブームを巻き起こした。
ドラマチックな大恋愛とソウルメイトを求め続ける、恋愛至上主義のキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)。感情抜きでセックスを楽しみ、束縛や結婚を嫌う肉食派のサマンサ(キム・キャトラル)。白馬の王子様と出会って完璧な家庭生活を築くことを夢見る、保守的なシャーロット(クリスティン・デイヴィス)。パートナーとの対等でスマートな関係を求める、現実主義のミランダ(シンシア・ニクソン)。
刺激的なタイトル通り、まず話題となったのが、4人の恋愛と性に対する奔放さ。シャーロットも保守的とはいえ、ちゃんとやることはやっている。だが、ここまで人気となった理由はそれだけではない。彼女たちの友情こそがこのドラマのベースになっていることが一番の理由だろう。4人の友情に涙したSATCマニアは、世界中にどれだけいることだろう。
ドルガバのショーでキャリーが大転倒!シリーズ屈指の傑作回は
全6シーズンの中で、シリーズ屈指の傑作回といわれているのが、シーズン4の第2話「素顔のままで」(原題:The Real Me)。
プロのモデルと本物のニューヨーカーをミックスしたファッションショーに出演することになったキャリー。モデルと比べられるのはイヤだったが、ドルチェ&ガッバーナのドレスが着られると知り、渋々出演を承諾。だが、小柄なキャリーにはドレスの丈が長すぎた。高身長のスーパーモデル(ハイディ・クラム)にドレスを奪われ、キャリーはキラキラスパンコールが散りばめられた小さなパンツ(下着)とコートを身に着けて出演することになる。
“私、ライターなのよ。こんな下着姿じゃランウェイ歩けない” と訴えるものの、ショーのプロデューサーに強引に押し切られる。サマンサに励まされ、シェリル・リンの大ヒット曲「Got Be Real」が流れる中、キラキラ下着でショーに登場したキャリーだったが、ランウェイで派手に転倒する。おまけに、あのドレスを着て、後ろから歩いてきたモデルのハイディにひょいとまたぎ越され、観客席にいたゲイの友人スタンフォードが思わず “まるで車にひかれたカエルよ!” と叫ぶのだ。
だが、キャリーはここでこそこそと逃げ出したりしない。現実の人間は、人生で転んでも立ち上がって、また歩き続けるものだから。ゆっくりと立ち上がり、また颯爽とランウェイを歩き始め、観客たちの大喝采を浴びるのだ。何度観てもキャリーが立ち上がる場面で泣けてしまう。ここに詳細は書かないが、サマンサ、シャーロット、ミランダ、それぞれのエピソードとオチも最高で「The Real Me」というタイトルにぴったり。
さらに、ぱっと終了してタイトルバックに切り替わる通常回とは異なり、「Got Be Real」が流れるまま一気にエンディングへ。キラキラパンツをキャビネットに仕舞ったキャリー、日常の下着姿でクローゼット内をランウェイのごとく歩き、バスルームに入っていく。これぞ、『セックス・アンド・ザ・シティ』。まぎれもない神回だ。
サマンサ不在、SATCの続編「AND JUST LIKE THAT...」
さて、全6シーズンで大団円を迎えたSATCだったが、その後映画2作、さらに2021年から2025年には続編のドラマ『AND JUST LIKE THAT… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』(以下:AJLT)まで制作された。ひたすらゴージャスだった映画2作はこの際おいておこう。問題は、シリーズ3までつくられたAJLT。SATCを象徴するサマンサがいなかったのだから、SATCマニアとしてはがっかりせざるを得ない。
サマンサ不在の穴を埋めるためか、様々な人種の新たな主要メンバーが追加されているのだが、それによってひとりひとりのエピソードが散漫になっている印象を受けた。おまけに、あのクールで理想的な女友達のミランダが突然ゲイになり(まぁ、そこはいいとしても)、十代の乙女か?っていうくらいに恋愛相手に振り回され、突飛な行動を繰り返す。ミランダって、こんな人だったっけ? 多様性を意識するのはいいが、SATCの真髄はどこへいったのだろう。
それに女も60歳近くなると、恋愛や結婚についてのガールズトークはほぼしなくなるもの。話の中心は、健康、エイジングケア、終の棲家、ずっと続けている趣味、社会問題…… といったところか。悲しいかな、いつまでも最前線で恋愛トークに夢中なキャリーにすごく距離を感じてしまった。とはいえ、SATCが最高のドラマだったことは疑いようがない。たとえつまずいても、車にひかれたカエルのような姿から立ち上がったキャリーを思い出せば、私たちも颯爽とランウェイを歩き出せる気になれるのだ。
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2026.08.12