3月21日

ライバルは歌謡曲!伝説のハードロックバンド【ACTION!】がエモすぎて電撃ショック!

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80s関西メタルシーン発、ACTION!メジャーデビューから40年の節目


1980年代前半に勃発したジャパニーズメタル・ムーブメントのアニバーサリーイヤーが到来中だ。とりわけ当時、破竹の勢いを見せつけた関西のメタルシーンから登場したバンドたちがメジャーデビュー40周年を迎え、スペシャルな企画が次々に行われている。

昨年は1983年デビュー組のX-RAYが40周年記念ツアーを行なったのをはじめ、関西メタルシーンの原点といえる今は無きライヴハウス “バハマ” の生誕60周年を祝うフェスも行われ、アースシェイカー、44マグナム、マリノらが共演したのは記憶に新しい。

そして、1984年メジャーデビュー組から今年40周年を迎えたのが、高橋ヨシロウ率いるACTION!だ。彼らはつい先日の3月31日に「40th Anniversary PART.1 [ACTION TYPE-00 SAN SUI KAN MODE]」と銘打ったライブを目黒鹿鳴館で開催。高橋、秋田鋭次郎(Dr)に加え、山水館オリジナルメンバーの渡辺邦孝(Key)、そして原田喧太(G)によるパフォーマンスで、ACTION!の歴史を総括し未来をも見据えた渾身のステージを披露。揺るがない存在感を見せつけた。

さらに、音源企画としては『ACTION!40th Anniversary BEST〜時を超えて〜』をリリース。初期5作品のリマスター音源のデジタル配信も開始した。40周年という重要な節目を迎えた今、ACTION!の歴史を振り返りながら、その魅力を改めて考察してみたい。

関西のロックシーンで名を馳せるメンバーが集結したACTION!


ACTION!誕生へと繋がる歴史は、高橋が70年代に在籍した関西の伝説的ハードロックバンドの “山水館” と、そこから派生したプログレッシブバンド “ノヴェラ” に遡る。1982年にノヴェラを脱退した高橋は、ノヴェラの秋田鋭次郎(Dr)と共に、山水館とノヴェラでの盟友の山根基嗣(G)と、同年ACTION!を結成。高橋はノヴェラでベース担当だったが、新たに大谷ケイイチをベーシストに迎え、自身はボーカル&ギター担当へとパートチェンジし4人編成が固まった。

すでに関西のロックシーンで名を馳せるメンバーが集結した新バンドであり、結成当初からACTION!は注目を集めていく。結果として洋楽雑誌でお馴染みのシンコーミュージックがマネジメントを担当し、フィリップス・レコードと契約に。ところが、メジャーデビューを前に秋田が体調不良で離脱を余儀なくされ、新ドラマーとして “ピアス” の本宮日登士が加入。

デビュー直前の1984年3月には、RAINBOW来日公演のオープニングアクトを務め、武道館等で洋楽のHM/HRファンにもアピール。同月21日に「Action!100,000 VOLT」「American KIss」を収録した4曲入りEP『ACTION!KIT1』でメジャーデビューを果たした。



この作品のパッケージが、銀色の袋に封印された度肝を抜く形態で、当時レコード店の店頭で文字通りギンギラギンに輝いていたのを記憶している。パッケージの中には、メタリック・ステッカー、アメリカンコミックス、隊員証、カラーポスターマガジン、カラー下敷き等、7大特典と銘打った封入物が詰め込まれていた。硬派なHM/HRファンが眉をひそめるのを尻目に、ユニークな仕掛けでたちまち大きな話題を呼んだ。

わずか2カ月後の5月には1作目のフルアルバム『HOT ROX』をリリース。直後には大阪城野音でのジャパメタフェス「グランドメタル」に出演。6月には日本青年館でのデビューソロライブを大盛況裏に成功させ、ジャパメタシーンのセンターへと一気に躍り出た。

10月にはバットマンのテーマをモチーフにしたシングル「電撃ショック・ナイト」、11月には再び盛り沢山の特典を封入した遊び心満載の5曲入りEP『ACTION!KIT2』をリリース。他にも、少女マンガを原作とする企画アルバム『わずか!小説のラララ』に楽曲提供を行うなど、ユニークな試みを次々に繰り出した。



振り幅の大きなプロモーションでファン層を拡大


ライヴ活動では10月にLAメタルの代表格W.A.S.P来日公演のオープニングアクトを務める一方で、11月にはNHKの音楽番組『レッツゴーヤング』にアイドルたちと混ざって出演。ロックバンドらしからぬ振り幅の大きなプロモーションを積極的に展開し、ファン層拡大を目論んだ。

1985年5月にはヘヴィメタル指向を強めた2作目『HEART RAISER』をリリースしたが、高橋自身は外部アーティストに楽曲提供するなど、メロディメーカーとしての才能を広く発揮し始めた。

順風満帆に見えたACTION!だったが、デビュー以来、苦楽を共にした山根が脱退。新ギタリストに関東メタルシーンのプローラーで活動した広川大輔を迎え、1986年3月に4作目『WARNING IN THE NIGHT』をリリース。「Action!100,000 VOLT」を「100,000 VOLT」としてヘヴィで硬派なセルフカバーをしたように、ロック純度を高めた作品に仕上がった。



この頃になると、ACTION!を生み出したジャパメタブームも落ち着きをみせ、関西メタルシーンから飛び出したバンドたちも転機を迎え始める。ACTION!も例外でなく、この時期にレコード会社とマネジメントを移籍。最も長いスパンを経た1987年9月に5作目『MOVIN' AND ROCKIN'』をリリース。ロングレザーコートに身を包んだメンバーの姿は新鮮なイメージを与え、ハードなロックンロールを主軸に置くサウンドを展開した。アン・ルイスに提供した「Honey Dripper」のセルフカバーも収録された。

さらに半年後の1988年4月には前作に近いテイストを踏襲した6作目『OVERLOAD』、同年11月には7作目『INTERACTION』を立て続けにリリース。ジャケットに写るメンバーは従来のイメージを覆すスーツ姿で、サウンド面でもポップなテイストが戻り、ドラマのタイアップもついたキャッチーなシングル「夢みる頃すぎて」が収録された。

1989年9月には8作目『動』をリリース。ハードロックバンドらしからぬカラフルなアートワークから感じ取れるようにロック色が後退。ポップサイドの集大成と言える作風で、80年代最後に相応しい良質な作品となった。

遂にデビュー40周年の時を迎えたACTION!


ところが90年代、ジャパメタは冬の時代に突入し、メンバーを西田竜一(Dr)、さらに笹井りゅうじ(B)に交代しながらライヴ活動を継続するも、10周年のベスト盤やACTION!として2曲収録した『NOVELA伝説』等の企画盤を除き音源制作は途絶え、1998年に活動を停止してしまう。

それでも新世紀を迎え、時代が再び廻るように80sジャパメタ勢にも復活の兆しが芽生え、2004年に行われた「HARD ROCK SUMMIT」フェスにACTION!として出演。復活を告げるライヴとなった。

2005年5月には高橋、大谷に加え、TAKECHIYO(G)、CHAKI(Dr)のメンツで16年ぶりの復活作『GUILTY ROSE』、さらに2007年11月には秋田が復帰してのアルバム『Mystic Blue』をリリース。ハードとポップが絶妙に入り混じったACTION!らしさ全開の作品を作り上げた。

2014年には復刻特典まで封入した貴重な限定BOX『ACTION!30th Anniversary ACTION!KIT-2014』をリリース。その後、山水館やノヴェラとしての活動もACTION!に絡めながら、数々のライヴ企画を精力的に敢行し、遂にデビュー40周年の時を迎えたのだ。



ジャパメタシーンの異端児!規格外のバンドキャラと普遍なるポップセンスの極み


40年に及ぶACTION!の歴史を振り返り改めて感じるのは、数多のジャパメタバンドとは一線を画す “異端児" としての存在感の大きさだ。

ACTION!がなし得た大きな事象のひとつとして、バンド自体の “ブランディング” に成功した点が挙げられるだろう。例えば『HOT ROX』のジャケットは象徴的だが、SFコミック風のイラストで描かれたメンバーたちは、それぞれ架空の人物のごとくキャラ立ちしていて、当時高校生だった僕はワクワクさせられた。

電光でビカビカと光らせた特徴的なロゴマーク、珍しかったオリジナルの変形ギター、レザー&スタッズにアメコミのテイストを付加したオリジナルコスチューム、ケバケバしいメイクとヘアスタイルなど、個性を彩る様々なモノが組み合わさって、ACTION!のバンドキャラを巧妙に特徴づけていった。それは『ACTION!KIT』のようなパッケージに見事に落とし込まれていた。

アイデアのヒントがKISSにあるのは明らかで、それを日本人的な感性と独自の手法にアレンジして大真面目にやりきったACTION!のセンス
は素直に評価されるべきだろう。群雄割拠のジャパメタブームにおいて唯一無二のバンドイメージを確立し、ACTION!という存在が、ひとつの音楽ジャンルのごとく機能していたのは間違いない。

ちなみに、高橋がかつて在籍したノヴェラは、その耽美なイメージとメイクからヴィジュアル系の真の始祖とも目されるが、その遺伝子を紡ぐ高橋とACTION!のメイクやコスチュームも、後進のバンドに少なからぬ影響を与えているはずだ。『WARNING IN THE NIGHT』のジャケットでのイメージも、ヴィジュアル系に直結して見える。

こうした強烈なバンドイメージが先行しながらも、単なるキワモノ扱いされなかったのは、ACTION!の奏でる音楽に、万人を魅了するキャッチーで普遍的なメロディと非凡なるポップセンスが宿っていたからに他ならない。

ACTION!のライバルは歌謡曲




結成当初から高橋は、ACTION!の音楽性を “ヘヴィメタル” や “ハードロック” ではなく “ハードポップ" と積極的に名乗っていたのが象徴的だろう。サウンド面だけでなく、歌詞の面でも誰もが口ずさめる日本語に重きを置いたのも特徴的だ。

“ハードサイド” を代表するのは勿論、代表曲の「Action!100,000 VOLT」。アップテンポで刺激的なハードロックチューンであっても、誰もが口ずさめる覚えやすいメロディに埋め尽くされている。「ACTION!」の元気なサビのフレーズに合わせて、キメの振り付けまで用意されたのは前代未聞だった。僕も何度聴いたかわからないけど、今でも思わず口ずさんでしまうジャパメタを凌駕した真の名曲だと言える。

一方、 “ポップサイド" を代表するのは、これもまた珠玉の名曲の「American Kiss」。胸にキュンとくる甘酸っぱいメロディと曲調には、80sのキラキラとした記憶がいやが応にも甦ってくる。ハードでありながらもポップ、その手法は違えど、聴きようによっては例えばアルフィー辺りを想起させるほどに歌謡曲ライクだ。キッカケがひとつあれば、当時ジャンルの垣根を越えて大ヒットしたに違いないと今でも思えてならない。

プロモーションにしても音楽専門誌ではなく、TVの歌番組を目指したのは、ジャパメタバンドでは異色過ぎるだろう。もし当時、紅白歌合戦からACTION!にオファーがきたら喜んで出演したに違いない。

ACTION!のライバルは洋楽のヘヴィメタルやジャパメタではなく、ズバリ “歌謡曲” だった。こうした戦略が成り立つのは高橋が優れたメロディメーカーとして、ハードでポップな優れた楽曲を一貫して生み出し続けたからこそだ。

ケバケバしいルックスのハードロックバンドなのに、子供でも怖くない親しみやすさと大衆性を醸し出した稀有な存在。規格外のアイデアによるバンドイメージの確立とメロディメーカーとして群を抜くポップセンス。だからこそ40年たった今でも、80年代当時のACTION!は、僕らの記憶の中で鮮明に残っているのだろう。

高橋ヨシロウ自らがコンパイル!ACTION!の核心に迫る究極のオールタイムベスト




最後に、リリースされたばかりの限定盤『ACTION!40th Anniversary BEST〜時を超えて〜』についても触れておきたい。アニバーサリーごとに様々な企画盤を送り出してきたACTION!だが、今回の企画の目玉は、何と言っても高橋自らが選曲を行った点だ。

CD2枚組で “ハードサイド” と “ポップサイド” に分かれており、それぞれ最新リマスター音源で17曲ずつ、レーベルの垣根を超えてセレクトしている。まさに “ハードポップ” を標榜し続けたACTION!の二面性を、高橋自らの手で紐解いた非常に興味深い内容と言えよう。定番曲はもちろん、再始動後の作品も含めて幅広くセレクトされており、ACTION!未体験者はもちろん、熱心なファンであれば自らのセレクトと答え合わせしながら聴くのも楽しいはずだ。

さらに、付属DVDには80年代当時にVHSで発売されたMV集「ACTION!Vol.1」と、1984年大阪厚生年金会館でのライヴ映像「ACTION!Vol.2」がレストア収録されたのも嬉しい限り。ブックレットには高橋の最新インタビューが掲載されており、ACTION!結成に至った意外な経緯など、ここでしか読めない必見のエピソードが語られている。音源と合わせて彼らの歴史により深く迫れるはずだ。

この究極のベスト盤が、かつてのファンが懐かしむアイテムに留まらず、ACTION!という稀有な存在を新たに知らしめるきっかけになるのを願ってやまない。

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2024.04.10
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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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