2012年 3月7日

着うた世代を直撃!Dear【平成セツナキ】ガラケー時代の “会いたい” が令和に再燃

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令和の今に再注目!着うたの時代に熱い支持を得ていたDear


平成とは、純愛の時代だったと思う。それも、とても危なっかしい――。

バブルがはじけ、大人たちの信頼は地に落ち、JKが日本を元気にしていた1990年代。戦争や災害を身近に感じ、ミレニアムを迎えた喜びより、未来はどうなるのという緊張感の方が強かった2000年代。その不安を埋めるように、連絡ツールはポケベルからケータイという最強のエモアイテムに進化していった。

大切なあの人からの着信を知らせる着うたは特別なもので、《平成セツナキ》と深く深く密接する。そのなかでも熱い支持を得た歌手のDearを覚えている人は多いだろう。彼女がデビューした2011年の音楽シーンは、嵐やAKB48がランキングを席巻していたが、恋する人たちは、着うたという内なる世界ではそういった表ヒットとはまた別に、 “会いたい” とセツナなる叫びが入った楽曲を指定した。Dearは今年デビュー15 周年を迎えるが、令和の今、その歌の数々が再注目されているという。



自身の壮絶な経験から生まれている純度の高い曲


透明感溢れる声質と圧倒的歌唱力。絶対音感を持つ彼女が歌う楽曲は、大切な人を交通事故で亡くすという、自身の壮絶な経験から生まれている。その純度の高さは、まさに刹那。「幸せになりたい。」「神様、もう一度…。」「ふたりで、ひとつだから。」「最後にひとつだけ」、すべての曲に喪失感と祈りが満ちている。
ハンパは嫌い、自分への “やさしいウソ” もつけない不器用で傷つくことが多いギャルたちは 、その歌に自分の心と重ねたのだろう。髪をクルクルに巻き、つけまつげで必死に本音を隠し、さまよっていたオンナノコたち。派手メイクやヘアスタイルは武装と誰かが言っていたが、Dearの歌が流行った平成後期は、ギャル文化も様変わりし、その武装がまた孤独を加速させることにもなった時期だった。大勢で群れているけれど、本当はひとり。だからこそ本物の愛がほしい――。そんな女の子たちがガラケーを握りしめていた。

何より対面の尊さを確信できた二つ折りのガラケー


Dearのミュージックビデオでも、二つ折りのガラケーを見つめ、愛しい人からの電話を待つ姿がある。そしてふと気づくのだ。あのガラケーの画面の小ささ、中途半端な便利さによって縮まった、中途半端な距離感こそ、エモさの頂点だったのだ。遠距離は逆によりもどかしくなり、何より対面の尊さを確信できたツールではなかっただろうか。

今では、スマホになり、どこでも、誰でも、どこにいるかを短文でやりとりし、動画をサクッと送り合えるまで進化した。けれど、だからこそ、「♪神様教えてよ 耐えられないよ」と歌う「神様、もう一度…。」のセツナが無性に胸を締め付ける。私たちは、ガラケーを手放したとき、会いたいという思いもゴッソリと失ったのかもしれない、とまで思う。あんなに触れたいと願った日があったのに、今では電話どころか、人に会うのも画面越しのほうが楽になっている。



平成セツナキをエモーショナルに彩るHIPHOP系アーティスト


この時期人気のギャルソングから溢れ出る “会いたい” をさらにエモーショナルに彩るのが、ラップパートを担う男性アーティストの存在だ。2008年に大ヒットした、青山テルマの「そばにいるね feat. SoulJa」をはじめ、平成後期は “feat.” とする、HIPHOP系アーティストによる掛け合い形式のラブソングが多い。

Dearの楽曲でも、「幸せになりたい。」はfeat. CLIFF EDGE「神様、もう一度…。」はfeat.GIORGIO13(NERDHEAD)、「ふたりで、ひとつだから。」はfeat.WISE「最後にひとつだけ。」はfeat. K.J.。恋人からの愛の言葉を歌う彼らだが、昭和のデュエットソングとは違い、そこにフィジカルな匂いはない。もう会うことが叶わない彼からの愛の言葉を代弁する精霊のようなポジションだ。Dearの透き通るような祈りと“feat.” のアーティストが絡むことで、愛しい恋の面影が見えてくる。



忘れられない恋、言えなかった愛の言葉を詰め込んだ歌


Dearや西野カナ、BENI、Julietなど、この時期の歌姫たちが願う恋は、刺激的な恋ではない。たった1つの運命の恋への強い願いだ。今の恋が最後の恋となることを願う。会えないと分かっていても、お願いと叫び続ける。そしてDearは “悲しくて悲しくて” 好きな人がそばにいないことを嘆き、祈るのだ。必死に喪失感の着地点を求めるけれど、簡単に着地できるわけはなく、想いは、そのままメロディーに乗り、溶けていく。だからこそ不器用な女の子たちは、彼女たちの歌に、自分の喪失感と重ね、身をゆだねることができたのだろう。

Dearというアーティスト名は、“最愛なる人たちへ、自分の楽曲を聴いてくださる方々へ、たくさんの愛のメッセージを届けられるアーティストになりたい” という思いを込めて命名したという。彼女の名だけでなく、平成はDearがつく楽曲や小説が多い。それはそのまま、運命のただ1人を求めた、あの純愛時代のキーワードのようだ。忘れられない恋、言えなかった愛の言葉を詰め込んだ歌。着うたはとっくに廃れ、ガラケー(3G回線サービス)は今年3月31日、ついにサービス完全終了の日を迎える。けれど、平成ギャルたちが胸に抱きしめたあの歌は時代を超え、今も、これから先も、愛しいあなたへ思いを届けるため、鳴り続けるだろう。


2026.03.22
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カタリベ
1969年生まれ
田中稲
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