1998年 5月13日

the brilliant green 初の日本語詞「愛のある場所」は “ブリグリ” の音楽の中にある!

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the brilliant greenのシングル「There will be love there -愛のある場所-」発売日
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UKサウンドを見事に体現したブリグリ


the brilliant green「There will be love there -愛のある場所-」を初めて聴いたのは、TBS系ドラマ『ラブ・アゲイン』だった。主題歌として流れてきた瞬間、たちまち恋に落ちた。胸を苦しくさせるようなせつなさと、キャッチーなメロディーはあまりにも素晴らしかった。「90年代の曲で一番好きな曲は?」と聞かれれば、迷うことなくこの曲を挙げるだろう。

the brilliant green、通称ブリグリは、ボーカル・川瀬智子、ベース・奥田俊作、2010年に脱退したがギター・松井亮によるロックバンドだ。1995年のデビュー曲「Bye Bye Mr.Mug」、セカンドシングル「goodbye and good luck」と改めて聴き直したが、この2曲までは、全編英詩で作られている。

何の知識もなく聴いていれば、間違いなく洋楽と思っていただろうなと思う。UKサウンドに影響を受けたことがはっきりと分かる確かな音作りと独特な世界観にたちまち夢中になった。ブリットポップ、オルタナティヴ・ロック、ポスト・グランジなどの影響を感じさせ、日本のバンドでこれほどまでにUKロックを体現するバンドが出てきたことに衝撃を覚えた。そして同時に感動に心が震えた。

アンビバレントな川瀬智子の歌声




the brilliant greenの魅力といえば、オリジナリティーを持った世界観にある。独特な “暗さ” や “陰" が漂い、そこには常に儚さと憂いが存在する。そうしたサウンドに、アンニュイな表情を持った川瀬の歌声が乗ると、たちまちブリグリの仄暗い世界へと連れ去られる。川瀬の少女のような幼さと大人の艶っぽさを持った歌声は、一度聴いたら忘れられなくなるほど魅力的で狂おしい。

「There will be love there -愛のある場所-」で聴かせる歌声も、まるで浮遊するかのようで、気だるく、つかみ所がない。それでいて、強さを感じさせる歌声の気高さには、ただただ感動を覚える。川瀬の歌声は儚げに見えて、けっして弱くはないのだ。”幼さ” と “妖艶さ” 、”湿度” と “乾き” 、そして “つかみ所のなさ” と “芯の強さ” といった相反するものを同時に抱く、アンビバレントな表現力を持った稀有な歌声だと思う。

初の日本語歌詞への挑戦だった「愛のある場所」


「There will be love there -愛のある場所-」についていえば、彼らにとって初の日本語詞だったことの衝撃が大きい。先述した通り、前の2曲は英語の歌詞であり、洋楽への強いこだわりを感じさせる。この曲が日本語の歌詞となったのはドラマ主題歌ということでテレビ局からの要望が反映された形だったようだ。ちなみに、1998年にリリースされたファーストアルバム『the brilliant green』もほとんどの曲が英語詞であり、そんなところも実にブリグリらしいところだ。



「There will be love there -愛のある場所-」の歌詞は日本語ではあるものの、川瀬の歌い方は意識的なものなのかどうか分からないが、英語の発音に近づけているようにも感じられる。優れた音楽というものは日本語であろうと英語であろうと言語なんて関係なく、そこをたやすく超えられるものなのだとブリグリの音楽が私たちに教えてくれる。

そしてこの曲で最も印象的な部分が、出だしの部分だ。川瀬が息を吸い込み歌い始めると、同時にアコギの音色が鳴り始める。この部分が非常にこの曲に深みとリアリティを与えている。イントロが一切なく、無駄な部分がそぎ落とされ歌声とアコギだけで始まる、それは、まるで弾き語りのようであり、のちに静かに淡々とドラムが重なっていく構成はたまらなくクールだ。

陰があればそこには光が在る


ブリグリの世界は “陰” や “暗” が存在すると書いたが、暗闇があればそこには必ず光が在る。光なくしては影は生まれない。ブリグリの音楽も同じことがいえる。どんなに曲調が暗くても、歌詞がセンシティブであっても、一縷の光を感じさせる部分がどこかに必ず存在している。だからこそブリグリの世界は美しく、せつないのだ。

UKロックを追い求めるバンドは今でも後を絶たない。けれど、ブリグリがデビューを果たしたその日からどれだけの時間が流れても、ここまで明確に自分たちのルーツを楽曲で示し、しかもこれだけ形にできるバンドはけっして多くはない。ブリグリの紡ぐ楽曲からは、音楽へのリスペクトと深い愛を感じずにはいられない。だからこそも聴き手である私たちもまたブリグリの音楽を愛して止まないのだ。「愛のある場所」とは、ブリグリの音楽の中にある。

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2024.02.03
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