リレー連載:2000年代ドラマ主題歌特集▶ 粉雪 / レミオロメン
▶ 1リットルの涙
▶ 主演:沢尻エリカ
▶ 放送期間:2005年10月11日〜12月20日
▶ 放送局:フジテレビ系
沢尻エリカ初主演! 今なお語り継がれる名ドラマ
「それでも1億人から君を見つけたよ」
2005年に放送されたフジテレビ系ドラマ『1リットルの涙』を思い出すと、自然と挿入歌「粉雪」のこのフレーズが思い浮かぶ――。
15歳で原因不明の難病・脊髄小脳変性症を発病し、25歳で亡くなった木藤亜也さんの実話をもとに作られた物語。これを当時19歳、“エリカ様" と呼ばれる以前の沢尻エリカが、連続ドラマ初主演ながら、とても瑞々しく、体当たりで演じていた。
バスケが大好きでやさしい人気者の亜也が、病気によって、できることがどんどん減っていく。そんな中でも、誰かの役に立ちたいといっぱい泣きながら必死に生きる。そばにいる家族も、恋人の遥斗(錦戸亮)も、いっぱい泣きながら励まし、支えるのだ。その様子が毎回繊細に描かれていて、もうたまらなかった。 “神様は乗り越えられる試練しか与えない” という言葉が大嫌いな私であるが、このドラマを観て思ったものだ。やっぱり、そんなのは嫌だと。
沢尻エリカの好演は言わずもがなだが、父親役の陣内孝則、母親役の薬師丸ひろ子の包容力、成海璃子の生意気だが愛情深い、ツンデレ妹ぶり。そして多くを語らないが “乗れよ” と自転車の後ろの席や背中を貸し、彼女を見守り続ける遥斗役の錦戸亮の静かな優しさ。全員が、演じるというより、その世界に生き、亜也を支えていたようにまで思えたドラマだった。
聴くたびに涙腺を刺激する「粉雪」
物語をさらに盛り上げたのが、ストーリーに登場する合唱課題曲「3月9日」と挿入歌「粉雪」。これを担当したのがレミオロメンである。特に、亜也と遥斗のシーンで流れる挿入歌「粉雪」は、すべて2人の悲痛な願いや叫びと重なり、聴くたびに涙腺を刺激するのだ。冒頭にも記した “それでも1億人から君を見つけたよ” という、2人の運命的な出会いを思わせるようなフレーズ。「♪こなーゆきー(粉雪)…… ねえ」という叫びのような強烈なサビ、そして「♪永遠を前に あまりに脆く」という、避けられない終わりを感じる言葉―― 。
『1リットルの涙』ドラマプロデューサーだった関谷正征氏によると、レミオロメンの藤巻亮太に3話分の台本を見せ、“錦戸君と沢尻さんの2人のシーンで流れるバラード” “台詞にはない錦戸くんの役の麻生遥斗の心情を、歌詞で背中を押してくれるような曲” とだけ伝えたそうだ。
そうして届いたデモテープには、急いで書いたような乱れた字で「粉雪」と書かれていたという。当時、藤巻亮太自身もデビュー2年目で、いい波を感じながら、同時に何かを見失っていく怖さも感じていた時期。それが「粉雪」の歌詞を生み出す源泉の1つになったと語っていた。
「あんなに柔らかくて、はかないものを描いた歌詞なのに、何であんな力強く歌うのか… アンバランスなことを面白がってくれる評論家の方もいらっしゃって。僕も当時はあんまり分からなかったけれど、確かにあれは『叫び』なんですよね。自分の中に何か言葉にならないSOSが…、黄色信号が灯っていたりすることに対する。それが何かこう、エモーショナルなものが吹き出した曲だったのだと思います。」
(日経ビジネス 2017年7月31日 歌を作る者として、境界線を消す者として)
「粉雪」は改めて聴いてみると5分越えの大作。こんなに長いイメージがなかったので、ちょっと驚いた。しかも、「♪粉雪 ねえ 心まで白く染められたなら」「♪二人の孤独を」という部分以外、違う歌詞でつづられている。歌というより、遥斗から亜也への手紙みたいだ。
累計売上85万枚の大ヒット
雪というのは、純粋な白と、溶けてなくなるという特性が、別れや喪失感、生命と死を想像させる。それがしんしんと積もっていく様は、想い出や人生と重なる。幸せな日常は、決して当たり前に残るものではなく、粉雪のように消えていく。けれど、だからこそ、心には永遠に降り積もる。ドラマをきっかけに「粉雪」は多くの人の心に届き、 累計売上85万枚の大ヒットとなり、オリコンチャート最高位は2位。惜しくも1位には届かなかったが、今なお多くの人に愛される、冬のレジェンド曲となっている。
そして2027年、22年の時を超え『1リットルの涙』が映画になる。主人公は、亜也の死後、彼女が入院していた附属病院で神経内科医となった遥斗だ。粉雪―― 亜也と過ごした日々が残した希望を、この目で確かめたい。
2026.06.15