1月21日

ザ・シャムロックのシングル9作品が配信開始!そのモッズ魂はどう貫かれていったのか?

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ザ・シャムロックのシングル「It's My Love」発売日
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ザ・シャムロック、シングルリリースされた9作品のデジタル配信スタート


ザ・シャムロックは、1988年にデビュー。バンドブームの時代に、その渦中にいたパンクロックの熱量とメッセージをダイレクトに発していたバンドとは一線を画していた。彼らはメロディとハーモニーの美しさを重視した。しかし、そこだけではなく、初期ビートルズをはじめとする英国産ビートグループを彷彿とさせるグルーヴ感を持ち合わせ、その独自性が際立っていた。

そんな彼らの、入手困難だったポニーキャニオンSEE・SAWレーベル在籍時のアルバム4枚がデジタル配信されたのが2025年10月。これに続き今年2026年3月18日に、シングルとしてリリースされた9作品のデジタル配信がスタート。さらに同時制作されたシングル曲のミュージックビデオ8曲とファーストアルバム『Who Loves Me?』収録曲「Go!Go!Go!」のミュージックビデオも公開されている。今回デジタル配信されたシングルは以下の通り。

▶︎「It's My Love」(1988年)
▶︎「Loosen Love Sick」(1988年)
▶︎「My Yesterday」(1988年)
▶︎「Always I Love You」(1989年)
▶︎「冬の天使達 -Single Mix-」(1989年)
▶︎「恋のマリオネット」(1990年)
▶︎「Welcome Home Again」(1990年)
▶︎「La Pa Pa -Single Mix-」(1990年)
▶︎「five -僕がいた夏-」(1991年)
*サードシングル「My Yesterday」はミュージックビデオ未制作

なお、「冬の天使達」「La Pa Pa」「Merry Little Christmas」(La Pa Pa カップリング曲)の3曲は、アルバム収録ヴァージョンとは異なるシングルミックスとなっている。



誰もが感じていた青春の焦燥をダイレクトに体現した「It's My Love」


ザ・シャムロックのデビューシングルとなった「It's My Love」は、いきなりボーカルから入るという強烈なフックとキャッチーなメロディーラインで、インパクトが絶大な名曲だ。そして、山森正之と高橋一路のツインボーカルが織りなすコーラスワークは、誰もが経験する青春の焦燥を心の奥に響かせてくれる。山森のベースラインがグルーヴを率先し、骨太なサウンドにコーラスと溶け合うという、ザ・シャムロックならではの独自性を打ち出している。

そう、1980年代初頭から東京モッズシーンで活躍していた彼らの世界観がクリアに体現された1曲といえよう。ザ・シャムロックは、この「It's My Love」から1991年にリリースされた「five -僕がいた夏-」までのSEE・SAWレーベル時代に9枚のシングルをリリースしていく。その間に、彼らはバンドマンとしての矜持を忘れず、果敢に自分たちの音楽性を深化させていく。



バンドサウンドを希求した「Always I Love You」


セカンドシングル「Loosen Love Sick」は前作以上にメロディアスで、1960年代のマージービートに大きく敬意を払いながら、時代にマッチしたパワーポップに仕上げている。サードシングル「My Yesterday」は、彼らがアマチュア時代に書いた曲だ。レコーディングでは、ホーンやパーカッションを効果的に活かし、ブルー・アイド・ソウル的な新たな側面も披露。このように、1曲1曲のバンドの深化も目を見張るものがあり、この配信がどれだけ意義深いものかが明白だ。

そして「Always I Love You」では、ギター、ベース、ドラムを基盤としたバンドサウンドをこれまで以上に希求。山森は以前のRe:minderインタビューでこんなことを語っていた。

「ギターはTH eROCKERSの谷さん(谷信雄)、後に 前田さん(前田篤)、ドラムは大島くん(大島賢治 / 忌野清志郎&2・3' S、THE HIGH-LOWS)、キーボード&サックスに日比野さん(日比野信午)というメンバーが固定していたのもサウンド作りに大きな影響を及ぼしています。やはり、高校時代からの友人でもある大島くんがドラムに入ってくれたのは大きいですね。ドラムの音がバンドっぽくなって。そんなメンバーで2枚目を作り、3枚目、4枚目で理想とするバンドの音が出来てきた感じです」


これが、この同時期にリリースされた「Always I Love You」にも如実に現れている。この曲に続く「冬の天使達」は、切なさを募らせた普遍的なバラードだ。そして、全てを振り切るような疾走感を全面に打ち出した「恋のマリオネット」をリリースする。ここではメンバーが恋焦がれた1960年代のビートグループや1970年代末のネオ・モッズ・ムーブメントのビートを全面的に打ち出している。曲ごとのスタイルは違えど、根本的な部分が1ミリもブレていないのがザ・シャムロックの一番の魅力だ。





さらに1990年代に入りリリースした「Welcome Home Again」はイギリスのネオアコバンド、アズテック・カメラからインスパイア。高橋のギターはラテン系のフレーバーを醸し出している。この時のグルーヴを「La Pa Pa -Single Mix-」で継承。そして、SEE・SAWレーベル時代のラストシングルとなる「five -僕がいた夏-」では、ソフィスティケートされた側面を打ち出しながらも、そこに内包されたバンド魂、モッズ魂が、全く失われていないことが、熱量溢れるボーカルから感じ取れる。

1990年代の幕開けに相応しい「five -僕がいた夏-」


今回のシングル9作品のデジタル配信はザ・シャムロックの軌跡を辿るのに絶好の機会だ。彼らのキャッチフレーズに《60'sを夢みて、80'sを駆け抜け、90'sを予感させたノット・マニアックな全方位型エバーグリーン・ポップバンド》とあるが、全曲を聴いてもらえれば、この言葉が言い得て妙だということがリアルに感られるだろう。

この「five -僕がいた夏-」は1990年代の幕開けに相応しく、音楽が多様性を極めた来るべき時代を示唆している。そして、ここに至るまでのバンドのアプローチには、彼らのルーツミュージックに対する敬愛の念と、時代を見据えたサウンド作りに専心したミュージシャンとしての矜持に溢れている。



そして、それぞれのミュージックビデオに映し出される若き日々の山森と高橋は、雨上がりの太陽を浴びた若葉のような煌めきが満ち溢れている。あれから40年近くの時を経たが、2人の熱量とクールな佇まい、彼らの憧憬が詰め込まれた映像からはノスタルジーを超越したロックの普遍性が漲っている。
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2026.03.26
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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