2025年7月に閉館を迎える、東映最後の直営館・丸の内TOEIにて『スケバン刑事フェスティバル in さよなら 丸の内TOEI』が6月7日に開催された。そこでは『スケバン刑事』TVシリーズ(4エピソード)と劇場版2作の上映に加え、歴代の麻宮サキを演じた斉藤由貴、南野陽子、浅香唯の舞台挨拶が注目を集めた。同イベントはすでに多くの媒体で報じられているが、当記事では、3人の発言を交えながら、速報系メディアが拾わなかった細部に焦点を絞りたい。
全員がデビュー40周年。3人の麻宮サキの関係
1985年に歌手デビューした3人は、超合金ヨーヨーをバトンのようにつないだ関係だが、当時は親しい仲ではなかった。だが、40年を経て顔を揃えると、自然に言葉が交わされたという。
斉藤由貴(以下:斉藤):お互いにいい歳になって、今はフランクに話せるようになった。年をとるって、意外といいことだなと、さっきも2人の顔を見ながらすごく思いました。

南野陽子(以下:南野):40年経ってこんな素敵な時間を持てるとは思っていなかったので、とても嬉しいです。
浅香唯(以下:浅香):こうして同じ壇上に並ばせていただく日が来るというのは、本当に光栄で嬉しいです。今日この日を楽しみにされていた方が大勢いらっしゃると聞きしましたが、私もそのひとりです。
年齢は斉藤由貴が南野陽子の1歳上、浅香唯は南野陽子の2歳下である。斉藤由貴は初代の麻宮サキかつ最年長であり、1985年2月に発売されたデビュー曲「卒業」をヒットさせたこともあり、同年6月にデビューした南野陽子と浅香唯にとって眩しい存在だったはずだ。そして、浅香唯が『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』に主演が決まったとき、すでに南野陽子は人気アイドルだった。
浅香:後を追いかけてきた者として、なかなか同じ気持ちにはなれないくらいです。デビューは同じ年ですが、大先輩という感じがしてならないです。
これには南野陽子も同意した。
南野:わかる。私も由貴ちゃん、大だーい先輩という感じがしていたから。
斉藤由貴と南野陽子は互いをちゃん付けで呼んでいたが、浅香唯は “由貴さん” “陽子さん" と呼び、一歩引いた “後輩” の口調だった。その距離感こそが、三代目にとって自然なのだろう。
斉藤由貴=ボケ、南野陽子=ツッコミという構図
1980年代、斉藤由貴と南野陽子はともにラジオ番組を持っていたが、語り口は対照的だった。斉藤はゆっくりと言葉を選び、ナチュラルにボケる。南野は早口で、テンポのいいツッコミのスタイルだ。そして、40年目に両者が絡むことで、絶妙なやりとりが展開された。
南野陽子が、映画『スケバン刑事』のときに自分で決めポーズを考えるように言われ、大変に苦労した話をひと通りすると、斉藤由貴が驚きながら、周回遅れで言った。
斉藤:ポーズを自分で考えたの?
南野:今、その話をしたんです!

その後、TVシリーズの2作目『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』が原作からは大きく離れたという話題になり――
斉藤:せっかくパート2をやるんだったら、なんか違うことしないといけないって、企画会議の段階ですごく皆さん頭を捻られたと思うんです。それでこの企画が通っちゃうってところがすごいですね。
南野:東映だもん。通っちゃう。
南野陽子 の完璧な決め台詞
南野陽子は3人の中でも特に、後年のバラエティ番組などで、『スケバン刑事』の話題を振られる機会が多かった印象がある。イベントの中盤、ヨーヨーを持って決め台詞を言うコーナーがあった。他の2名が戸惑い気味だったが、南野陽子は、利き腕の左手でヨーヨー、右手でマイクを持ち “おまんら、許さんぜよ!” とばっちり決めた。完璧だった。
ヨーヨーの話が盛り上がる。しかし、斉藤由貴はぼんやりとしか覚えていない。それが斉藤由貴らしい。一方、南野陽子は細かく覚えている。
斉藤:なんでそんなに記憶力がいいんだろう?
南野:だって40年間、この話しかしてないから(笑)
三者三様のキャラクター
1980年代のトップアイドル3人は、今も三者三様である。斉藤由貴は変わらずマイペースな印象があるが、どこか儚げだったアイドル時代とは異なりステージ上では堂々としている。浅香唯は丁寧な言葉づかいで、常に謙虚な姿勢だった。話す内容もしっかり組み立てられていて、アイドル時代の印象とはかなり異なる。そうした意味で、もっともアイドル的だったのが南野陽子だ。序盤のコメント中、突然、劇場の2階席に向かって笑顔で手を振ってこう言った。
南野:あ、2階の人〜! ごめんなさい、やっと余裕が出てきて上が見られた。
退場の際、最後に残った南野陽子は客席に笑顔でヨーヨーを投げるポーズを見せた。これもまたアイドルらしいムーブだった。
浅香唯の真面目な性格を示すエピソードとは
特撮番組に出る俳優は、子どもたちの夢を壊さないように、日常の行動も律するという話をよく聞く。そして、浅香唯も同様のマインドの持ち主だった。

浅香:撮影の時も子供たちが集まってくるので、私は常にポケットにヨーヨーを忍ばせていたんです。もう、スーパーに行く時でさえ。常に持っていて、もし声をかけられたら、コンビニでもどこでも “じゃ〜ん” と子供たちにヨーヨーを出してあげられるようにしていました。
横で斉藤由貴は、“すごく、いい人ですね” と目を丸くしていた。
もうひとつ、浅香唯の真面目な性格を示すエピソードが披露された。
浅香:皆様が先にやられていたので、(オーディションに合格した時点でヨーヨーを)やることは分かっているわけですよ。ものすごく練習しました。 もう何回も映像を見させていただいて、何回も練習をして。ただひとつだけ、ヨーヨーって自分に戻ってくるじゃないですか。その避け方だけが分からなかった。
斉藤由貴、南野陽子、浅香唯が揃うのは、これが最後だろうか? これを最後にしていいのだろうか? 50代になった3人のスケバン刑事が力を合わせて戦う映画の企画が、“東映だもん。通っちゃう” とはならないものだろうか?
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ⓒ 東映
斉藤由貴!南野陽子!浅香唯!
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▶ 東映ビデオ公式サイトhttps://www.toei-video.co.jp/special/sukebandeka-tv/
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2025.06.10