2025年 7月23日

【宮川彬良インタビュー】後編「宮川泰 ヒットパレード」のプロデューサーとして父を語る

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育ての親でもあったザ・ピーナッツをはじめ、1960〜1970年代にかけて多くのヒット曲を世に送り出す一方、「宇宙戦艦ヤマト」などテレビや映画音楽の世界でも活躍した作曲家・宮川泰が世を去って20年近くが経つ。明るい作風と人柄で愛された稀代のエンターテイナー。これまで、宮川泰の作品を集めたレコードやCDはいくつか編まれながらも規模の大きなものはなかったのだが、今回初めてレーベルの枠を超えた作品集が実現し、5枚組CDボックスの形でキングレコードから発売となった。これぞまさに昭和の宝箱である。

プロデュースを担当したのは、「マツケンサンバⅡ」などの作曲・編曲で知られる宮川彬良氏。コンサートやイベントを控えての多忙なスケジュールの合間を縫って、今回のボックスのお話や父親である宮川泰氏についてお話を伺った。今回の後編では、宮川泰が作曲を手がけた数々の名曲のエピソードについて語ってもらいました。



宮川泰と宮川彬良、音楽を通じて保たれた親子の絆


一一 宮川泰さんはご自身でも映画音楽をたくさん担当されましたが、ミシェル・ルグランやヘンリー・マンシーニが大好きと仰ってましたね。

宮川彬良(以下:宮川):あとバート・バカラック。この3人は追いかけてましたね。影響された部分も大きかったんじゃないですか。僕はマンシーニの「子象の行進」という曲が好きで、小さい頃にビアノで弾きたいから教えてって言ったか、あるいは見よう見まねで弾いてたのかもしれないけど、父は(これは面白いぞ)と思ったんでしょうね。ブルースコードの曲なんですけど、左手の動きを教えてくれて “次はどこ行きたい?” “その次は?” なんて言われながら、ブルースの12小節のコード進行を感覚だけで弾いていったんです。

そうしたら、“何の知識もない子供でもこの進行で弾きたいものなんだよ、ほらお母さん!” なんて言って。母は興味がないもんだから “そんなこと言ってないでご飯食べちゃいなさい、ピーマンの肉詰めが冷めるわよ” なんていう光景がありました(笑)。父は人類に共通する法則だとか、なんでもカラクリに興味があるんですよね。僕はその実験台だったんです。同時に教わることも出来たわけですけど。そういう会話があって、忙しかった父ともかろうじて親子の絆が保たれていたんでしょうね。

初々しい名曲、ザ・ピーナッツ「こっちを向いて」


一一 宮川泰さんの作品数は膨大ですから、今回のボックスで初めて聴かれる曲もあったのではないでしょうか。

宮川:ありましたね。それはもう驚かされました。収録曲全部が有名なわけではないじゃないですか。それでもよく知られているであろう曲がところどころでちゃんと出てきて、ひとつの組曲みたいになっている気がします。特に初期のものはアレンジも父が手がけているわけですから、ヒットしたしないに拘わらず、統一感といいますか、不思議と纏まっている感じがします。



ザ・ピーナッツの「こっちを向いて」なんかは初めて聴きましたが、これは「ふりむかないで」のアンサーソングになってるんですよね。しかも作詞が『シャボン玉ホリデー』(日本テレビ系 / 1961年〜)の秋元近史さんで。宮川泰の曲の中でも初々しいですよね。ヒットメーカーは曲を作っていくごとにパターンが限られていってしまうわけだけど、最初の頃は自由に曲が作れるわけで、非常にうらやましい環境。本当にのびのびと書いてる気がします。後になるほど大変な自問自答の世界ですから。

父と僕との一番の接点、伊東ゆかり「歌をおしえて」


一一 カバーポップスが隆盛になっていく時代ですが、向こうの曲と並べてもまったく遜色ないような洗練されたメロディーばかりなんですよね。なおかつ品があって。

宮川:伊東ゆかりさんが歌っている「歌をおしえて」という曲は前から知ってましたけど、父と僕との一番の接点の歌はこれかもしれないと今回改めて思いました。僕が作ったといってもおかしくないようなメロディーなんですよ。自分の中からも素直に出てきそうなものだし、もしかしたら最初に聴いた時にそのくらい深い影響を受けたのかもしれないけど、父親の作風の集合体と、僕の作風の集合体の留め金になってるような作品です。共通する部分にこの曲がバッチリ入ってますね。うらやましくもないくらい、うらやましいをちょっと超えるくらい好きな曲です。素直に尊敬します。これはたぶん曲先だったと思いますよ。



あとは弘田三枝子さんの「ひとつぶの真珠」もいいですね。園まりさんの「何も云わないで」のアレンジなんかを聴いてると “あぁ、そういう風に書きたかったんだね、お父さんは” って思えます。まだ30代前半の頃ですよ。あぁ解るなぁっていう。「すてきなカプチーナ」なんてものすごく洋楽っぽくて、おそらく向こうの曲で類似した曲があるんじゃないですかね。「恋のバカンス」にしたってジャズのある曲に出だしの跳躍が似てるなんて言われたみたいですけど、そんなことは気にしない。それも含めて初々しさですよね。「ふりむかないで」だって本当に日本の曲なの? って思いますよね。いまだに洋楽のカバーだと思ってる人がいるんじゃないかっていう。



「宇宙戦艦ヤマト」の練習曲は?


一一「恋のバカンス」を別格として、ご自分の曲の中で一番好きだと仰っていたのが「若いってすばらしい」でしたね。

宮川:それは常日頃から明言してました。中村八大さんの「明日があるさ」みたいな曲を自分も作りたいと思って書いた曲だったと聴いてます。やはり自分の曲で出だしが似ているものがあって、本人が好きなモチーフなんでしょうね。あの時みたいな曲の完成バージョンを書きたいなっていう想いが胸のうちにあるわけですよ。

別の例でいうと、北大路欣也さんの「何故にお前は」は「宇宙戦艦ヤマト」の練習曲でしょう(笑)。あれがあったからヤマトが作られた。あのパターンでいこうと思ってまた違う別のものが出来ていくのはよくある話で。「若いってすばらしい」もそうだったんですね。彼も歌心を模索しながら原石を磨くような作業をしていたんだろうなって思います。どこか品があって、いい意味で日本っぽくないんですよ。

今回のボックスで、1枚めは文句なしのヒット曲集で初々しさに満ちてますけど、2枚目3枚目になると時代とともにだんだん楽器が饒舌になってゆく。それはもう全く隙間がない感じで、お父さん少しだまってましょうよっていう(笑)。これは大変なボックスを作っちゃったかなと思ったくらいです。それに比べると無垢な1枚目は涙が止まらなくなるような感覚なんですよ。僕がありがとうって言うのも変な話なんだけど、正直そんな気持ちになりました。



どんなに和風の味付けをしてもどこかでジャズの匂いがする


一一 正統派の歌謡ポップスとバラエティーに富んだノベルティソング、どちらも宮川作品の魅力だと思うんですが、宮川泰さんの本質はどこにあったと思われますでしょうか。

宮川:それはどっちも持っていたんだと思います。対外的にはフォークが合わないとは言ってましたから、ああいう悲しい感じは趣味じゃなかったんでしょう。別のシチュエーションでは、悲しみを悲しい歌で表現するのは嫌だとも言ってました。悲しいことを楽しんだっていい、同じようなことをその都度違う言葉で言ってたような気がします。じゃあ「ウナ・セラ・ディ東京」はどうなの? ってもし生きてたら聞いてみたいですけどね。

僕自身は悲しい歌も好きだからいいんですけど。父の作品に対して品があるって言ってもらえるのは、やっぱりジャズっぽいってことなんでしょうね。どんなに和風の味付けをしてもどこかでジャズの匂いがするような。本来がジャズピアニストであり、アレンジャーですからね。アレンジ作品を集めた4枚目のラインナップには、他人の曲であればこその宮川泰の腕の揮いどころといいますか、本質の部分が見え隠れしていると言えるかもしれません。

一一 今回のボックスではお嬢様の宮川安利さんとの「逢いたくて逢いたくて」の新録音も収録されましたが、宮川泰さんの作品を託すような思いもあられたのでしょうか。

宮川:そう言ってしまうとちょっと荷が重いでしょうから、決して僕から託すという感じではなくて、勝手に学んでくれてるといいなという思いはありますよね。それがまた違う形で花開くと思うんです。それで結果的に宮川泰を受け継いだねって言われるかもしれないけど、全然違うことで実を結んだらいいですね。例えば宮川泰の曲でミュージカルを作ろうっていう野望は僕にはないですけど、彼女たちは何か考えるかもしれない。ただ、今回の「逢いたくて逢いたくて」のような形で一緒にカバーアルバムを作るというのはありかもしれません。それはむしろ前向きに考えたいですね。



「若いってすばらしい」「歌をおしえて」が双璧


一一 最後に、彬良さんご自身が最も思い入れのある宮川泰さんの作品を改めて3つ選ぶとするとどの曲になりますでしょうか。

宮川:やっぱり「若いってすばらしい」、それから「歌をおしえて」が双璧ですかね。もう1曲って言われたら『巨泉・前武ゲバゲバ90分!』(日本テレビ系 / 1969年〜)のテーマになってしまうかもしれないなぁ。ドミソだけであんなに洒落たメロディーであんなに人を惹き付けるっていう曲は他に知らないですもん。心からすごいと思います。結局明るい歌ばかりになりますけど(笑)。あとアニメだと、個人的な体験では僕はヤマトより『ワンサくん』のテーマ曲「ワンサカ ワンサくん」なんです。ベスト3に入れてもいいくらい好きな曲です。



日本人なら誰もが知る親しみのあるメロディを数多く作り上げた作曲家・宮川泰。彬良氏が語る親子だから知り得るその背景にある数々のエピソードは、明るい作風と人柄で愛された稀代のエンターテイナーだった氏の生き様そのもの。宮川メロディは永遠に不滅です。

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カタリベ
1965年生まれ
鈴木啓之
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