平均年齢21歳!暴動クラブのメジャーデビューアルバム「暴動遊戯」 快進撃が続く暴動クラブのメジャーデビューアルバム『暴動遊戯』が10月8日、フォーライフミュージックエンタテイメントよりリリースされた。2024年には『ARABAKI ROCK FEST.24』『氣志團万博2024』などに出演。今年4月に恵比寿リキッドルームで行われたワンマン『暴動集会・第二回』では、フロアを埋め尽くしたオーディエンス、数多くの業界関係者を唸らせた。
平均年齢21歳。T-REXやニューヨーク・ドールズを起点とする、ワイルドでグラマラスな若きロックンロールの後継者というのが彼らのパブリックイメージだ。確かにそれは正解であり、そういったビジュアルはバンドの魅力のひとつであったりするわけだが、このアルバムで感じられる音楽性はそれだけではなかった。
レッド・ツェッペリンや1960年代後半からのローリング・ストーンズに感じたダイナミズムや、ニューウェイヴ・サウンドの浮遊感など、時代を超えた様々なギミック。さらには、レゲエやハードコアといった多彩な音楽ジャンルを飲み込み、奥行きの深いアルバムを作り上げた。はっきりとした輪郭を感じるクリアで抜けの良い音質も、メジャーフィールドで堂々と勝負できるクオリティだ。
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城戸 “ROSIE” ヒナコが綴る甘味なハードボイルド タイトルの『暴動遊戯』は、松田優作主演したプログラムピクチャーの傑作 “遊戯シリーズ” やブルース・リーの『死亡遊戯』を想起させる。これらの作品は娯楽アクションと称されていたが、そこには甘美なハードボイルド的なエッセンスが隠し味となっていた。このアルバム『暴動遊戯』でも、そういったエッセンスが垣間見られ、これが暴動クラブを唯一無二のオリジナリティを放つバンドの根源のひとつではないかと感じた。
それが強く表れていたのが、「抱きしめたい」だ。作詞・作曲は、ベーシストである城戸 “ROSIE” ヒナコ。ボブスタイルの髪型で、ステージでは、モコモコとしたひじょうに個性的なベースを弾く。1970年代、パブロックとパンクの橋渡し役を担った英国の名門レーベル、スティッフ・レコードの作品群にも通じる極めてオリジナリティの高い音を奏でる個性的なベーシストだ。ボーカリストとしてもステージでは南佳孝の「スローなブギにしてくれ」などを歌ったりするのだが、そんな彼女の個性が、本作ではソングライターとしても顕になっていると感じた。
哀愁を帯びたキャッチーなメロディと、情けなさの中に真っ直ぐな純情が見え隠れするリリックは、心の奥に何層ものイマジネーションが重なる。彼女がフェイバリットとして挙げている、ザ・ルースターズの「どうしようもない恋の唄」の返歌にも思えた。そして、「♪お前がよこした花束 今も枯れずに咲いている」というリリックからは、1970年代のプログラムピクチャーの甘味なハードボイルドの世界を想起してしまう。
彼女は他にも「FEEL SO GOOD?」「ダリア」「ハニー」と全4曲を提供。エモーショナルでありながら、どこか寂寥感を含ませた楽曲は、暴動クラブを極めて詩的なバンドへと昇華させている。バンドの基盤ともいえる直情的でプリミティブな音楽性に花を添える城戸の感性こそが暴動クラブの本質かもしれない。
懐古主義に陥らず、2025年現在のロックンロールの現在地を示した「暴動遊戯」 シークレットトラックを含む全13曲は、起伏に富みながら、絶妙な統一感を作り上げている。オープニングは現在のバンドの勢いを見事に体現した「ドライヴ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」。そして、遠藤ミチロウ率いるザ・スターリンの名曲「ロマンチスト」のリフを彷彿とさせる、初期衝動の塊のような「ラヴ・ジェネレーター」。それに相反するようなアコースティックの音色が空間的な広がりを見せ、ロックのダイナミズムを体現させた「ギミー・ショック」。
さらには、モータウン・ビート的な躍動感がリリックに生命を息吹く「ひまつぶし」、高速ハードコアの「LIFE FUCK」やレゲエフィーリング溢れる「FIRE」…。それぞれの楽曲のオリジナリティにはメンバー各々の多様な音楽的感性が溢れている。特にボーカル釘屋玄の私小説的な趣を感じるミディアムナンバー「生活」には、バンドの “今” が凝縮されているようだった。
若きロックンロールの継承者、暴動クラブは、弱冠21歳でこのような傑作アルバムを作り上げてしまった。それは、周囲に惑わされることなく自分たちの音楽的感性を信じ、突き詰め具現化していった証である。ここには若さから生まれる衝動だけではなく、音楽に対する深い愛情と思慮深さが内包されている。そして、懐古主義に陥らず、2025年現在のロックンロールの現在地を示すことに成功したのだ。
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2025.10.10