ひとクセもふたクセもあるミュージシャンに愛される存在 ちわきまゆみって、なぜか目を惹く存在だ。彼女を最初に観たのが、大学入学で上京して間もない頃だから1986年。深夜にテレビをつけたら、ボンデージ風の衣裳を着たイカしたお姉ちゃんが、バックに男どもを従えて歌っていた。格好だけ見るとSMの女王様風なんだけど、どこかコケティッシュで、エロさと可愛さとロケンロールが同居している感じ。なんなんだ、このヒト?
今だったらスマホですぐ検索するんだろうが、40年前にそんなモノはなかった。ただ、“ちわきまゆみ” という名前はすぐに覚えた。当時、雑誌『宝島』の読者投稿コーナー「VOW」に “変読” という企画があった。小田和正に “おでんおしょう” と勝手にふりがなをつけるアレだ。傑作がいくつもあったけれど、ちわきまゆみに “ちあきなおみ” とふりがなを振った作品には爆笑した。100%、初見で空目するよね。
そんなわけで、楽曲より先にまず “ガワ” から私の目を惹いたちわきまゆみ。年が明けて1987年、当時出たばかりのアルバム『アタック・トリートメント』を聴いてみた。シングルカットされた「オーロラ・ガール」はニューウェーブ系の香りも残しつつ、ポップでキュート。そしてしっかり “ロック” しているところが痛快だった。しかも私の大好物のグラムロックの香りがする。
セカンドアルバム『アタック・トリートメント』収録曲の作詞・作曲クレジットには、ヒカシューの巻上公一や泉水敏郎、ジューシィ・フルーツの沖山優司といった面々に混じって、PINKの岡野ハジメやホッピー神山の名前も見える。岡野はこのアルバムのプロデュースも担当。ルースターズの下山淳は作曲だけでなくギターもかき鳴らし、アルバムのラストを飾る「遊星少女フィオラ」は、作詞がファントムギフトのピンキー青木、作曲はTHE WILLARDのJUNだ。この1枚にひとクセもふたクセもある実力者たちが勢ぞろい。ちわきがこの界隈のロックミュージシャンたちに愛されていたのがよくわかる。
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ちわきまゆみの原動力は “ミーハー魂” また、ラジオパーソナリティでもあるちわきは当時『オールナイトニッポン』の2部(1986年10月〜1987年9月)も担当。ロック愛に溢れた選曲を聴いていて思ったのは、このヒトってロック好きが昂じて “私もやっちゃる!” と思い立ちアーティストになったんだなと。ただ、今の時代と違って、その頃は女性がピンでロックを演っていくにはまだまだハードルが高かった。そのハードルを、好き好き好き好き好き!の一点突破で強引に飛び越えて行くパワー。それもまたロックだ。
その原動力は何かというと、ちわき自身が公言しているように “ミーハー魂” である。幼い頃、ザ・タイガースに萌えたというのが原点で、ちわきは1963年生まれだから、GS全盛の1968年はまだ5歳!どんだけ早熟やねん。そこからモンキーズ → ビートルズに行って、T・レックスである。すごいのは、10歳のときに来日したT・レックスが泊まるホテルに行って出待ちをし、マーク・ボランに頭をナデナデしてもらったというエピソード。
少女時代のちわきにT・レックスを教えたのは、グラビア充実の音楽雑誌『MUSIC LIFE』(シンコー・ミュージック刊)である。私は以前『MUSIC LIFE』の元編集長、星加ルミ子・東郷かおる子両氏にお話を伺ったことがある。星加さんは日本で初めてザ・ビートルズの単独インタビューに成功。来日の際も厳重警戒態勢にあった宿泊先のヒルトンホテルに入れてもらえた数少ない1人で、東郷さんは英米での人気が今一つだったクイーンをいち早く取り上げ、日本発の世界的ブレイクに大きく貢献した方だ。
お2人に共通しているのは “ミーハー上等!” の精神。小難しい理屈をこねくり回している音楽評論家たちより、本能から来る衝動でビビッと来たものに飛びつくミーハーなファンのほうが、そのアーティストの本質をより理解しているんだと。だからこそお2人は大物アーティストたちの心を動かし、通常ではあり得ない単独インタビューを何度も許してもらえたのである。
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暴動クラブのシングルにゲスト参加 幼い頃から『MUSIC LIFE』の愛読者だったちわきもまた、その “ミーハー精神” を公言して憚らない人だ。だから本能で “好き” と思ったアーティストはとことん好きになる。KISSの来日公演には必ず駆けつけ、エアロスミスやチープ・トリックも大好き。RCサクセションの熱烈なファンでもあり、忌野清志郎にも可愛がられた。そんなちわきの周りには自然と “ロックの輪” ができる。それが今もまったく変わらないんだからすごい。
かつて『オールナイトニッポン』で、世間では無名のインディーズバンドを取り上げていたちわきは、現在も自身のラジオ番組で “これはイイ!” と思った若いバンドを積極的に紹介している。その1つが、先日メジャーデビューも果たした “暴動クラブ” だ。歪んだ音、確かな演奏力、ほとばしるロック愛… ちわきが一発で好きになったのはめっちゃわかる。
ちわきはゲストボーカルにやたらと呼ばれる人でもあるが、その暴動クラブがロックの名曲をカバーしたEP『VOODOO SEE, VOODOO DO』にもゲスト参加。RCサクセションの「つ・き・あ・い・た・い」を、同じくゲストの泉谷しげると一緒に熱唱して話題になった。そう、ブレないロック愛は、世代の差も軽々と飛び越える。
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デビュー40周年を記念して全カタログがデジタル配信 そんなちわきが、2025年10月19日にソロデビューから40周年を迎える。これを記念して、東芝EMI時代に発表した全カタログが10月15日にデジタル配信された。前述したアルバム『アタック・トリートメント』を久々に聴いてみると、ずいぶん尖ったことをやってたんだなぁと、その先鋭的なサウンドにも改めて驚いた。
ぜひ聴いてほしいのは、シングルにもなった「シネマキネビュラ」(アルバムバージョンはシングルと別ミックス)。作詞が元FILMの外間隆史、作曲が岡野ハジメ。まるで呪文みたいな不思議なタイトルは「シネマ+マシン+ネビュラ(星雲)」の造語である。下山淳のギターが超絶カッチョいいこの曲、そこに乗っかる若きちわきのフワフワっとした歌声がキュートでイイのよ。その後、ライブを重ねるうちに歌い方も変わっていったけれど、繊細でありつつも芯は極太、そんなこの頃の歌いっぷりもまた愛おしく感じたりして。
で、ちわき姐さん、ソロデビュー日の10月19日に40周年を記念したアニバーサリー・ライブを行うとのこと。バックバンドにはDer Zibetの吉田光(G)や藤原マヒト(Key)が参加。会場はちわきが長年DJイベントを開催している南青山のRED SHOES。ご本人によるとソロライブは “おそらく30年以上ぶり” とのことで、ロックを愛する面々が世代を超えて集う楽しい宴になりそうだ。
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2025.10.15