1992年 10月5日

90年代の朝ドラ考察!NHK 連続テレビ小説「ひらり」に関する4つのモヤモヤ

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ヒロインひらりの姉・みのりにモヤモヤ


放送当時は楽しく観ていたのに、あとあと、「あれ、こんなんだったっけ?」となるのはよくあること。ドラマの展開だけでなく、当時の価値観や考え方に戸惑うことも多い。

今年2023年に、1992年の連続テレビ小説『ひらり』が再放送されている。初回放送時は、快活で行動的なヒロインひらり(石田ひかり)を応援する気持ちだったが、今観るとモヤモヤするのだ。

モヤモヤその1が、ひらりの姉みのり(鍵本景子)。丸の内の総合商社に勤務しているのだが、いつも給湯室にいる。彼女と同僚のセリフから、仕事といえばコピー取りとお茶くみしかないことがわかる。彼女たちは、れっきとした正社員だが、働くことへの意欲はほぼなく、結婚相手を見つけて寿退社することで頭がいっぱい。92年当時は、この設定に違和感がなかったのだろう。そういえば昔は、腰かけOLなんて言葉があったっけ。

勤続5周年を迎えたみのりが、社内で表彰される場面。「10年表彰はされるなよ」なんて、男性社員からヤジが飛び、社内の人たちが大笑いする。今観るときついが、このときは “あるある” だったのだろう。当時、商社の中でキャリアを築いていける女性社員は、例外中の例外だったのかもしれない。

ひらりを囲んでキャッキャする相撲部屋にモヤモヤ


モヤモヤその2が、相撲の描写。そう、『ひらり』といえば、大相撲である。相撲が大好きなひらりの日課は、近所の相撲部屋・梅若部屋へ朝稽古を見に行くこと。部屋の力士たちとも仲良しで、さしずめ梅若部屋のマドンナといった趣だ。てんやわんやあった挙句、ドラマ後半でひらりは梅若部屋付きの栄養士となる。

相撲協会の協力を得て制作された『ひらり』だが、今観ると相撲部屋の描写にモヤモヤ。マドンナひらりを囲んで、番付順に関係なく仲良くキャッキャッしている梅若部屋の力士たちは、まるで白雪姫と7人の小人(小さくないけど)。「この部屋じゃ強くなれないよ」と言いたくなる。だがそれは、Netflix制作『サンクチュアリ -聖域-』やドキュメンタリー映画『相撲道』を観た、現代の私だからだろう。

92年といえば、若貴ブームが吹き荒れていた頃である。「へぇー、相撲部屋ってこんな感じなのかな」と、当時は微笑ましく観ていたのかも。この頃は、“かわいがり” や “中盆” なんて言葉も知らなかったしね。



渡辺いっけいを取り合う姉妹にモヤモヤ


モヤモヤその3が、ひらりとみのりの恋の鞘当てである。近所の診療所に赴任した医師・竜太(渡辺いっけい)をめぐって、姉妹が恋のライバルとなるのだが、「え、姉妹で渡辺いっけいの取り合い?」とモヤモヤしてしまった。

朝ドラヒロインの恋の相手となり、ブレイクする俳優は数々いた。渡辺いっけいもその1人であり、当時は「竜太先生、ちょっと素敵よね」という視聴者も多かったのだろう。だが、姉妹で取り合うほどの魅力がどこにあるのか、今観るとまったくピンとこないのだ。

『ひらり』の脚本を書いたのは内館牧子。思えば、好角家で、大手メーカーのOL経験があった内館の特色を活かした作品ともいえる。さらに内館といえば、ドラマ『想い出にかわるまで』(90年)や『週末婚』(99年)でも、同じ男性を好きになって争う姉妹を描いていた。まさに、内館の得意技が詰まった朝ドラなのだが、肝心の相撲の話が全く深まっていかない。

オープニングとエンディング、2度流れる主題歌にモヤモヤ


『ひらり』といえば、DREAMS COME TRUEが歌う主題歌「晴れたらいいね」を思い出した人も多いのでは。それまで朝ドラの主題歌といえば、インストゥルメンタルが基本。歌詞付き、しかも当時大人気だったドリカムを起用したことで話題となり、「晴れたらいいね」は大ヒットした。

だがここでも、晴れるどころかまたもモヤモヤ。主題歌を何度も聴かせたいのか、本編の尺が足りないのか、オープニングだけでなくエンディングにまで「晴れたらいいね」を流すことが多い。

ここ近年の朝ドラで、エンディングにまで主題歌を流すことはほぼない。現在放送中の『らんまん』や、2021年の『カムカムエヴリバディ』など、ここ最近の朝ドラはすごい。放送時間の15分からオープニングの主題歌を引いた時間の中で、「ここまで描けるんだ」ということを教えてくれる。そんな数々の優れた朝ドラを観てきた2023年の私からすると、この主題歌2度流しはずるい気さえする。

これら4つのモヤモヤ、ある意味、90年代という時代を捉えていたドラマゆえなのかもしれない。1992年なんてついこの間という気がしていたのだが、30年以上も経っているんですもんね。

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2023.08.26
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カタリベ
1967年生まれ
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