私は出会ってしまったのである。彼女は自分の周りにいる他の女の子たちとはまるで違っていた。なぜなら、とても美しい緑色の髪をしていたから。
黒髪、茶髪、金髪、銀髪、赤毛… 世界を見渡せば、様々な髪色が存在している。だからだろうか、自然界には存在しない緑色の髪をした少女に出会ったとき。私はなんとなくときめいてしまったのだ。
ある時、植物から生まれた緑色の髪をした少女がいた。彼女は植物を愛する心優しい若き研究員と知り合い恋をする。少女は彼を愛し、彼は彼女を守ろうと決意する。男は研究材料として研究所に隔離された少女を助け出し、遠い記憶の中で、かつて少女と初めて出会った場所へと逃避行するのであった。
『グリーン・レクイエム』(1988年公開・今関あきよし監督)は、当時絶大な人気を誇った女流SF作家・新井素子さんの小説を原作に作られた劇場映画である。主演は鳥居かほり。萩本欽一さんに見出され『欽ちゃんの週刊欽曜日』(1984年)にレギュラー出演し芸能界デビューしたあの美女である。
欽ちゃんファミリーの中にあって、彼女の清楚さ、透明感あるその美しさは一際目立っていて、ブラウン管の前で彼女を眺めてはよくため息をついたものだ。トレードマークは美しい黒髪のロングヘアー。だが、その髪をグリーンのウイッグで覆い隠してもその美しさはまるで変わらなかった。いや、その緑色のロングヘアーが良く似合い、より輝いて見えたように記憶している。
そして、音楽を担当したのは久石譲。やさしく、静かに、厳かに響く鍵盤の音がとても印象に残っている。深い森の中の仄暗さを感じさせるピアノの旋律がとにかく幻想的で素晴らしい。音楽が、愛するもののために力を尽くそうとする青年の心情に絡んで、鳥居かほりの美しさをさらにまた一層引き出していた。
ところで、この映画は様々な諸事情があったようで、1985年に製作されたものの3年もの間お蔵入りとなっていました。1988年、鳥居かほりの結婚を機に、上映するのは今しかないとばかりに差し込むような形で今関監督の新作と二本立てで劇場公開されます。そのためか、サウンドトラックそのものが発売されていません。
挿入歌「グリーン・レクイエム」「ジェラシー・エフェクト」の二曲は、松井五郎が作詞し、忍足敦子というシンガーが歌っているのですが、現在では過去に発売されたビデオでしか確認することができないとのこと。そんな訳で今や幻の挿入歌となってしまっていますが、機会に恵まれれば改めて聴いてみたい気がします。メインテーマであるインストゥルメンタル「Green Requiem」だけが、久石譲さんのアルバム「Piano Stories」に収録されています。そのお蔭で今日何とかこの名曲を耳にすることができるのです。
映画『グリーン・レクイエム』(1985年製作)
監督:今関あきよし
原作:新井素子
出演:鳥居かほり, 坂上忍
Green Requiem / 久石譲
作曲:久石譲
発売:1988年(昭和63年)7月21日
2016.11.10
YouTube / incarcerem
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