浅香唯が、今年4月29日(月・祝)に開催される日比谷野音の名物ロックイベント『Naon の Yaon 2019』に初出演するという。時代は変わったものだなぁと思ったけれど、浅香唯自身は歌声も容姿もそんなに変わってない。そして今なお大西結花と中村由真とともに三姉妹としても活動中なのが嬉しい。
彼女のアイドル時代全盛期の中で思い出深いのは、「セシル」というヒット曲だ。通算11枚目のシングルで、この曲だけ、僕は今でもやたらと好きである。リリースは1988年8月。僕が中学2年の時だった。
作曲は彼女最大のヒット曲となった前シングル「C - Girl」同様、NOBODY。ただ、ノリノリのロッキンポップスだった「C - Girl」とは雰囲気をガラリと変えて、「セシル」はなんだか 秋を思わせるミドルテンポのメロディアスな曲調に仕上がっている。NOBODY らしい美メロは切なくも説得力があり、ロック調歌謡の典型として文句のつけようがない。終盤の転調も効果抜群だ。
さらに僕がいっそう賞賛したいのは、詞である。作詞は、吉川晃司や小比類巻かほるに詞を提供していた麻生圭子。優しく人を励ましてくれる、胸に沁みるその作風は全編にわたり秀逸で、大人になってあらためて聴いてみても、十分に共感を呼ぶ内容だ。
なかでも、初めて聴いた時から僕の心に引っかかったのが、
今夜私がそれになれればいいのに
… という一節。“それ” という翻訳調の用法が僕にはなぜか強烈に引っかかって、この歌のイメージを一目盛り分ほど押し上げた。珠玉の名曲とはこういう歌のことを言う。職人が作るアイドル歌謡は本当にあなどれない。
さて、この「セシル」に関しては、忘れられない個人的思い出がある。「セシル」が気に入った中学2年の僕は、当時よくやったように、さっそくラジオのヒットチャート番組でエアチェックを試みた。だが、あいにく空のカセットテープが手元にない。“重ね録り なんでも録音用” の一本も残りの尺が足りなさそうだ。仕方がないので、当時テープが擦り切れるほど聴いていたBOØWY のアルバム『BEAT EMOTION』のB面が終わったあとの最後の余白を使うことにした。
つまり、ラスト曲「SENSITIVE LOVE」の後がかなり空いていて、いつもA面頭に先送りするのを煩わしく感じていたのだ。BOØWY なら LP も持っているので、いつでも録り直しできるからいいかな、と軽い気持ちで録った。『BEAT EMOTION + ボーナストラック「セシル」』の完成である。
軽い気持ちで録ったわりには、このBOØWY「SENSITIVE LOVE」からの浅香唯「セシル」の流れは、意外に良くてすっかり気に入ってしまった。というか最高の流れだった(笑)。もっと言うと「セシルからのA面1曲目「B・BLUE」がまた半端なく気持ちよかった(笑)。カタルシス倍増。BOØWY のロック歌謡性が不思議な化学反応を起こさせてしまったのだろうか、ハマり過ぎなくらいハマった。「セシル」は布袋寅泰が作ったのでは? なんて疑って作曲クレジットを探したこともあったなぁ。懐かしや。
そんなわけで、僕は今でもアルバム『BEAT EMOTION』を聴いたあとは浅香唯「セシル」を検索してしまいます。
2019.04.29
YouTube / poplovelyidolyui
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