1995年 7月28日

hitomi「GO TO THE TOP」みんなと同じ方向を向けない女の子を励ました90年代の名曲

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安室奈美恵よりも1年早く、小室哲哉プロデュースでデビューしたhitomi


hitomiの歌は青空にとてもよく映える。彼女の、独特の湿気を持つ甘い声は、強い孤独感とふてぶてしさを感じるのだが、これが、スコーンと雲一つない晴れた空にぴったりなのだ。

私が彼女に興味を持ったのは、1997年に発売された9枚目のシングル「problem」。そこから後追いする形で、それ以前のシングルも聴いていったのだが、デビューが意外に早く1994年! 小室哲哉プロデュースで、安室奈美恵よりも1年早くデビューしていたことに驚いたものだ。この「GO TO THE TOP」は4枚目のシングルだが、私のなかの “青空が似合う” というhitomiのイメージは、この曲以降だ。

hitomiの名を世に知らしめたのは、「GO TO THE TOP」の前作「CANDY GIRL」。 オリコンランキングは最高15位。ベストテンには入っていないが、セカンドシングル「WE ARE "LONELY GIRL"」の最高61位から驚異的にアップし、売上枚数は39.2万枚。これはhitomiの全シングルの中で最高である。

「CANDY GIRL」には、「♪私の元気にかなうやつなんていないわ」など、強気でポジティブな言葉が、10代の彼女らしい、いわゆる “等身大" の表現でポンポンと出てくる。MVも、ミニスカートを履き、四角の箱の中で様々なポーズを取る彼女は最高にスタイリッシュで挑発的だ。それに比べて「GO TO THE TOP」の世界観は、オシャレさはグッと激減する。そのせいか、売上枚数18.1万枚と半分程度落ちてしまった。

自問自答にまみれているhitomiが書いた歌詞




この「GO TO THE TOP」がリリースされた1995年は、安室奈美恵が「Body Feels EXIT」「Chase the Chance」、華原朋美「I BELEVE」がリリースされていた頃。小室哲哉が曲だけでなく作詞も手掛けたこれらの楽曲には、歌の主人公(少女たち)にとって大切な “あなた” もしくは夢やエネルギーという、信じるべき決定的なものが描かれている。

それは小室哲哉自身を投影したものだったのかもしれないが、バブルが崩壊し混沌とした世の中において、本来守ってくれるはずだった大人という存在に不信感や諦めを持っていたギャルたちが、何より憧れ求めていたものだっただろう。

hitomiが書いた「GO TO THE TOP」には、そんな頼もしい “あなた” もいないし “信じるもの” もない。歌の主人公が確実にわかっているのは ”なくしちゃいけないもの” のみ。10代の彼女の持つ弱さと自問自答にまみれているのだ。「♪いいことばかりじゃ辛いだけサ」など、心細さ、もどかしさなどがてんこもり。自分のダメなところも丸ごと受け止めて、どんどん自分を追い詰めていく。しかし、そうして丸ごと咀嚼したあと、選択肢を “前進” たった一つに絞って進んでいく明るさに、すごく励まされるのである。

「GO TO THE TOP」に青空が似合う理由





俊足で目指す道を駆け抜けるのではなく、裸足でザリザリと道なき道を選び、しかも出された助けの手にも “助けてもらったら、二度とひとりで歩けなくなるから” と断ってしまって仁王立ち――。なんとも不器用ながら、それでもグッと足を踏みしめて、広い大地を歩いていく、そんな女の子が見えてくる。

hitomiの攻撃的でたくましくて、その生意気にすら映る凛とした視線の先にあるのは、”頼れる誰か” でも “温かな居場所” でもなく、自分の心に向かっている。

 寂しいのは人一倍ダメで

彼女の歌の芯にあるのは、この歌詞のとおり、人一倍彼女が苦手な ”寂しさ” との対峙だったのかも? とも思う。そしてそのむき出しの孤独感から出る不思議な明るさは、みんなと同じ方向を向けない女の子たちを励ましたのではないだろうか。

“コギャル" という言葉が流行り始め、少女たちがすさまじい勢いで生き急いでいた1995年。そのなかで消費されないよう、自分だけの “一番先” へ向かって進む。そんな「GO TO THE TOP」の聴き心地は、自由で、とってもひとりぽっちで伸びやかだ。この曲が、青空にとっても似合うのは、きっとそのせいだろう。

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2024.01.26
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カタリベ
1969年生まれ
田中稲
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