1996年 2月19日

【ミリオンヒッツ1996】JUDY AND MARY「そばかす」バンドの転機となった初の1位曲

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リレー連載【ミリオンヒッツ1996】vol.4
そばかす / JUDY AND MARY
▶ 発売:1996年2月19日
▶ 売上枚数:105.8万枚

ブレイク後に舞い込んできた新曲の依頼


JUDY AND MARY(以下:ジュディマリ)にとって、1996年はキャリアの転換点となる重要な1年だった。ジュディマリは “PRESENCE”、“JACKS'N'JOKER” といったバンドで活動していたベーシストの恩田快人がボーカルYUKIとの出会いから始めたバンドで、ロリータ・パンクともいうべき音楽性からスタート。1993年のメジャーデビューから徐々にシーンの中で存在感を高めていった。

そんな中で力をつけていったのがギターのTAKUYAだった。ポール・マッカートニーから影響を受けたカッチリしたポップセンスを持った恩田に対し、ロックスピリットなんぼのもんじゃい!といった感じの自由度を持ったTAKUYAの音楽センスは、1990年代という時代にフィットした。そして、TAKUYAが作曲した7枚目のシングル「Over Drive」が、初のオリコントップテン入りとなる4位を記録。ついにジュディマリはブレイクを果たした。

この「Over Drive」は1990年代を代表する名曲の1つとして、今でも強力な引力を放っている。続いて、恩田の書いた「ドキドキ」も8位に。そして、1995年12月にリリースするサードアルバム『MIRACLE DIVING』のレコーディングが終わりバンドが上昇気流に乗る中、そこに突然、新曲の依頼が舞い込んできたのだ。

「るろうに剣心 」オープニングテーマ曲になった「そばかす」


その新曲である「そばかす」は1996年2月19日発売。フジテレビ系アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のオープニングテーマとなり、ジュディマリに初の1位をもたらした。セールスは100万枚を超え、バンドでただひとつ、ミリオンセラーの曲となった。1990年代はタイアップ全盛の時代。タイアップなしにはヒットしないと言われていたほどで、何がなんでもタイアップを取ってくることは宣伝担当の命題でもあった。無茶なスケジュールの案件も当たり前のようにあった。

この「そばかす」は、なんと3日で新曲を仕上げて欲しいという要望だった。ツアーのスタートに合わせてスケジュールを組んでいた中、恩田とYUKIはなんとか2日で新曲を書き下ろし、3日目にレコーディングを完了させたという。アルバム未収録の「そばかす」が3ヶ月も経たないうちにリリースされたのはそういった理由によるものだ。



サウンドの主導権はTAKUYAが握っている?


制作に際して、メンバーにはアニメのタイアップであるということ以外、何も伝えられなかったようだ。こういったことは特段珍しくはないが、興味深いのは、この辺りからバンド内のパワーバランスが変わり始めていることだ。「そばかす」の作曲は恩田だが、サウンドの主導権はTAKUYAが握っているように聴こえる。例えばイントロにおけるぐしゃっと潰れたギターリフ、歌のバックでの自由奔放なプレイ。なぜこれがOKとなったのだろう。

これは筆者の想像でしかないが、制作時間が全くない中、ギターのアレンジもカッチリ決まらないままに、どうしようか?とデタラメに弾いていたものが、それおもしろいじゃん!と採用になったのだとしたら。ここがTAKUYAのタガが外れた瞬間だったとしたら、ちょっとドキドキする。

ちなみに、曲のエンディングは、自由奔放な全員の演奏が1点に収縮するような終わり方を迎える。これは、キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」(21st Century Schizoid Man)のエンディングと同じやり方だ。プロデューサーの佐久間正英は四人囃子というプログレバンドの出身なので、そういった妄想をしてみるのも楽しかったりする。

成功への道であると同時に、解散への始まりでもあった


そして、TAKUYAの想定外かつ自由奔放なギタープレイは後期ジュディマリの定番となり、バンドサウンド自体が、よりハードでプログレッシブなものに変わっていく。さらにソングライティングも覚醒。アルバムでは初のオリコン1位を獲得した次作の『POWER SAUCE』では、「BIRTHDAY SONG」「ラブリーベイベー」「クラシック」「くじら12号」と言った名曲群を生み出すのだ。

ただ、ここで大事なのは、TAKUYAのプレイは決して独りよがりなものではなく、ボーカルの裏メロをギターで表現したものであるということだ。いたずらっ子がちょっかいを出すように、メロディラインに絡みつくようにグシャグシャ弾き殴るプレイは、不思議とボーカルの邪魔をしていない。これは、TAKUYAがYUKIのボーカルに全幅の信頼を置いている証拠だ。

同時に、YUKIのボーカルスタイルにも変化が見られる。これまでのロリータ的な可愛らしさに加え、声の張りの中に力強さを匂わせるようになったのだ。特に子音に力を入れているところはこれまでと真逆で、明らかに喉の使い方を変えている。この傾向はバンドの後期になるほどに顕著になり、いつしかYUKIのスタイルに昇華していくのだが、その最初の1曲が「そばかす」だったことは偶然なのだろうか。

いずれにせよ、「そばかす」がジュディマリにとって、セールス面でもバンドの内面にとっても大きな転換点となる1曲だったことは間違いないだろう。それは、より大きな成功への道であると共に、解散への始まりでもあった。

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2026.03.17
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カタリベ
1971年生まれ
池上尚志
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