5月1日

【中森明菜へのラブレター】唯一無二の歌姫でありながら大切な心のベストフレンドへ

89
1
 
 この日何の日? 
中森明菜のデビューシングル「スローモーション」発売日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1982年のコラム 
髪型最強!ラ・ラ・ランドでもお馴染み「アイ・ラン、愛乱… あ、いらん」

常識も非常識も “ナンのこっちゃい” やっぱりJAGATARAは厄介だっ

激しくも上品なトランペッター、ハーブ・アルパートが奏でる男伊達の音楽

40周年!中森明菜「スローモーション」にみるデビュー戦略、エースは遅れてやってくる?

人間交差点・コトバの交差点 ♪ 伊藤銀次(その3)

沢田研二「おまえにチェックイン」佐野元春、大沢誉志幸、伊藤銀次がコーラス参加!

もっとみる≫




歌う世界は壮大なのに「明菜ちゃん」と呼びたくなる幼さ


時代を背負うスターになる人がいる。その輝きは、本当に眩くて不思議な力を持っているようで、憧れてしまう。けれど、同時に「時代」とはどんなに重いものだろう、とも思う。それを両肩に乗せ、美しい光をまき散らすように踊り歌い、世の中を魅了した明菜ちゃん。

―― 今、少しでもゆっくりできていますか。

泣くほど嫌いだったというセカンドシングル『少女A』がヒットし、大スターになっていった彼女。私はその幼い表情と、強気な視線とのギャップに参った一人。歌、振り付け・衣装・メイク・髪型まですべて、曲の主人公に合わせて華麗に変身するその姿に誘われ、何度も心の旅をしたし、激しい恋をした気にもなった。毎回、そのステージに、感情が波のように揺さぶられるものだった。

「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕」「AL-MAUJ」など、異国情緒漂う曲も多く、非現実な世界を見せてくれるタイプのアーティスト。でも、それでも「明菜ちゃん」とちゃんづけで呼びたくなる不思議。多くの人の青春の一ページに、彼女の麗しさや凛々しさと同時に、あぶなっかしいほど幼い笑顔があるのではないだろうか。



「女の子が持つ、希望と逆ベクトルに存在する何か」を歌う中森明菜


デビューの切符を掴んだ『スター誕生!』では山口百恵の「夢先案内人」を歌い、デビュー曲の「スローモーション」はお気に入りだったというから、もしかしたら、もう少し等身大で、ゆるやかなやさしい曲をもっと多く歌いたかったのかもしれない。

ただ、時代は「82年組」と称されるほど、アイドル豊作の年。弾ける若さとかわいさで希望を歌うライバルはごまんといた。そんななか、哀愁を帯びたアルトボイスと類まれなる歌唱力を持つ彼女は「女の子が持つ、希望と逆ベクトルに存在する何か」を歌うことで、立ち位置を確立する。「禁区」「十戒(1984)」「飾りじゃないのよ涙は」「難破船」と、確実に孤独のレベルを上げながら。

「難破船」を作詞作曲した加藤登紀子は「これは絶対明菜さんの歌だ」と太鼓判を押していた。歌い手としては最高の賛辞ではあるが、22歳の若さでこの曲を託されるのはかなりヘビーなことだったろう。



それでも、「孤独を表現する」という使命に120%で答えた彼女。その在り方は、キラキラとミラーボールが輝くようなあの時代の中、太陽のやさしい光を求める一輪の生花のようだった。その咲き誇り方が美しくて儚くて、ドキドキした。

ただ、どれだけ凍り付くような重く切ない世界を歌ってきても、私のなかでは、なぜか彼女のイメージは「初夏」なのである。大好きな「サザン・ウィンド」のイメージと、あの幼く、つるんとした笑顔のせいかもしれない。

「DESIRE -情熱-」や「TANGO NOIR」といったデコラティブな曲はもちろんテンションが上がる。「水に挿した花」のように、絶望を心を削るように、ここまで繊細に歌えるのは彼女しかいない。



でも、自然と笑顔が弾け出るようなハッピーな歌も、もっともっとたくさんあってよかった、と思うのだ。明るい、夏のはじまりを思わせる歌が。

明菜ちゃんが大好きだから、元気でいてくれればそれでいい


昨年8月末、ツイッターで個人事務所設立のお知らせが流れ、中森明菜40周年再始動か、という期待に満ちたニュースが流れた。私は「今はツールが増え、自分のスタイルで音楽を発信できるようになっている。それは彼女の活動の追い風にもなるはず。ゆっくりでいいので復活を待ちたい」と記事で書いたことがある。

しかし、あるファンの友人がこう言っていた――

「明菜ちゃんが、元気でいてくれればと思う。それだけなんだよ」

あぁ、そうなのだ。中森明菜のパフォーマンスを見れば、誰だって、彼女がどれだけのパワーを1曲に掛けているかがわかる。

だからこそ、「復活を待ちたい」の前に「明菜ちゃんが大好きだから、ただ元気でいてほしい」。まさに、その通りだと思った。

彼女にはエールではなく、そんなシンプルな思いを綴った「ラブレター」という言葉を贈りたくなる。歌謡界における唯一無二の歌姫でありながら、遠い存在ではなく、一人ひとりの心にとても近い “明菜ちゃん”。

きっと彼女は、多くの人にとって、たまらなく大切な心のベストフレンドなのだ。

誕生日おめでとうございます!

▶ 中森明菜のコラム一覧はこちら!



2023.07.13
89
  Songlink
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1969年生まれ
田中稲
コラムリスト≫
97
1
9
8
4
中森明菜「十戒(1984)」歌謡界の女王になるための試金石?
カタリベ / 安川 達也
101
1
9
8
5
中森明菜の豪華アルバム!井上陽水から吉田美奈子まで個性派アーティストが参加
カタリベ / 前田 祥丈
39
1
9
8
0
18歳の松田聖子「Eighteen」ヒット曲で歌われるのはいつも17だったけど…
カタリベ / 三園 彩華
106
1
9
8
4
中森明菜が挑戦した異色のリゾートソング「サザン・ウインド」
カタリベ / 綾小路ししゃも
171
1
9
8
4
特別な意味を持つ【1984年の中森明菜】一体この時期の彼女に何があったのか?
カタリベ / 指南役
24
1
9
8
6
国生さゆり「バレンタイン・キッス」いまだにカバーが絶えないエバーグリーン♡
カタリベ / かじやん