the brilliant green「There will be love there -愛のある場所-」を初めて聴いたのは、TBS系ドラマ『ラブ・アゲイン』だった。主題歌として流れてきた瞬間、たちまち恋に落ちた。胸を苦しくさせるようなせつなさと、キャッチーなメロディーはあまりにも素晴らしかった。「90年代の曲で一番好きな曲は?」と聞かれれば、迷うことなくこの曲を挙げるだろう。
the brilliant green、通称ブリグリは、ボーカル・川瀬智子、ベース・奥田俊作、2010年に脱退したがギター・松井亮によるロックバンドだ。1995年のデビュー曲「Bye Bye Mr.Mug」、セカンドシングル「goodbye and good luck」と改めて聴き直したが、この2曲までは、全編英詩で作られている。
the brilliant greenの魅力といえば、オリジナリティーを持った世界観にある。独特な “暗さ” や “陰" が漂い、そこには常に儚さと憂いが存在する。そうしたサウンドに、アンニュイな表情を持った川瀬の歌声が乗ると、たちまちブリグリの仄暗い世界へと連れ去られる。川瀬の少女のような幼さと大人の艶っぽさを持った歌声は、一度聴いたら忘れられなくなるほど魅力的で狂おしい。
「There will be love there -愛のある場所-」で聴かせる歌声も、まるで浮遊するかのようで、気だるく、つかみ所がない。それでいて、強さを感じさせる歌声の気高さには、ただただ感動を覚える。川瀬の歌声は儚げに見えて、けっして弱くはないのだ。”幼さ” と “妖艶さ” 、”湿度” と “乾き” 、そして “つかみ所のなさ” と “芯の強さ” といった相反するものを同時に抱く、アンビバレントな表現力を持った稀有な歌声だと思う。
初の日本語歌詞への挑戦だった「愛のある場所」
「There will be love there -愛のある場所-」についていえば、彼らにとって初の日本語詞だったことの衝撃が大きい。先述した通り、前の2曲は英語の歌詞であり、洋楽への強いこだわりを感じさせる。この曲が日本語の歌詞となったのはドラマ主題歌ということでテレビ局からの要望が反映された形だったようだ。ちなみに、1998年にリリースされたファーストアルバム『the brilliant green』もほとんどの曲が英語詞であり、そんなところも実にブリグリらしいところだ。
「There will be love there -愛のある場所-」の歌詞は日本語ではあるものの、川瀬の歌い方は意識的なものなのかどうか分からないが、英語の発音に近づけているようにも感じられる。優れた音楽というものは日本語であろうと英語であろうと言語なんて関係なく、そこをたやすく超えられるものなのだとブリグリの音楽が私たちに教えてくれる。