12月6日

白シャツ女子と私の妄想、娘とオシャレと今井美樹

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母の祈り、白シャツと洗濯とアイロンの関係


今私がはまっているものが “洗濯“。白いシャツを、白く長いことキープしたい。主婦になってから私の5本指くらいに入るかなり優先順位の高い願いだ。それと同時に私は無臭派。かなり固く洗濯には香りはいらぬと思っている。この2つを両立させるのは結構難しい。いや、不可能かも… とずっと思っていた。

というのも香りがついていない洗剤は本当に少ない。香りなしを探していくと究極は石鹸素地の洗剤となるのだが、そうでなくても白は黄ばみやすいのに石鹸の洗剤は洗っているうちにどんどん生地を黄ばませていく。ところが温度と水のアルカリ度を変えてあげるとうまくいくことをある本で知り、今はいそいそと朝から洗濯に勤しんでいる。結果が見えるとやりがいがあるというものだ。

そこで見直したのが、ただいま思春期真っ盛りの娘(中2)の制服のシャツの扱いだ。これまではちょっと襟が黒くなってると思っても「次洗う時に石鹸でゴシゴシすればいいや」とか、「アイロンはちょっと面倒」と割愛したりと、なんともパッとしない女子中学生にさせてしまっていたのだが、あるとき娘が恋愛漫画でよく見るJKさながらの腕まくりをしているのに気づく(もちろんソックスはくるぶし辺りで丸まっている)。

「これでは見た目も中身もヨレヨレな思春期にさせてしまう」と、やっと毎回キレイに白く洗い上がるようになったシャツにせっせとアイロンをかけることにした。もちろんアイロンをかけたところで成績が上がるわけでも、ハキハキとした返事が聞けるわけでもないのだが、いわゆるこれは母の祈りみたいなものだ。外で何があっても無事に家に帰ってきてね、といった加護や祈願のようなもの。面と向かっては色々と衝突が起きがちなので本人には言わないけれど。

不朽の名作「キャンディ・キャンディ」にみる着崩しの原風景


娘に限らず、わざわざ制服を着崩すのは学生の常であろうが、私にとってのそれらの原風景は不朽の名作漫画、『キャンディ・キャンディ』の中に出てくるキャンディの恋人テリーと私が子供時分に過ごしたイギリスの近所の学生たちにある。

私がロンドンに暮らすようになった1977年はまだ日本人はそれほど多くなかった。ちょっと田舎に行くと「日本人なんて初めて見たよ」という人もいたし、ロンドンでもどこでも当たり前のように黄色人種を差別する人がいた。だから地元の小学校には全く英語を話すことができない日本人を受け入れてくれるところが少なく、学校探しは難航した。

今、改めて思い出してみると、ひとつも英語がわからない私と弟以上にネックだったのは、六年半のイギリス滞在をイエスとノー、そしてサンキューとソーリーの4語で乗りきった母だったのではないかと思う。なんとなく相手の質問が理解できるレベルの母が私と弟を引き連れて入学可能か直談判しに行ったのだから先方もさぞかし面食らったことだろう。

そんな母の苦労の末、やっと通うことができたはアメリカンスタイルを取り入れている学校だった。どこがアメリカンスタイルかというと、制服がないところだ。そして校庭が非常に広く開放的な1階建ての校舎であること。これは私をとてもがっかりさせた。私が憧れていたイギリスの学校とは『キャンディ・キャンディ』の中でキャンディがアメリカからイギリスに渡って暮らした規則の厳しい学校とその寄宿舎だったからだ。つまりレンガと鉄格子の壁に囲まれた学校にきちっとした制服、そしてそれを着崩したイケメンのことだ。

ひと息ついて見渡せば、私の学校以外は全て制服有りのレンガの建物。母の努力は認めるものの「何故こうなるかな…」と思ったものだ。とはいえ、制服を着崩したイケメンとイケてる女子は町にいっぱいいたので満足した。みんなあまりネクタイを締めるのが上手じゃないのか敢えてそうしているのか、なかなかの崩れ具合でかっこよかった。眼福。

服の乱れは心の乱れ、着崩してもシャツはパリッとしてたほうがいい?


その後、私が晴れて制服を着ることになったのは日本に帰ってきて通った地元の中学のそれだったのだが、あまりにも垢抜けない制服で着崩す価値もないほどであった。まず、上衣はハイネック。もはやシャツとも言えない。スカートは前にひとつしかタックのないタイトスカートともボックススカートとも言えないもの。どこをどうすればイケるのだろうか? そして当時の定番の長いスカートだが、どうして長いのがいいのかよくわからず、考えているうちにそのままずっと先生が思う好ましい学生の格好だった。なんとも残念な思春期だ。

一方、娘が制服を着崩すのは眼福とは言えない。でも、“ダメ” と拒絶するほどでもなく、“思春期キター!” 以上でも以下でもないというところ。冷静に大人の目で見れば、服の乱れは心の乱れだし。なので母はせっせとアイロンをかけるのだ。着崩してもシャツはパリッとしてたほうがいいよ。

そういえば、白いシャツと息子をテーマに記事(白シャツ男子と私の妄想、息子と彼とポール・ウェラー)を書いたことがあったな、と思い出し読み直してみると… やっぱり、いそいそと白シャツにアイロンかけてるではないか! 我ながらこの4年間、なにも進歩していないことに驚く。ここまでくると、もはや白いシャツとアイロンに取り憑かれているのでは(笑)。

白シャツといえば、オシャレ番長 今井美樹


さて、80年代の音楽シーンと白いシャツに思いを馳せたのだが、以前書いたようなジャム時代のポール・ウェラー以外あまりピンとくるものがなく困った。特に80年代は女性にとってカラフルな時代で襟があるような服よりもジャージー素材のものや肩パットが流行った。女生徒の制服というキーワードからも、どちらかというとセーラー服が好まれる時代だったのでたどり着くものがない。

私の理想としてはジョーン・ジェットやプリテンダーズのクリッシー・ハインドあたりが白いシャツを着崩しているイメージが欲しいんだけれど… 悩んだ挙句、今回は白いシャツに赤い口紅が印象的だったマニッシュさと女性らしさが同居するオシャレ番長の今井美樹に1票。

曲は80年代が終わろうという1989年にリリースされた「瞳がほほえむから」。“ナチュラル” という言葉が流行り出した頃だ。女性誌で白いシャツについて熱く語る今井美樹が眩しかった。お気に入りの白シャツをお持ちの人は幸いだと思う。私はやっと今年1枚見つけられた。死ぬまで大切に着られるといいな。

そして私はおそらく何年かの後、自分の顔のシワを伸ばすのは無理でもシャツなら! と言いながらその白シャツにいそいそとアイロンをかけていることだろう。脳みそのシワはますますなくなっていそうだが、楽しければ良しとしよう。

2020.08.28
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カタリベ
1969年生まれ
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