7月25日

鷲は舞い降りた。NWOBHMのレジェンド ー サクソン「暴走ドライヴィン」

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サクソンのアルバム「暴走ドライヴィン」が日本でリリースされた日
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photo:FANART.TV  

洋楽に目覚めたのが10歳頃と早熟だったのは、北九州で育ったせいかもしれない。

カタリベの安藤広一さんが福岡の音楽シーンについて書かれたコラムを興味深く拝見したが、僕の洋楽の先生的な存在が、まさにその文中に登場するKBCラジオ『今週のポピュラーベスト10』であり、DJの松井伸一さんだった。番組でオンエアされたチープ・トリックやキッスをきっかけに洋楽を聴き始め、毎週のチャートを夢中でノートに書き写すことで多くを学んでいった。

番組を聴く中でとりわけハードなロックが好きなことを自覚し始めた僕が「ヘヴィメタル」という言葉を意識したのが、ミュージックライフ誌80年5月号のヘヴィメタル特集。伊藤政則さんによる現地レポートを食い入るように読み、NWOBHM(ニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)ムーブメントの到来を知ることになる。

その大本命バンド、アイアン・メイデンを初めて聴いたのは、山本さゆりさんがDJを務めたNHK-FM『軽音楽をあなたに』のヘヴィメタル特集で、荒削りながら若々しくエネルギッシュなサウンドに、新世代の到来を実感した。

一大ムーブメントだけに、様々なバンドが毎月のように日本デビューしていく。欲しいアルバムはたくさんあっても、まだ小学生だけに小遣いをかき集めても2カ月に1枚程度のLPを買うのが精一杯だった。僕は「ヘヴィメタル四天王」と称された4バンドのうち、6月発売のアイアン・メイデンに狙いを定め、ガール、ワイルド・ホーシズは見送ることにした。

ところが、四天王のあと一角、デフ・レパードが5月に日本デビューするというではないか。ラジオでまだオンエアされていなかった彼らのことがどうしても気になり、僕はアイアン・メイデンを差し置き、小遣いをはたいてデフ・レパードのアルバムを買ってしまう。しかし、買ってきたLP盤に針を落として愕然とする。

サウンドスタイルも違えばアイアン・メイデンとの実力差も歴然で、自分の先走った行動を後悔していた。その時の僕はもっとメタル然としたバンドを求めていたのだ。

80年6月、遂にアイアン・メイデンの『鋼鉄の処女(Iron Maiden)』が発売されたが、お金が足りない僕は『軽音楽をあなたに』をエアチェックしたテープを聴き続けていた。そのうちに7月にサクソンなる有望なバンドが日本デビューすることを知る。

アルバムのリードトラック「モーター・サイクルマン」が前述の松井さんの番組でオンエアされ、モーターヘッド直系という疾走感に溢れた男臭いバイカーズサウンドはまさに僕好みだった。かくしてアイアン・メイデンにタイミング悪く振られたのも何かの運命と思い、代わりにサクソンのアルバム『暴走ドライヴィン(Wheels of Steel)』を先に買う決心をする。

期待と不安の中で一気にぶっ通しで聴いたアルバムはこれぞヘヴィメタル! といえる期待以上の内容で、結果的にこれが本当の意味で僕が初めて買った「ヘヴィメタル」のアルバムになったのだ。

時は流れ2007年、僕はレコード会社の制作ディレクターとしてサクソンを担当し、リリースするアルバムのプロモーション用の取材でロンドンへと向かった。現地で初めて会うヴォーカルのビフ・バイフォードはいかにも英国紳士らしい威厳に満ち溢れた人だった。

その夜観たライヴで披露された「モーター・サイクルマン」は、僕を1980年へとタイムトリップさせた。来日公演を実現させたい一心で彼らの日本盤をリリースしたが、その甲斐もあって同年に26年振りの来日公演が実現し、ビフをはじめとするメンバーと東京での再会する目標も叶った。

商業的にはアイアン・メイデンに長年に渡り差をつけられてきた彼らだが、その功績はまさにNWOBHMの生きるレジェンド。僕にとっては運命的なタイミングで出会った特別なバンドだ。

近く発売されるアルバムは実に22枚目を数える。

2017.11.29
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  YouTube / Can İLKNUR


  YouTube / Simon Morris


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