2001年 1月8日

【Y2Kリバイバル】恋愛ドラマを終わらせた木村拓哉「HERO」踊る大捜査線とは双子だった?

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photo:フジテレビ  

木村拓哉演じる型破りな検事、久利生公平


「被害者の味方できんの、だって検事しかいないでしょ。(中略)死んだ被害者は裁判で証言なんかできねぇんだからさ。代わりに声になってやれんの、オレらしかいねぇじゃん。被害者が一番キツイに決まってんだから」

―― これは、ドラマ『HERO』(フジテレビ系)の第2話で、“どうして検事になったんですか” と尋ねた雨宮(松たか子)への、久利生(木村拓哉)の答えである。

そう、『HERO』――。21世紀が幕を開けた2001年1月クールに登場して、全11話の各話の視聴率が全て30%越えという偉業を打ち立てた伝説の連ドラだ。主演のキムタクが初めて、職業ドラマに挑んだエポックメーキングな作品でもある。事実、型破りな検事、久利生公平と、彼をサポートする検察事務官、雨宮舞子は恋仲に発展しない。何度か2人の関係性を匂わせる描写はあるものの、両者は共に協力し合って事件を解決するバディでしかない。

21世紀の幕開けと共にスタンスを変えた月曜9時枠


思えば―― それ以前の1990年代の連ドラは、最終回の視聴率が32.3%と大ヒットした『東京ラブストーリー』(1991年 )を起点に、恋愛ドラマ全盛期だった。キムタクが出演したドラマも『あすなろ白書』(1993年)、『ロングバケーション』(1996年)、『ラブジェネレーション」(1997年)等々、その多くはフジテレビ系列の月曜9時枠で放映され、同枠は “ラブストーリーのゲツク” と呼ばれた。月曜の夜、街から若い女性たちが姿を消した時代の話である。

そんなゲツクが、21世紀の幕開けと共にスタンスを変えたのだ。“20世紀最後の恋愛ドラマ” と呼ばれ、前クールで大ヒットした『やまとなでしこ』から一転、『HERO』で職業ドラマに進出する。以後、同枠はミステリーや群像劇、グルメドラマやロードムービー等々、多様なドラマを放映する枠に。その傾向は他局も追随し、キムタク自身も局を横断して様々な職業を経験する。コーパイ(副操縦士)、アイスホッケー選手、レーサー、財閥の御曹司、南極越冬隊副隊長、スーシェフ、警察学校教官、果ては総理大臣まで―― 。

主題歌は宇多田ヒカル「Can You Keep A Secret?」


そこで今回は、そんな、多様性の連ドラ時代の扉を開けた先駆者『HERO』の話である。余談だが、キムタクが工藤静香サンと結婚したのが2000年12月5日―― 同ドラマが始まるひと月前。恋愛ドラマから職業ドラマへの転換が、彼のプライベートと微妙にリンクしているのが、偶然かもしれないけど、時代の申し子たる所以かもしれない。ある意味、恋愛ドラマの時代を終わらせたのは、キムタクとも――。

 近づけないよ 君の理想に
 あとには戻れない Can you keep a secret?

主題歌は宇多田ヒカルの「Can You Keep A Secret?」である。彼女にとって7枚目のシングルで、もちろんミリオンセラーに。1998年暮れにデビューした彼女の旋風はまだ続いていて、『HERO』の8話にウエイトレス役でカメオ出演すると、36.8%と最終回と並んで、同ドラマの最高視聴率を記録する。ちなみに、台詞は水をグラスに注ぐ際に発した “失礼します” のひと言だけだった。

ただ―― いい曲とは思うけど、ドラマと合っているかというと、正直どうだろう。本編がハッピーエンドで幕を閉じても、同曲が流れると、ちょっとアンニュイな気持ちになるのは僕だけだろうか。ちなみに、タイトルを和訳すると、本人曰く「誰にも言わない?」(こっちをタイトルにしたほうがよかったかも)なんだそう。秘密を抱えつつ、誰かに伝えたい10代少女の揺れる心の内を表したとか。たぶん、突然スターになった当時の宇多田サンのリアルな心情が投影されていて(ビートルズの「ヘルプ!」みたいなもん)、僕らがドラマの最後に同曲を聴くたび、ちょっと不安に苛まれるのは、解釈としては間違ってはいない(笑)



主人公とヒロインが最悪の出会いから始まる、少女コミックの王道パターン


物語の構造は、大抵の職業ドラマがそうであるように、群像劇である。キムタク演ずる久利生公平は、高校中退後、大検を経て司法試験に合格し、検事に任官した異色のキャリア。A BATHING APEのダウンジャケットを愛用し、下はTシャツにジーンズと、スーツは着ない。

通販オタクで、コトあるごとに運動器具を購入する。前任地の青森地検から、東京地検城西支部に赴任して、雨宮が自ら願い出て担当事務官に就くが、マジメを絵に描いたような彼女は久利生の型破りな服装や、デスクワークよりも現場に出て捜査したがる彼の仕事ぶりに初日から拒否反応を起こす。この辺りは、主人公とヒロインが最悪の出会いから始まる、少女コミックの王道パターンだ。

職場の同僚たちは、他に芝山(阿部寛)、美鈴(大塚寧々)、江上(勝村政信)ら検事に、彼らを補佐する事務官に遠藤(八嶋智人)と末次(小日向文世)。まとめ役の城西支部の部長検事に牛丸(角野卓三)という布陣である。そして、本庁に次席検事の鍋島(児玉清)がどっしりと控える。城西支部の面々は時に久利生のマイペースな仕事ぶりに振り回されるが、なんのかんので最後はまとまる、よき仲間たち。そして鍋島は久利生と謎の接点があるらしく、型破りな彼の捜査を温かく見守る。

双子の関係にある「HERO」と「踊る大捜査線」


物語は基本1話完結で、ココが恋愛ドラマと大きく異なるところ。ちなみに、1話では政治家の贈収賄事件という大ネタを城西支部が扱い、一方、赴任したばかりの久利生には小ネタの下着泥棒が割り振られる。しかし、彼は “事件に大きいも小さいもない” と意に介さない。取り調べでは容疑者と女性モノの下着の話で盛り上がり、また現場好きゆえに家宅捜査(ガサ入れ)に出向き、容疑者のコレクションのビデオに見入る始末――。雨宮は上司の牛丸に担当替えを願い出るが、もう少し我慢してほしいと説得される。

まぁ、この構図、大方の予想通り、代議士(清水章吾)の取り調べはなかなか進展せず、一方、小ネタと思っていた主人公の扱う案件のほうで、重要な手がかりが見つかる王道展開に。たかが下着泥棒で久利生が警察のテリトリーであるガサ入れに介入したお陰で、代議士のアリバイに穴があるのを見つけ、大ネタは無事に立件される。

ほら、この一連のフォーマット、どこかで見たコトがありません? “事件に大きいも小さいもない” “主人公は無類の現場好き” “大小2つの捜査が並行して進み、小さい事件の方に大きな事件を解決する手掛かりが見つかる” ――。

そう、かの『踊る大捜査線』である。実は、同作品の基本コンセプトを考えたのは、当時フジテレビの編成だった石原隆サン。そして彼は、『HERO』ではプロデューサーを務めている。ドラマ作りにおけるプロデューサーの最も大切な仕事は “脚本読み” である。脚本家と共にプロットを考え、上がってきた脚本を読んでは何度も修正箇所を指摘し、ブラッシュアップを重ねる。その意味では、『踊る大捜査線』と『HERO』は双子の関係にあると見ていい。

何より、2つのドラマには、それまでの刑事ドラマにはない、大きな共通点があった。それが―― “被害者目線” である。実は、かつての『太陽にほえろ!』に代表される刑事ドラマの多くは犯人の物語を語り、そこにお茶の間を感情移入させた。つまり、“加害者目線” だった。だが、『踊る大捜査線』は “脱・太陽にほえろ!” を旗印に、被害者に寄り添う道を採用する。そして『HERO』もしかり。それが、冒頭の台詞である。

「被害者の味方できんの、だって検事しかいないでしょ。(中略)死んだ被害者は裁判で証言なんかできねぇんだからさ。代わりに声になってやれんの、オレらしかいねぇじゃん。被害者が一番キツイに決まってんだから」



脚本のピンチヒッターを任された福田靖


実は、『HERO』の脚本家は、2話でメインライターが交代している。当初、フジテレビのヤングシナリオ大賞の受賞者が1話を担当したが、聴くところによると、度重なる修正依頼(*連ドラの脚本作りとはそういうものだが…)に心が折れ、降板。急遽、ピンチヒッターを任されたのが、後に『ガリレオ』シリーズなどで多くのヒット作を手掛ける福田靖サンだった。

とはいえ、当時はまだキャリアが浅く、仕事も少なかった福田サン。突如舞い込んだ時間的余裕のない仕事だったが “キムタクのドラマを書かせてもらえる” “月9で仕事ができる” と脚本家冥利に尽きると快諾。そこから、乾いたスポンジが水を吸収するかの如く、石原隆サンのアドバイスに必死で食らいついて脚本を書いて、書いて、書きまくったところ、見ての通り、全話30%越えの神ドラマが生まれたのである。

当時、僕は偶然、福田靖サンと同じ東京・杉並区の浜田山に住んでいて、月刊誌『日経エンタテインメント!』で「テレビ証券」なる連載をしていた関係で、編集者を介して福田サンを紹介してもらい、よく食事に御一緒させてもらったのを覚えている。僕がこの連載で『HERO』の脚本を絶賛したのを福田サンが読んでくれて、あの記事に救われたと言ってくれたのが嬉しかった。その際、『HERO』の裏話も聴いたが、話せる範囲で印象的なエピソードを1つ。

最終回のプロット作りに悩んでいた福田サン。会議の帰り、疲れ果ててコンビニに寄り、雑誌棚でとあるテレビ誌を手に取ったところ、中に「『HERO』の最終回を予想する」という記事を見つけたという(そのくらい、ギリギリのスケジュールで脚本を作ってたんですね)。藁にもすがる思いで読み始めた福田サン。面白ければ、拝借するつもりでいたらしい。雑誌にしてみれば、予想が当たったことになり、パクリにはならないから(笑)。だが、ソコに書かれていたのはなんとも陳腐なストーリー。“こんなんじゃ石原サンから即ダメ出しが来るよ!” と雑誌にツッコミ、ソコから家に帰って猛烈に書いて、あの神プロットが出来上がったとか――。

田中要次演じる、絶対に外せない名キャラクター


最後に、『HERO』を語る際に、絶対に外せない名キャラクターの話を。久利生や雨宮を始め、城西支部の人たちの行きつけのバー “St.George's Tavern” のバーテンダー(田中要次)だ。コの字型カウンターの四畳半程度の狭い店なのに、どんな無理難題な注文をしても “あるよ” の3文字でスッとグラスや料理を客の前に置いてくれる。どうかしたら、メインの2人に次いで “第三の男” くらいの存在感がある。

そんな田中要次サンに、僕は一度だけ、映画『メッセンジャー』(監督:馬場康夫)のパンフレット作りでインタビューをさせてもらったコトがある。『HERO』の2年ほど前の話。オフで話す田中サンは笑顔の絶えない、やさしいおじさんだった。ただ、カメラが回ると、表情が一変する(褒めてます)。『メッセンジャー』では敵役のバイク便のライダーを演じたが、あまりにキャラが強すぎて、馬場監督が急遽、田中サンの登場シーンを足したくらいだ。

たぶん『HERO』も、同じ道を辿っている。

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2026.03.29
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