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宮崎美子 インタビュー

最終回 クイズの女王、“シティポップ” と今後の音楽活動を熱く語る!


近年、ドラマや映画では優しく朗らかなお母さん役として、バラエティ番組では “クイズの女王” として老若男女から愛されている宮崎美子。だが、20代の頃はシングル4作、オリジナルアルバム3作をリリースする歌手でもあった。当時発表したそれらの作品には今でも第一線で活躍するシンガーソングライターや作家が詞や曲を多数提供。いずれもシティポップの名盤として高い評価を受けているが、9月29日にはそれらの楽曲を網羅した40周年記念アルバム『スティル・メロウ ~40thアニバーサリー・アーカイブス』がリリースされる。最終回では、それらの作品群や今後の音楽活動に対する想いを訊いた。
→ 第1回:34年ぶりの新曲「ビオラ」に込めた想いとは?
→ 第2回:ミノルタのCMで大ブレイク。疾風怒濤のデビュー当時を振り返る。

―― 宮崎さんは「NO RETURN」(1981年10月)で歌手デビューしてから2ヶ月後、ファーストアルバム『メロウ』をリリース。作家陣を見ると、シングルを書かれた八神純子さんをはじめ、ユーミン、教授、矢野顕子さん、渡辺真知子さん、吉田拓郎さん、南佳孝さん、鈴木慶一さんなど、錚々たる名前がクレジットされています。

1stアルバム『Mellow』
1stアルバム『Mellow』
宮崎
すごいメンバーなんですよね。どの曲も本当に素晴らしくて、私にとっては大切な宝物。当時はレコードでしたけど、このたび音を整えてCD化されることになりましたので、皆さんにもぜひ聴いていただきたいと思っています。

―― 9月29日にリリースされる2枚組CD『スティル・メロウ ~40thアニバーサリー・アーカイブス』(初回限定盤はCD3枚+DVD1枚)ですね。ファーストアルバムは『メロウ』でしたが、今もピカピカに輝いている宮崎さんに『スティル・メロウ』はぴったりのタイトルだと思います。

『スティル・メロウ ~40thアニバーサリー・アーカイブス』通常版
『スティル・メロウ ~40thアニバーサリー・アーカイブス』通常版
宮崎
今回リマスタリングされるということで、立ち会わせていただいたんですけど、改めて当時の楽曲を聴いて「いい曲を歌わせてもらっていたんだな」と思いました。自分で言うのもなんですけど(笑)、本当にいい曲ばかりなの。だから「もっとちゃんとできたんじゃないか」と申し訳ない気持ちにもなりました。あの時はあれが精一杯だったんですけど…。

―― ご本人からすると未熟な部分が目に付くのかもしれませんが、当時の歌声には若い時にしか出せないひたむきさや新鮮さを感じます。

宮崎
今よりも40歳若かったわけですから、同じ詞を読んでも解釈が違うと思うんですね。だから「今歌ったらまた違うんだろうなぁ」と。

―― リマスター音源を聴いて、再発見とかはありましたか。

宮崎
『メロウ』の1曲目に収録されている「夕闇をひとり」(作詞・作曲:松任谷由実、編曲:新川博)を聴いた時、「ユーミンはやっぱり素敵。また歌いたい!」と思いましたね(笑)。

―― もともとユーミンファンだった宮崎さんのために、谷田さんが依頼したそうですね。そうしたら「今アルバム(『昨晩お会いしましょう』)を作っていて、その中の「夕闇をひとり」が宮崎さんに合うと思う。よかったらカバーしてください」という話になったと。ファーストアルバムではユーミンの「ためらい」(オリジナルは『時のないホテル』に収録)もカバーされています。

宮崎
ありがたいですよね。こういう機会がなければ私の家の本棚に並んでいるだけでしたから、いい音でCD化していただいて本当に感謝しています。きっと若い方たちは「あのクイズのおばさんって歌も歌っていたんだ」とか、「このすごいメンバーの曲を歌っていたの?」って驚かれると思うんですけど(笑)。

―― セカンドアルバム『わたしの気分はサングリア』(1982年)には、同名シングルを書き下ろした加藤和彦・安井かずみご夫妻が4曲を提供しているほか、大貫妙子さんも参加。宮崎さんも3曲で作詞を担当、うち1曲は作曲にも挑戦されています。

2ndアルバム『わたしの気分はサングリア』
2ndアルバム『わたしの気分はサングリア』
宮崎
加藤さんと安井さんはヨーロッパを感じるお洒落な曲をたくさん作ってくださいましたね。その中から「わたしの気分はサングリア」(作詞:安井かずみ、作曲:加藤和彦、編曲:井上鑑)がシングルカットされたのは、サングリアが流行っていたのかしら(笑)。大貫さんは学生の頃からファンで、ずっと聴いていましたから嬉しかった! 特に「愛のアンブレラ」(作詞・作曲:大貫妙子、編曲:大村憲司)は自分の感覚とは違う歌で、それが新鮮でした。今でもお気に入りの作品です。

―― そしてサードアルバム『美子』(1983年)には、近年シティポップのオリジネイターとして海外からも注目されている林哲司さんをはじめ、井上堯之さん、後藤次利さん、谷山浩子さんらが作品を提供。同時期に高田みづえさんが歌ってヒットしたサザンオールスターズの「そんなヒロシに騙されて」(作詞・作曲:桑田佳祐、編曲:井上堯之)もカバーされています。

3rdアルバム『美子』
3rdアルバム『美子』
宮崎
大人の女性をテーマにした楽曲が多かったアルバムですね。自分にない部分でしたから、歌うのに苦労しました(笑)。その中では後藤次利さん作曲の「考えさせてDandy」(作詞:篠塚満由美、編曲:新川博)がカッコよくて好きだったなぁ。「私の心はハンバーグ」(作詞・作曲:谷山浩子、編曲:新川博)は谷山さんらしいユニークで不思議な作品でしたが、私が歌うのは難しかった!

―― マクドナルドのCMに出演された今ならぴったりの歌ではないでしょうか(笑)。

宮崎
あはは! そうかもしれませんね。

―― 『スティル・メロウ』にはアルバム未収録だったサードシングル「黒髪メイド・イン・Love」(1983年 / 作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:戸塚修)も網羅。初回限定盤のスペシャルCDには、新録の「ビオラ」「きもち」のほか、近田春夫さんがプロデュースした4thシングル「だからDESIRE」(1987年 / 作詞:作詞センター、作曲・編曲:馬飼野康二)なども収録されています。

『スティル・メロウ ~40thアニバーサリー・アーカイブス』初回限定盤(CD3枚+DVD1枚)
『スティル・メロウ ~40thアニバーサリー・アーカイブス』初回限定盤(CD3枚+DVD1枚)
宮崎
「黒髪メイド・イン・Love」は花王のCMソングでしたよね。谷田さんによると、親交のある橋本淳さんにお願いして「ブルー・ライト・ヨコハマ」のコンビ(作詞:橋本淳、作曲:筒美京平)でお作りになったそうです。「だからDESIRE」は私がラップを歌ったタカラ本みりんのCMがきっかけとなって生まれた曲。リズムに乗るのが大変でしたけど、近田さんが乗せ上手で(笑)。

―― 癒し系の「ビオラ」や「きもち」とは対照的な作品ですよね。

宮崎
難しかったけど、面白いチャレンジをしてきたんだなと改めて思いました。

―― ちなみに普段はどんな音楽を聴かれているんでしょう。

宮崎
ナット・キング・コールはよく聴きますね。すごくいい声で気持ちが落ち着きますから。でもその一方でBABYMETALも好きなんです。今年の日本武道館公演にも行ったんですけど、10月で封印というのが残念!

―― 博覧強記の宮崎さんですが、最近流行っている曲もチェックされているのでしょうか。

宮崎
う~ん、それはあまり詳しくないかも…。でもYouTube用のアクセサリーを買うお店で、最近の曲がよく流れているんですね。たぶん有線放送だと思うんですけど、「猫になったんだよな君は」って歌う「猫」(DISH//)と、「うっせぇわ」(Ado)は印象に残ったかな。私には絶対に歌えないけど(笑)、「面白いなぁ」って。2曲ともすごくキャッチーで「歌にすれば何でも言える。歌の世界って自由だな」と感じましたね。

―― 今回、34年ぶりの新曲「ビオラ」で久々に作詞をされましたけど、「猫」や「うっせぇわ」に触発されて、そういう歌を書きたいという創作意欲が湧いているのではないですか?

宮崎
それは無理、無理!(笑) でも今回『スティル・メロウ』を出していただけたことで、昔の自分が歌った歌を今歌ったらどうなるんだろうという興味は湧いています。そういう機会があったらいいんですけどね。

―― ぜひライブを!

宮崎
 今まで一度もやったことがないんですよ。そういう意味ではチャレンジですけど、以前の曲もちゃんと歌えるようになったらやってみたいかな。50周年だと、ちょっと先すぎるので45周年くらいを目標に(笑)。

―― もう少し早くてもいいんですけど(笑)、それまでにYouTubeチャンネルでどんどんセルフカバーしていただけたら嬉しいです。

宮崎
そうか、そう考えるとYouTubeはいい場所ですよね。じゃあ、第1弾はシティポップの「夕闇をひとり」を歌って、世界を目指そうかしら(笑)。

―― 今後の音楽活動にも期待しております!

(取材・構成/濱口英樹)

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