×
伊藤蘭 インタビュー

最終回 スーちゃんとミキちゃんの存在を
わたし自身がいつも感じていたいんです


ソロ歌手デビューしてから2年。セカンドアルバム発売、ライブツアーと続く伊藤蘭さんに「全キャン連」(全国キャンディーズ連盟)代表である、著述家の石黒謙吾氏が深堀りするインタビューは3回目に。前回のライブの緊張感、歌や振り付けの話、スクールメイツのことから、キャンディーズファンのこと、水谷豊さんや趣里さんとの話などに向かいます。
第1回はこちら→「キャンディーズが解散宣言した日比谷野音でソロ歌手・伊藤蘭として44年ぶりのステージに!」
第2回はこちら→「振り付けはキャンディーズ以前、中学生のスクールメイツ時代に基礎を学びました」
第3回はこちら→「「キャンディーズのファンの方に守られながら会場入りするとかも」」

文化放送「GOGOキャンディーズ」は
とにかくハチャメチャな番組でした!

石黒
小松政夫さん以外でもいろんな方がいらしてましたね。あ、そうそう、やはり一番最初のライブで、アミューズ大里会長が席で見ていて目に光るものがあったような……。元マネジャーとして感無量だったのでしょうね。僕も41年ぶりの蘭さんのステージ観た高揚感に加えて、大里会長のその姿にぐっと来て、終演後にショートメールしたらすぐに、「終わってすぐ楽屋にダメ出ししにいっちゃって、クセが抜けないんだよ」っていう返事がきてまた感動。
あ、そうですそうです! 大里さんたしかに!
石黒
キャンディーズ時代からの仕事仲間の方々は嬉しかったでしょうねぇ。ラジオ番組で、森雪之丞さんと出演された時、同窓会会場で横で聞いてるみたいな楽しいオンエアでした!
そういうサービス精神もすごいんですよね、雪之丞さんは! あの時、ギター持ってきてくれてましたねー。今度のアルバムでは作詞を3曲書いていただいてますが、何十年のあいだで、言葉の選び方にますます磨きがかかっているというか。
石黒
3曲、違うバリエーションで書かれていて、素晴らしいですね。あと、吉田照美さんのラジオの時も楽しそうでしたね! 面白かったです。
キャンディーズの頃はわたしたち、文化放送『GOGOキャンディーズ』番組内で、台本上でのいじりですが、照美、照美と呼び捨てにしちゃってましたからね(笑)。
石黒
あ、僕この2年の間にラジオ番組に出させて頂いたことがあって、一緒に「評判!あて先マンボ」歌ったりして、現場スタッフ誰もわからないという(笑)。
「評判!あて先マンボ」収録
『CANDIES PREMIUM~ALL SONGS CD BOX~』
提供:ソニー・ミュージックダイレクト
いやー、文化放送の思い出はほんとにねぇ~。ハチャメチャな感じでがんばっちゃって、あれはフリートークじゃなくて全部台本があって。藤井青銅さんとか2人作家の方がいらしてね。自分たちも、「ええっ!」みたいな感じのテンションでしたからね。
石黒
すごい替え歌とかありましたね(笑)。ブースに入ったら、気分アゲていくんですか?
台本見て役割を与えられたら、木に登っちゃうっていうようになってましたね(笑)。でも、楽しいからやってるんですけど、これはわたしたちの実態じゃないのよ、っていう気持ちがひとりひとりの中にあって(笑)。
石黒
聴いてるほうからすると、とにかく3人はすごいなぁと。あの番組の次に、蘭さん女優復帰後の大人っぽいラジオ番組『通り過ぎる夜に』とか聴くと、そのギャップになんなんだって思いますよね(笑)。
そうですよね~。だからたまにあとから自分で聴くとほんとに笑えますね、ここまで振り切ってやってる人たち…… って。これが地だって思われるよねーって言いながら。一抹の “やりすぎちゃった感” みたいなものを3人それぞれに背負いながらうちに帰っていくんですよ(笑)。でもそのうち忘れちゃうんですけどね。

三谷幸喜さんの「子供の事情」でも
舞台で「よっこいしょういち」を

石黒
次々あるからそこを気にしてる暇もなく……。『8時だョ!全員集合』でやってた3人のコントや芝居も完全になりきるしかわけですよね? 日常と切り離して。
そうですそうです! あの芝居というか…… なんというか、今見るとすごいですよねー。でも、なんだかんだ言いながら楽しんでたんでしょうね。そういうことも。
石黒
ファンはもちろん楽しめたし、歌ってる姿と全然違って、こんな素敵な歌手の方がこんなことってなかなかやってくれないよねって、すごく親近感が湧きました。
ひとりひとりは、あんなじゃないんですよ、やっぱりね。だから、終わった時にみんなボーッとしちゃうみたいな(笑)。
石黒
あ、でも蘭さん、いまも時折番組出て、さんまさん、志村さん、憲武さんなんかに、面白いキャラ要求で振られたりすると、たとえば振り向いて手を握りしめてやる一発ギャグ「ウッ!」とかやってくれたり……。
あ~、ありますね。それは染み付いた…… サガですね(笑)。
石黒
その抗えないキャラ(笑)のネタで思い出すのは、僕がパルコ劇場で観た舞台の『悼む人』ですね。蘭さんが最初に登場してくる場面で、ド頭のセリフが、ソファに座る時にいきなり「よっこいしょういち」ってダジャレ言ったんですよね(注:グアム島帰還兵の横井庄一さん)。で、僕1人だけ会場で爆笑したんですが、他のお客さん、“蘭さんがまさか” って思ったのか気づかれず、誰も笑ってない!
やりましたねー!「よっこいしょういち」は、他でもやってますね。あ、そうだ、三谷幸喜さんの『子供の事情』の時もやりましたね。小学生の役だったんですが。
石黒
蘭さんについて、キャンディーズ時代だけとか、お芝居のときしか知らない方とか、いろいろなキャラクターのイメージができてない方だと、戸惑いがあったり!?
確かに、ときどきわからななくりますね。いまこの場の皆さんは、視聴者の皆さんは、私のことをどんなイメージで捉えてるのかなって。
石黒
白衣のイメージだけとか?(笑)
ははは、そんなのも含めて。
石黒
僕たち古参兵は、その多面性みたいなところに親近感を感じています! あ、いまは歌があるので、時期的に女優業は抑えめに?
どうしても時間的にそうなるので、『DOCTORS』とか、この前ちらっとやらせていただいたドラマとか、少しなんですがやってます。ライブとかアルバムとかの間を縫ってという感じにはなりますが、違う脳を使うっていうか。両方できる幸せはいつも感じています。

昔はいつも時間が足りない中でやって
緊張してはいたんだと思います

石黒
CMでは、JR西日本の「おとなび」はもう長いですよね。
そうですね、6、7年ぐらいは経っているでしょうか。今はCMソングも歌わせていただいてます。
石黒
東京だとYouTubeで見るぐらいですが、西のほうの人からは、「テレビでも駅のポスターでもしょっちゅう見てます」とか言われますよ。あのロケは楽しいでしょうね? リラックスしてる感じが画面から伝わってきますよ。
楽しいですねー。風光明媚というか、きれいな場所が多くて。行ってそうで行ってないところにもロケで行けるので、楽しいです。
石黒
しかしまあ、今でもさまざまなお仕事を精力的に向かってらっしゃるわけですが、キャンディーズの頃は、ステージにレコーディングに取材に公開録画にバラエティに…… とかとか、あれだけのすごい分量を超タイトなスケジュールで、よくぞやってらしたなと。
うーん、そうですね。短い時間で、人にお見せできるレベルまでにはって、いつも緊張してはいたんでしょうね。本当はかなりの自信を持って人前に出たかったんですけど、いつもやっぱり何かしら時間が足りないって中でやってはいましたから。
石黒
キャンディーズ時代から普通にそういうプロ意識が根付いていって……。
そうですねー。だから今振り返ると、勉強というか… 修行!? でもないですけど、代えがたい経験となってますね。それをなんで忘れるのってなっちゃうんですけど(笑)。
石黒
さすがに長過ぎたと。有効期限20年でしたっけ?(笑)
っていうぐらいに年月が経ったんですねー。
石黒
でもこの2年間、特にライブに行くのは僕たちにとっても青春の2回めが来てくれた感じで、充実しています。何度も観てると、オールフタッフが映画的な「伊藤蘭組」みたいに見えてくるんです(笑)。佐藤準さんがいて、バンドの方もコーラスの方も技術の方なども、いい関係なだろうなぁって。
ありがとうございます。そう思って頂けるのは嬉しいですね。とてもあたたかいアットホームなチームなので。
石黒
あ、今のお話とも関係するライブでのマニアネタを1つ。コーラスのお2人が、「SUPER CANDIES」の曲の入りで、「シー・エー・エヌ・ディー・アイ・イー・エス! SUPER SUPER SUPER CANDIES!」のアオリをやってくれてますが、あれ、声だけはやはり聞き慣れた男の人のほうがいいなぁって(笑)。
あ! そうですか!?
石黒
MMPの西慎嗣さんの声で「まだまだやっ! 声が小さいっ!」て言われたいっていう習性が(笑)。
関西弁でね(笑)。

スーちゃんとミキちゃんの存在を
コーラスの2人によって感じて

石黒
そうそう、その素晴らしいコーラスのお2人、いつもいらっしゃいますよね。
ちのちゃんとさっちゃんですね。
石黒
お2人が蘭さんの両サイドに来て3ショットになるとやはり、あ、3人だ、キャンディーズだ、って見えてはきますね。
歌うって行動とともにいつも、わたしの中にスーちゃんとミキちゃんの2人の存在は蘇るし、大きな存在なんだなって思いますね。あと、みなさんの中でも思い出してほしいなっていう思いもありますね。
石黒
となるとコーラスの2人は特にキャンディーズの楽曲を歌う時にはなくてはならない存在ということになりますよね。
はい、本当に。それから、なによりも、わたし自身がいつも、スーちゃんとミキちゃんの2人を感じていたいんだなぁって、ますます実感が深まっていますね。
石黒
それでは長い時間にわたって、普通の人が聞かない(笑)貴重で素敵なお話までもたくさん、ありがとうございました!
ありがとうございました。

---(インタビュー終了)---

石黒
あの~、恐縮ながら最後にお渡ししたい物が……。昨年、僕が蘭さんにこの47年の感謝を捧げる作詞をしたんです。作曲は音楽評論家のスージー鈴木さんが。アレンジもしっかりプロの方が手掛けて、僕が歌まで歌って録音して。サブスクでも聴けるんですが、CDにして持ってきました。
あ、このジャケットは……。
石黒
はい、後楽園球場です。そしてタイトルが……。
「微笑の恩がえし」……あ、なるほどー! 素晴らしい!
石黒
ありがとうございます! ライブでまた白いハチマキして、コールはできないのでペンライトでがんばります!
楽しみにしています。ではまたお会いしましょうー!

(インタビュアー石黒さんコメント)

2019年5月、『ダイヤモンド・オンライン』で伊藤蘭さんに僕自身3度目となるインタビューをさせていただきました。今回のRe:minderと同じく4回連続の記事で、その最終回のラストにこの文章と同じように、[余談的に。インタビューを終えて石黒からの思いです]と題した文章を載せました。以下、一部を抜粋します。

―― 僕はそのため、いろいろドロップアウトして大学にもいかなかったのですが、出版の道を選んだのも、いつか「ランちゃん」に会えたりする奇跡が起こるかも、との夢想からだけの選択でした。 そして11年前の2008年にその夢は実現します。解散から30年目、浪人30年で東大にトップ合格した気分でした。それ以降、仕事はがんがんやってはいたものの、精神的には完全な「余生としての仕事」という気持ちでもいたのです。 しかし今回またこういう機会をいただけ、意識は変化しました。 そんな達観したような気分でどうする! 6個上の蘭さんはいま、こうして大胆な決心をしたじゃないかと。その姿や思いを間近で見聞きして、僕もアクセルを踏み直そうという遺伝子のスイッチが切り替わりました。 そしてあらためて思ったのが、昔も今も変わらず「いつもファンのほうを向いていてくれた」ということです。 まだ、ファン歴46年。折り返し点に過ぎないし、いつまでも6つ上のお姉さんを追い続ける年下の男の子でいるつもりです。――

それから3年と3ヶ月。ライブ、アルバム発売イベント、公開録画、ディナーショーと、ステージはすべての9回、蘭さんの生の声と姿に触れることができました。

そして日々の気持ちは、高校時代に戻ったかのように、張り合いに満ちています。次のライブが楽しみでしかたがない、忘れていた、そういうストレートな感情が渦巻いています。

蘭さんがライブ会場で面白く言っている、昔の『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』の笑いネタ、「私たちには、時間がないのよ」にもまったく現実感が伴わない。それぐらい、今、蘭さんが歌を続けているという事実だけに充足感があるのです。

さあ、ファン歴48年になりました。でもまだまだ、年下の男の子でいます。永遠に。

(インタビュー・文章:石黒謙吾)

INFORMATION

伊藤蘭セカンドアルバム「Beside you」情報
伊藤蘭コンサート・ツアー2021情報

伊藤 蘭(いとう・らん)

1973年、“キャンディーズ”のメンバーとして歌手デビュー。センターとなった5枚目のシングル「年下の男の子」が初のヒットとなってからは人気沸騰。「春一番」「やさしい悪魔」などヒット曲を続け、1977年7月、突然の解散宣言から、1978年4月に、後楽園球場で伝説となったファイナルライブを行うまでファンを熱狂させた。1980年、映画『ヒポクラテスたち』(大森一樹監督・作)に主演し女優として芸能活動を再開。以降、夢の遊眠社作品をスタートとして、三谷幸喜作品『子供の事情』など数々の舞台に。テレビドラマでは、木曜ドラマ『DOCTORS 最強の名医』などに出演、映画『少年H』では夫である水谷豊との共演も果たした。2019年に歌手としてソロデビュー。ファーストソロアルバム「My Bouquet」は第61回レコード大賞企画賞を受賞。2021年9月、セカンドアルバム「Beside you」をリリース。
<< | 特集TOPへ