2025年9月21日、『歌謡ポップスチャンネル』で『Re:minder SONG FILE 浅香唯セレクション』が放送される。この記事では、番組で放送される13曲の中から7曲をリリース順にクローズアップ。当時の時代背景をなぞりながら、曲の魅力を考察したい。
40周年記念コンサートでも歌われた「ヤッパシ…H!」
1980年代トップアイドルの1人であり、多くの楽曲をヒットチャート上位に送り込んだ浅香唯だが、デビュー当初はなかなかヒット曲に巡り会えない状態が続いていた。1985年6月リリースのデビュー曲「夏少女」、9月リリース「ふたりのMoon River」はオリコン・シングルチャートの100位にも入らなかった。
そして、デビュー翌年の1月にリリースされたサードシングルでは、大きな路線変更がなされる。それが「ヤッパシ…H!」だ。当時の若者たちの間では、恋愛や性的関係の進行段階をアルファベットで置き換えるスラングがあり、80年代アイドルの曲にはそれを連想されるものがいくつかあるが、浅香唯もそこに踏み込んだ。
森雪之丞の歌詞は時代の空気を捉えつつも、性的な部分をギリギリにかすめた絶妙な仕上がりで、作曲と編曲を兼ねた馬飼野康二がキラキラした弾けるような曲に仕上げている。しかし、この曲も売れなかった。またもや100位圏外。もし、浅香唯が大ブレイクしなかったら “カルトアイドルソング” としてSNSのネタになっているのかもしれない。なお、2025年に開催された『浅香唯デビュー40周年記念コンサート』の追加公演では、本人がドラムを叩きながらこの曲を歌っている。同曲で同日に放送される特別番組『浅香唯デビュー40周年記念コンサート 追加公演@CLUB CITTA'』も必見である。

初のオリコントップ10入りを果たした「STAR」
そもそも浅香唯は『少女コミック』(小学館)主催の『ザ・スカウトオーディション’84』で、1万6千人の応募者の中から選ばれ、グランプリに相当する “浅香唯賞” を受賞したことで歌手デビューの機会を得ている。芸名の浅香唯は、同誌に連載された大山和栄のコミック『シューティング・スター』の主人公名に由来する。この作品は、アイドルを目指し、やがてスターの地位を掴む女性を描いたものである。
デビューから1年以上も苦戦していた浅香唯だが、1986年10月からフジテレビ系ドラマ『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』に主演に抜擢されることで、一気に全国的な知名度と人気を獲得する。そして番組出演中にリリースされた最初のシングルが「STAR」である(1987年1月発売)。ゴダイゴのタケカワユキヒデがどこか悲しげな旋律を提供し、菊池桃子や1986オメガトライブの作品でも知られる有川正沙子がドラマティックな歌詞を書いた。
そのサビには、「♪追いかけて 私の Shooting star」という一節がある。スタッフはここで、とっておきのフレーズを投入し、アイドル・浅香唯がまさに星を掴もうとする状況と連動させた。自身の原点とリンクした「STAR」で、浅香唯は初のオリコントップ10入りを果たすのである。

「スケバン刑事」シリーズの楽曲「Remember」「Believe Again」
『スケバン刑事Ⅲ』の人気は絶好調で、1年間続いた番組の佳境に入ったタイミングで、ファンにビッグプレゼントが届けられた。 番組の中で姉妹を演じる浅香唯・大西結花・中村由真が、ユニット “風間三姉妹” を結成。1987年10月に最初で最後のシングル「Remember」をリリースしたのである。「Remember」はオリコン初登場1位。その勢いのまま、『スケバン刑事Ⅲ』は映画化が決定した。
この「Remember」に続く浅香唯の9枚目のシングルは、1988年2月に公開された映画『スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲』の主題歌「Believe Again」だ。1988年1月リリースのこの曲は、『スケバン刑事』シリーズの楽曲としては珍しくメジャーコード主体の曲調である。そして麻生圭子の歌詞、萩田光雄のアレンジも相まって、シリーズの締めくくりにふさわしいスケール感のあるメッセージソングとなった。萩田光雄は、南野陽子の「さよならのめまい」「風のマドリガル」「楽園のDoor」を手掛けた “スケバン刑事サウンド” の実績が豊富なアレンジャーでもあった。
浅香唯最大のヒット曲「C-Girl」
トップアイドルになった浅香唯に、『スケバン刑事Ⅲ』卒業直後に用意されたのは “カネボウ ’88 夏のプロモーション・イメージソング” の「C-Girl」である。CMには本人が出演し、5月にはオーストラリア・ロケの写真集「C-GIRL」(ワニブックス)、6月にアルバム『Candid Girl』、7月にはイメージビデオ『Candid Girl -浅香唯 in Australia-』を発売。それは3代目スケバン刑事のイメージを払拭する大攻勢であった。
「C-Girl」はNOBODYによるキャッチーなメロディを、井上鑑がロックの躍動感を保ちつつ、ほどよくポップにアレンジした楽曲である。そして、浅香唯の歌声はそのサウンドにとてもマッチしていた。CM効果もあり、多くの人に響いた「C-Girl」は今のところ浅香唯最大のヒット曲となっている。
自身のキャラクターが強く投影された「セシル」
1988年8月にリリースされ、フランソワーズ・サガンの小説『悲しみよこんにちは』の登場人物をモチーフにした10枚目のシングル「セシル」もNOBODYの作曲だ。しなやかでメロディアスな旋律が主体となっている。一方、麻生圭子による歌詞は、人としての成長や成熟を描き、それがデビューから3年目、19歳を目前にした浅香唯自身の姿と重なった。とりわけ「♪名字で自分を 呼び捨てする」というフレーズは、浅香唯自身のキャラクターが強く投影されたものだ。

ライブで最も盛り上がる「恋のロックンロール・サーカス」
昭和から平成への転換期にも浅香唯はトップ戦線にいた。1988年10月のフジテレビ系ドラマ『金太十番勝負!』では田原俊彦の妹を演じ、翌1989年4月公開の映画『YAWARA!』では主演。この時期のシングルはゆったりとしたメロディアスな楽曲が続き、しっとりと大人になった浅香唯の姿がアピールされていた。
ところが、1989年7月リリースの15枚目のシングル「恋のロックンロールサーカス」は、カセットテープのCM曲であり、浅香唯のボーカリストとしての力をより鮮烈にアピールするものだった。これもまたNOBODYが作曲。従来の浅香唯のイメージを覆し、やがて、ライブで最も盛り上がる曲に成長した。

Information
Re:minder SONG FILE「浅香唯セレクション」
▶︎ 放送局:歌謡ポップスチャンネル
▶︎ 放送日時:2025年9月21日(日)22:00〜23:00
▶︎ オンエア曲(ミゾロギ・ダイスケ選):
♪ C-Girl
♪ 夏少女
♪ ヤッパシ…H!
♪ 10月のクリスマス
♪ STAR
♪ 虹のDreamer
♪ Remember *風間三姉妹
♪ Believe again
♪ 恋のロックンロール・サーカス
♪ セシル
♪ OPEN YOUR EYES
♪ TRUE LOVE
▶︎ 番組ページ
https://www.kayopops.jp/feature/yui_asaka_40th/
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2025.09.15