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伊藤蘭 インタビュー
第2回
振り付けはキャンディーズ以前、
中学生のスクールメイツ時代に
基礎を学びました
ソロ歌手デビューしてから2年。セカンドアルバム発売、ライブツアーと続く伊藤蘭さんに「全キャン連」(全国キャンディーズ連盟)代表である、著述家の石黒謙吾氏が深堀りするインタビューの2回目。前回の日比谷野音、ディナーショー、アルバム曲の話に続いては、歌や振り付けの話から、スクールメイツの話などに向かいます。
第1回はこちら→「キャンディーズが解散宣言した日比谷野音でソロ歌手・伊藤蘭として44年ぶりのステージに!」
一番最初のライブではガチガチでした。
ノドからからみたいな状態で……。
- 石黒
- 2年前のソロデビューからライブをかなりやられて、今度10か所ほどになりますね。かなり慣れてきたという感じはありますか?
- 蘭
- 『宗像フェス2019』が台風で中止、その後はコロナ禍で、地方公演の、広島、福岡、高松、札幌、仙台、あとは『葉加瀬太郎 音楽祭2021』と、中止になったステージも多かったですが、徐々には。やっぱり、その場にお客さんがいて、そこからもらえるエネルギーにずいぶん助けられていますね。だから毎回頑張れるっていう実感は湧いてきていますね。
- 石黒
- 今のところ僕はすべて行けてますが、一番最初の「TOKYO DOME CITY HALL」の時は、ものすごく緊張しちゃって、観ているこっちが(笑)。
- 蘭
- あはは、でもわたしも、絶対ファンのみなさんも緊張してるだろうなって思ってました。「蘭さん、大丈夫かな?」って(笑)。
- 石黒
- 開演前は周り見渡しても固まってる人多かったし、僕は落ち着かなくてガタガタ武者ぶるいが止まらなくて……。でも蘭さんも最初はかなり……。
- 蘭
- そうですねー。ガチガチでした。開演前は固まっちゃって、ノドからからみたいな状態でしたね。「あぁ、始まる」とか思って。
- 石黒
- 昨年の「LINE CUBE SHIBUYA」ぐらいになると、お互いに少し落ち着いてきて(笑)。MCでも、昨年の大阪で、関西弁のイントネーションで「これで合ってます?」とか言ったのが、ツボに入って大笑いでした。
- 蘭
- 大阪の方々はいろいろな意味で手厳しいからとか思うのでね(笑)。MCも楽しくやりたいと思うんですが、1人になると、あまり弁が立たないタイプなんで。
- 石黒
- え! 全然そう思わないですよ(笑)。
- 蘭
- あれ!?(笑) でも、MCだあ、とかは思いますね。
- 石黒
- そして、コロナ禍になっていたのでコールができず、その分、ペンライトでがんばりましたが、どうですか? ペンライトは? キャンディーズ時代はなかったアイテム。
- 蘭
- そうですよね。みなさんは声を出せないとういう状況で声援できなくて、ペンライトの活躍はすごいなあ、ありがたいなぁって。ステージから見渡すと、色が変わったりしながらきれいですね、とっても。すごい進化ですよね、昔と比べると。
- 石黒
- 僕も初めて買ったんですけど、高性能16色チェンジとかのを。そして、曲によって「ミモザのときめき」だから黄色だな、「マグノリアの白い花」だから白だな、キャン曲だからランちゃんカラーの赤だなとか変えていって。こういう応援が客席で広まっていって、ステージ上と共有できるのはキャンディーズ時代と同じ、応援の喜びです。
- 蘭
- そうですよね。声が出せないから、違う形でなんとかして伝えようとしてくださるのがわかるので、感動してしまいました。スーちゃんが作った曲「PLEASE COME AGAIN」を歌ったときには、みんな自然にスーちゃんカラーの青いペンライトを振ったり。
- 石黒
- 自然にああなって。みんなわかっていたので。
- 蘭
- ほんとに、阿吽の呼吸で……。
藤井フミヤさんが話していた歌の
有効期限20年が切れていた?(笑)
- 石黒
- ライブ以外にもアルバムを2つ作って、女優業だけやってこられた時と一番の意識の違いはなんでしょう? 心持ち的なことなどは。
- 蘭
- 女優は、台本頂いてから役について考える際に、自分と向き合う時間が長くて、すごく中に中に入るような「静」の感じがあったりしますけど、歌のほうはアウトプットというのかな、どうやってこの楽曲を表現していこうかという “動” の印象ですね。だからその違いがわかって、音楽があるって楽しいなと、日々実感しています。
- 石黒
- 2年前にも伺いましたが、ボイストレーニングやボーカルトレーニングに通われたりされてるわけですよね?
- 蘭
- はい。曲ができたらまずは楽曲をとにかく体になじませなきゃなりませんし、それは昔より圧倒的に時間がかかりますし(笑)。
- 石黒
- まあ年数が経っていることはたしかに(笑)。でも、だからこそ今これだけできてることがすごいとつくづく思うわけですが。
- 蘭
- いやいや~。ソロデビューのあとメディアで何度かお話してきたんですけど、ほんとうに忘れていて……。音楽が流れていざ歌い出せばできるだろうと思っていたら、できなくなっていたことに自分で驚きました。
- 石黒
- こちらはできてるシーンしか見てないので全然そんな感じは受けませんでしたよ。プロセスはわからないので……。
- 蘭
- 歌の感覚を覚えてる年数ってどれぐらいなんでしょうね。藤井フミヤさんが「20年間ぐらいは大丈夫なんじゃないかなぁって思うんですよ」っておっしゃってて。チェッカーズの歌は、音楽が流れて歌いだしたら練習ナシで歌えると。私はそうじゃなかったので有効期限が切れていたと(笑)。そんな話をして笑ってたんですけどね。
- 石黒
- ライブが近づくと練習の回数が増えて行ったりしますか?
- 蘭
- そうですね。アルバムのレコーディングの時にすでに、どういうふうに表現しようかっていうのはできあがっているんですけれど、ライブで歌う時にはさらにどう出したらより届くか、常に考える課題がたくさんあって。だから元気でいられるのかなって思います。
- 石黒
- 家の中にいても落ち着かなかったりしますか?
- 蘭
- 毎日やらなきゃやらなきゃって(笑)。ちょうど今は、レコーディングが終わって、ライブに向けて一番自分の曲を聴いてるところですね。
- 石黒
- 人前に出て2時間ずっと歌ってるわけですからねえ……。いったん自分に入れたものをさらに体に染み込ませるような感じですかね。完成版を聴くんですよね?
- 蘭
- ファイナルミックスを聴きます。レコーディング中ならば、オケも聴きますし、自分の歌が入ったところのも聴いたりしますね。キャンディーズ時代と違って、今は途中段階でも送ってきて頂けるので。アレンジが変わったりすることもありますしね。
- 石黒
- 少しずつブラッシュアップされていくのは、歌うご本人としても楽しみでしょうね。
- 蘭
- そうですね。こうやってスタッフのみなさんが苦労を重ねて楽曲ができあがっていくんだなってわかってありがたいなぁって思います。
傘の「さばき」が難しい振り付けで
これ、どうしようと思いました(笑)
- 石黒
- 歌もさることながら、ライブに向けては、振り付けやステージング的な動きを覚えるのはかなり大変でしょうね?
- 蘭
- まさに今は動きを先生に付けていただいていて習得中です。スタジオで一緒にやってる姿を先生が動画に撮ってくれて、それを見ながらうちに帰ってからもやっています。課題がいっぱいあるんです(笑)。
- 石黒
- 『振り付けに関して前回のライブですと、「Let's・微・smilin‘」で、傘を持っていろんなふうに扱いながら白いドレスで踊りますよね? あれ、傘をこう回してとか開いたり閉じたりしながらって、考えるだけでも大変なんじゃないかなと。
- 蘭
- あれが一番時間かかったんです(笑)。難しかったですねー。“さばき” がね、傘の。一見なんでもないような感じなんですけど。ダンサーの方も入っていただき3人でしたし。振り付け始まった時、これ、どうしようと思いました(笑)。ライブの打ち合わせで最初に、一番ショーアップして動けるのはこの曲かもしれないってところから、次に小道具が出てきて、あれあれ~!? みたいな(笑)。でも大変に見えちゃダメだと思うんですよね。楽しんでいただければいいだけの話で。たまたま聞かれたのでお話しましたけど(笑)。
- 石黒
- なるほど、そういう順番でステージが構成されていくんですね。たしかにあの曲はできそうな気はしますね。じゃあ相当練習されましたか?
- 蘭
- 日数的には1週間ぐらい使ったんじゃないですかね。スタジオに行って、家でも。傘を閉じるタイミングなんかもほんともう、かくし芸的な(笑)。
- 石黒
- かくし芸! といえばそういえばキャンディーズ時代の『新春かくし芸大会』では、かなり難しい、ハイレベルなことやってましたよね。
- 蘭
- たしかにたしかに! 私たちに限らず皆さんね。
- 石黒
- 3人ともすごかったのは、玉乗り! こんなことまでできるのかって。今なら動画のCG加工してるんじゃないかって思えるほどレベルの高い動きでしたよ。
- 蘭
- ありましたね! 玉乗り専門の方のところに行くんですよ。かなりの年配の先生でしたね。普通のお宅で玉乗りの練習するんですよー(笑)。4、5回は通ってますね。
- 石黒
- これに限らず、『(8時だョ!)全員集合』の“小芝居” みたいなのも(笑)、覚えていくの大変だろうなあと思って……。あれだけぱっぱっとできる素地があったから、長いブランクがあっても今いろんなことができるんじゃないかって思うんですよ。
- 蘭
- 小芝居(笑)。そうですね、まずは何にでも挑戦してみる気持ちだけは変わらずにあるので、元気でいられるのかもしれないですね。
- 石黒
- そうそう、一番最初のライブを観た木梨憲武さんが「当時のステップと全然変わらない」と驚いたっていうネット記事を読みましたが、僕も横にいたファン仲間と「全然変わんないよ!」って言い合ってました。あれはみんな思うんじゃないかなって。ハイヒール履いてあの動きを。よほど体に入ってるんだろうと。
- 蘭
- いやいや~。ある程度は、慣れというんですかね。脳と体がすぐ反応できるようなクセみたいなのはあるのかな。まあ若い時みたいにはいかないとは思いますけど(笑)。
中学校終わったら制服のまま中央線で
レッスンに向かったりしていました
- 石黒
- その振り付けの感性が染み込んでいるのは、キャンディーズ時代はもちろんとして、それ以前の “スクールメイツ”(注:渡辺プロダクションの育成機関=東京音楽学院の選抜グループ)時代の経験が大きいんじゃないかと思うんですよ。そこで地盤を固めたからこそ、今でもできるのではと。
- 蘭
- あー、たしかにそうですね。踊りにしても、基礎らしい基礎をやったのはその時代ですし。あと、振り付けをやっていただいていた西条満先生のセンスは大きかったですね。振りならば、100%じゃないんですよ。“粋”…… 粋って言うのかな。ちょっと足りないぐらいの、全力でがんばらない感じで、だけど気が利いているみたいな表現の仕方は学んだ気がします。そこに美学があるんだなって感じていました。
- 石黒
- キャンディーズの曲に限らずスクールメイツの振り付けもすべて西条さんが?
- 蘭
- そうなんですが、特にキャンディーズになってからは、常に、歌に影響のない範囲での振り付けっていうことを意識してくださっていました。
- 石黒
- アミューズの大里会長(注:元キャンディーズのマネジャー)に聞いたのですが、西条さんに新しい曲を渡すとすぐ、ぱぱっとその場で考えるらしいですね?
- 蘭
- そうですほんとに、あっという間に。2時間後に『(夜の)ヒットスタジオ』の生本番があって、そこで新曲歌うっていう場面でとか。その日用の振り付けっていうこともありますから、そこに間に合うような、短い時間で把握できる範囲で考えてくださってました。
- 石黒
- ライブでは普通だった洋楽のカバーを、NHKの『レッツゴーヤング』などテレビでもやってましたが、その振り付けなんかも西条さんが?
- 蘭
- はい。ほとんどの動きを西条先生がリハーサルのときにしてくださって。
- 石黒
- シュープリームスとか、今でもユーチューブで見られますが、流麗というか、しなやかな振りで見惚れます。そして振りについては2年間でかなり取り戻した感じはありますか?
- 蘭
- 蘇ってきますね、やっぱり。そうだったそうだった、って。曲によって違いますけどね。解散に近い時の曲だとあまり回数を歌ってないからなかなか思い出さなかったり。
- 石黒
- 最初のほうが覚えてるわけですね。最初といえば、スクールメイツに入った時、中学生ですよね? それでも都会の真ん中通ってしょっちゅうレッスンに行っていたと……。
- 蘭
- そうですね。13歳とか14歳から、中学校終わったら制服のまま中央線に乗って新橋向かうこともありました。週に3、4回とか。テレビ番組で踊るとか出演が近づくと振り付けとかなんだかんだと、毎日のように東京音楽学院に行ってましたね。
- 石黒
- スーちゃんミキちゃんと3人とも通っていてわけですもんね。僕はスクールメイツから生まれたキャンディーズには、当時から独特のクラブ活動的な連帯感を感じていました。
- 蘭
- ほんとに、その感じでした。歌謡番組のアシスタントとしてグループが結成された時点で、3人は高1、高2、高3でしたから。
(インタビュー・文章:石黒謙吾)
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