1995年 2月20日

【ミリオンヒッツ1995】大黒摩季「ら・ら・ら」ファンの皆と一緒に歌える曲を作りたい!

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リレー連載【ミリオンヒッツ1995】vol.2
ら・ら・ら / 大黒摩季
▶ 発売:1995年2月20日
▶ 売上枚数:133.9万枚

パワフルな歌声で多くの人の心を掴んだ大黒摩季


1990年代、時代はカラオケブーム真っ只中。“大黒摩季の曲には本当にお世話になりました!” と言葉を捧げずにはいられない。1992年に「STOP MOTION」でデビューしてすぐに火がつくも、メディアへの露出は一切なく “大黒摩季というアーティストはこの世に実在しないのではないか” という都市伝説まであった。

人前に本格的に登場したのは、1997年のソロライブとデビューからずいぶん経ってからのこと。その間にも「別れましょう私から消えましょうあなたから」「Harlem Night」「あなただけ見つめてる」「白いGradation」「夏が来る」など数多くの曲をヒットさせ、特にアップテンポのロックチューンは、パワフルな歌声で多くの人の心を掴んだ。

結婚を焦る年代の女性に向けたリアルソング「夏が来る」


当時の女性たちに大黒摩季の曲が支持された大きな理由は、その歌唱力はもちろんのこと、歌詞の圧倒的な共感にあったと思う。「STOP MOTION」と「DA・KA・RA」では、恋する女性の気持ちをクールに歌い上げ、3枚目のシングル「チョット」からは曲調もどんどんアップテンポのロックチューンへと進化。それに伴い、歌詞も容赦ない展開になっていく。4枚目シングル「別れましょう私から消えましょうあなたから」では、彼の恋心が冷めていく姿を超リアルに描き、便利な女扱いされて傷つく女性像を見事な歌唱力で歌い上げた。

6枚目の「あなただけ見つめてる」では、彼が望む女性になるために男友達との関係も絶ち、彼好みの女性になろうとひたすら尽くしまくる女性を描いてみせた。8枚目の大ヒット曲「夏が来る」では結婚を焦る年代の女性に向けてリアルソングを披露。“真っ白な馬に乗った王子様を探していたけれど、まったく表われる気配がない!” という泥臭いほどの心の叫びは当時の女性達の心に突き刺さった。

周りはどんどん結婚していくというのに、自分は何かが間違っていたのだろうか。強くて女王様キャラの自分より、なにもできないお嬢さまキャラの女性たちがウケがいいのはどういうこと⁉ と、やさぐれて見せる姿は辛辣であり、とてもユーモラスでもある。いわゆる “結婚適齢期” というものが存在した時代の女性たちにとって、その歌詞はグサグサ刺さりまくりで、皆カラオケで熱唱し、憂さをはらしたものだ。



1995年リリース「ら・ら・ら」の名フレーズ


閑話休題。今回のテーマ「ら・ら・ら」の話をしよう。1995年にリリースされた10枚目のシングル「ら・ら・ら」。ここに来て珍しいミディアムテンポの優しいメロディー。これまでのロックチューンのように荒ぶった曲調ではなかったし、きっと幸せいっぱいの恋愛ソングなのだろうと思った。しかし、その思いは裏切られる。そう、前作「夏が来る」の流れをがっつり汲んだ “結婚適齢期” に苦しむ女性の物語だったのだ。これには “さすがです!摩季ねえ” と。

夢を追いかけて忙しい彼との長い春。逢いたいのになかなか逢えない。こんなとき、甘え上手な女性ならば、きっと “逢いたい” の一言が可愛く言えるのだろうけど、強い女性を演じてきた素直になれない女性にとっては、その一言がどうしても言えない!

そして名フレーズ――

 あっと言う間にもう
 こんな年齢だし、親も年だし、
 あたなしかいないし… ねぇ

痛いほどのリアルがこのフレーズに濃縮されているではないですか!そして、曲を締めくくる最後のフレーズはこうだ。

 ずっと ずっと ずっと…
 一緒にいようね

甘え上手な子が言う「♪一緒にいようね」とは意味が違って聞こえるのは私だけだろうか? “ずっと一緒だよね? 離れていかないよね? 大丈夫だよね。絶対捨てないでね。捨てるなんて許さないからね” という彼に対する強い圧。そして自分に対して言い聞かせる “ずっと一緒なんだから、きっときっと大丈夫!絶対離さない!!” という強烈なジャブに聞こえて仕方ない。男性からすると、相当に恐ろしい(笑)



大黒摩季は私たちを理解してくれる心の代弁者


なぜそんなふうに感じてしまうかといえば、大黒摩季の曲の主人公たちの多くが “本当は誰よりも甘えたくて弱いのに、どうしても素直になれない強がりの女性たち" だからだ。パッと見は強い女性であり、ついつい男性に尽くしたり、世話をやいてしまったりするのが玉に瑕。そうこうするうちに、都合のいい女に成り下がり、結婚がどんどん遠のいていく…。

そして別れ際に “キミは大丈夫!1人でも生きていけるから” なんて言い捨てられて、どこかの可愛く素直な甘え上手なお嬢様に奪われてしまう結末。あざとくなんてなれない不器用な女性たちのせつない姿がどの曲にも散りばめられている。そうしたリアルな女性像が、痛いほど共感を呼び、いつしか摩季ねぇは私たちを理解してくれる心の代弁者のようになっていった。だからこそファンとの絆は海よりも深い。

「ら・ら・ら」という心地よい最上級の鼻歌は “ファンの皆と一緒に歌える曲を作りたい” というところから生まれたのだという。ライブではきまって両手を挙げて会場に集まった同志たちが大合唱する名曲となり、そのハートフルな光景を目の当たりにして胸が熱くなった方も多いだろう。

ダメンズでもなく、ダメな女でもない。大黒摩季の描く女性の強さ


2000年代になると倉田真由美による漫画『だめんず・うぉ〜か〜』の連載が始まるなど、ダメな男にひっかかってしまうダメな女性の姿が描かれ、話題となる。しかし、それ以前から大黒摩季は自身の曲の中でどうにもうまくいかない不器用な女性像を描いていた。

ただし、ここで間違っていけないのは、大黒摩季の描く恋模様は、けっしてダメンズとの恋ではなく、ダメな女性を描いているわけでもないということだ。大黒摩季の曲の主人公はみんな、どんな逆境にあっても、明日を信じて顔を上げて突き進む芯の強さを持った女性たちなのだ。そしてそれはなにも特別な女性ではない。毎日をひたむきに生き、精いっぱい恋をして、頑張ったけれどどうにも上手く行かなくて… “そりゃ、やさぐれる日だってあるよね” と呟いてしまうような、どこにでもいる普通の女性たちなのだ。

そして、ライブ会場に集まるファンたちもまた、毎日それぞれにさまざまな壁にぶつかりながらも、大黒摩季の曲からパワーをもらって前へ前へと突き進んでいく、強くてカッコイイ女性たちだ。会場の床が抜けそうなほどのライブの熱い盛り上がりが、大黒摩季とファンとの深い絆を物語っている。

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2025.03.05
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