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浅香唯 インタビュー

第1回シンガー・浅香唯が今も歌いつづける理由


昨年行われた『デビュー35周年&Happy Birthday無観客配信ライブ』をBlue-rayで発売するアイドル四天王のひとり浅香唯。多忙を極めた80年代の半ばから90年代にかけての絶頂期を振り返りながら、今も現役のシンガーとして、コンスタントにライブ活動を続ける彼女にロングインタビュー。第1回目は、「シンガー・浅香唯が今も歌いつづける理由」と題して、その心情に迫ってみました。

― 去年行われた、『デビュー35周年&Happy Birthday無観客配信ライブ』がBlue-rayでリリースされるということで、僕も拝見しました。それで、歌を大事にされているなというのと、昔のヒット曲でも違和感がないなというのを強く感じました。でも、無観客という状況に最初は戸惑っているのを画面越しにも感じました。

たぶん、(配信は)もう無理かなって(笑)。緊張するのは分かっていたんですけど、あんなに緊張するものかと。想像を遥かに超えていまして、出来ることなら今すぐやめたいと。そのぐらい緊張しました。

― それは、お客さんがいたほうが安心するということですね。

もちろんそうです。

― ずっと観てくれているファンが観客のフロアにはいらっしゃったと思いますし、やはり浅香さんも知った顔がいっぱいいますよね。

ですし、普段のライブは、私が緊張することを知っている人もたくさんいて、みんな私の親みたいな感じで、「大丈夫だよ。大丈夫だよ」って見守ってくれているファンの人もたくさんいるので、そういう笑顔があると安心しますが、今回の配信はそれが全くなかったので、緊張のほぐしようがなかったという…。私の友達も観てくれて、「ただの緊張じゃなかったね」って、伝わっていたみたいです。

― すると、いつもライブを観てくれている人は、画面越しに「がんばれ、がんばれ」って思っていたに違いないですね。

そうだと思います。

― 毎年行われているバースデーライブは、どのような感じに進んでいくのですか。

私が過ごした1年の中で、こんな感じだったね… というテーマを決めて、そのテーマに合った曲を選曲して組み立てていくので、アコースティックな感じの時もあれば、激しいロック調の時もあります。

― 浅香さんの今が見えるということですね。

楽曲時代は80年代のものがメインになりますが、曲調によっては、ステージの雰囲気が当時とはガラリと変わってくるという。

― その雰囲気が毎年違うわけですね。去年はどんなテーマを考えましたか?

去年は、35周年だったので、ある意味集大成なところと、比較的皆さんの知っている浅香唯という部分もありました。

― ヒットしたシングル曲が多かったですよね。

はい。あとライザップもやっていたので、今まではお腹を出して歌うことは絶対なかったのですが、衣装もそういう冒険をしたりしました。

― ファンにはすごいプレゼントになりましたよね。

長年観てくれているファンの人たちはびっくりしていました。「腹出してきたー」みたいな(笑)

どの曲も私にとっては可愛い我が子

― 浅香さんは80年代終わり、90年代には、ライブでアルバム収録曲を多く演っていましたよね。それはご自身もヒット曲にはこだわらず… というスタンスがあったのですか?

そうですね。ヒット曲は絶対的に大事な曲であるんですけど、当時から私は、アルバム収録曲の中に「どれシングルにする?」ってホントに悩むくらい良い曲がたくさんあったんですよ。「これシングルにするから」って言われて作るのではなくて、候補としていろんな曲があがってきて、スタッフとの間で意見が割れてしまうことも多かったです。別にアルバムの楽曲という捉え方ではなく、こんなに良い曲あるんだよ!っていう意識があるのでそれを披露したいという思いが強かったですね。

― そこが良いところなんですよね。シンガー浅香唯としての。やはり、どうしても「C-Girl」、「セシル」という大ヒット曲が全面に出がちになってしまいますよね。だけど、他の楽曲に対してもヒット曲との区別がない感じで大事に歌ってらっしゃるのかなっていう。

そうですね。どの曲も私にとっては可愛い我が子で、出来が良い、出来が悪いは多少あるかもしれませんが、平等に可愛い子どもたちなので、これヒットしたからだとか、これアルバムの中の隠れた名曲だからとか、そういう差別は全くなかったですね。

― そうすると、アイドル時代にコンスタントにアルバムをリリースした時も、アルバム作りというのが、ご自身のお仕事の中でも大きなポイントだったんですね。

何かをしながらアルバムを作るというのが嫌というか、片手間な感じがして…。だからアルバムを作るときはこれだけに専念したと思っていました。制作の過程の中で音入れとか、私は立ち会う必要はないのですが、立ち会わせてもらったりして、そこには超一流の方たちが演奏してくださっていて、そういう自分のアルバムが出来上がっていく姿が見れるというのは、ただ単にアルバムがリリースされるというのではなく、私の魂が入っているぐらいの思いがありました。

― そうですよね。その中心に浅香さんがいて、それをいかに素晴らしい作品にするかというところで、ミュージシャンの方が集まって、エンジニアがいて、プロデューサーがいて… っていうところで、放ってはおけないとうことですよね。

それでスタジオに行って、何か注文をするか… っていえば、そういうのは全然ないんですけど、そこで得るものはたくさんあったので、ことさらアルバムの曲は、シングルの曲と変わらずに大事な曲だなぁ… っていうのはありますね。

― 忙しい時ですと、アルバムを作る中でテレビの出演があったり、ドラマがあったりだとか、そういうところで、スケジュールの調整も大変だったと思いますが。

そうですね。だから最初は、空いている時間に行くということだったのですが、でもできるだけ、アルバム制作の過程に参加したいという希望も周りのスタッフが叶えてくれたので、そこに時間を取ってくれたりだとか、時間を調整してくれたりだとか、そういうこともありました。

― 良いスタッフに恵まれていますね。

はい!

― 今まで浅香さんの話を聞いていると、ミュージシャンとかバンドの人の発想ですよね。

そうだと思います(笑)

― アイドルというと、楽曲リリース以外の仕事も含めての総合的な活動の場があると思いますが、ひとつの作品を作ることに全精神を抽入していくというところが、作品に表れていますよね。ひとつひとつのアルバムを聴いてみてもクオリティが非常に高いし、ご自身がノッているのが分かるので、それが、今もライブを続けている大きなモチベーションになっているのかなって思います。

そうですね。だからファンの人たちにも新曲が出るわけでもなく、新しいアルバムを作るわけでもなく、よくここまでずっとやってこられてるよね… って。

― コンスタントにライブを重ねるというのは、そんなに簡単なことではないですよね。

どこかで行き詰ったり、立ち止まったり、迷うことがあると思うんですよ。このまま、同じことやってていいのっていう。でも去年演った「C-Girl」よりも今年は絶対違うものというのは確信しているので、だから続けられるのかな… っていうのはありますね。

― 楽曲も生き物というか生命力があると思います。こういう風に話を聞いていると、続けている意味が見えてきますね。単なる同窓会的なライブではないですものね。

全然、全然。

少女に憑依して歌った「ヤッパシ…H!」

― 今の浅香唯を見てもらおうという強い気持ちを感じることができます。そうやって歌い続けてきて、アイドル時代の歌手・浅香唯と、今の歌手・浅香唯で、変わっていった部分と変わらない部分があると思いますが?

どうなんでしょう? 私の中では歌に対する気持ちは変わってないと思います。でも、年齢を重ねるごとに詞の内容を考えるようにはなってきています。あと、人生を重ねてきた経験値が、逆に邪魔をするときがあります。

― 当時真っ白で歌えたほうが良かったということですか?

そうそう。余計なこと考えなかったし。歌詞の真意が分からないなと感じながら歌っていたところもありますが、大人になって色々考えて感じたりするようになって、ん、ん… って思うところはありますね

―「ヤッパシ…H!」とか?

あはは(爆笑)

― ああいう楽曲というのは十代の女の子が主人公で、それを今の自分が歌うっていうことで歌詞の深い意味を今どうやってアピールしていくかっていうところもありますよね。

でも「ヤッパシ…H!」っていう歌詞には、そんなに深いところよりも、恋に対する恋愛に対する興味とか、ワクワクとかドキドキとかそういう少女の可愛い気持ちを「ヤッパシ…H!」というフレーズに乗せていると思っていたので。これ、大人になるごとに抵抗がないと言えばウソになるんですよ。抵抗は正直あったし、途中で歌うのを辞めようかなって考えた時もありました。恥ずかしくてね。でも逆に今は、憑依してやろう、演じてやろうっていう、今の年齢の私が「ヤッパシ…H!」を歌った時にふざけているのではなく、少女に憑依してみよう… みたいな。そういう思いがあります。

― それって当時からのファンにしてみたらすごいことですよね。嬉しいですよね。今の浅香さんが憑依されるということは、今の気持ちが反映されている部分あるわけすよね。

そうですね(笑)。「ヤッパシ…H!」とかは、やはりみんなが待ってました!という感じで歓迎してくれるので、迷いながらでも歌い続けてよかったなと思いますし、これまでは年齢にこだわって、この曲は今の私に合うのかな? なんて考えていた時期もありましたが、今は変に拘らなくてもよかったんだな… と思えるようになってきました。

― 1990年に一度歌手宣言をなされますよね。

はい。

― そこからずっとコンスタントにライブを演っていく中で、そういった心情の変化は何度もありましたか?

ベースは変わっていないと思いますが、でも毎年毎年やるごとに必ず、その時に自分が思い描いたライブが出来るかと言えばそうではないんです。あぁこうすればよかった、ああすればよかった… というところが、次に繋がっていくというか、絶対に次はこうしてやろうという、そういう未完成という形で必ずライブが終わっていたので、そこは、よし! やりきった! 100%完璧! という状態があったら、ライブを続けていなかったかもしれないです。

― なるほど。課題は残るわけですね。それにその課題をクリアしても、また新たな発見があったりとかという…

そうです。それが毎回続いているような感じですね。

― それが続けられる秘訣のひとつですね。

でもあるんだと思います。

“アイドル浅香唯”という形を崩さないのが私の使命

― ファンからの意見もダイレクトにきますよね。

うん。きます。きます。私のライブってそんなにフリーなのかなって(笑)。みんな自由だな… って思います。普通にしゃべりかけてくるし、それがハッキリ聞こえてくると、拾わずにはいられない… みたいなところもあって、それがライブの良さでもあるので、ふざけたこと言ってくる人は完全に無視することもあります(笑)。「無視ね(笑)」って言ったり。その辺も含めてファンの方々とのコミュニケーションを楽しもうと思っています。

― そういう長年のファンは浅香さんにとってどんな存在ですか?

そうだなあ。簡単に一言では言い表せないぐらい、お互いにいろいろな経験をしていろいろな人生を歩んできている中で、思いが変わらないわけじゃないですか。別にファンになるというのは、ひとりじゃなくてもいいと思うですよ。この人も好きだけど、この人も好き… みたいな。それで全然構わないと思いますが、私のファンの人たちって、真面目な人が多いんだな… っていうところで、お手紙やメールで知るところだと、一途に私のことを応援してくれるんだな… って人がたくさんいるので、その人たちを絶対裏切ってはいけないという気持ちが強くあります。逆にあの人もこの人もっていう、その中のひとりだったら私も柔軟に考えられたのかもしれない。でもみんなの思いが届いている分、“アイドル浅香唯” という形を壊さないでいるのが私の使命だと思っています。その人たちが芯になって支えてくれているわけですから、絶対にブレないぞ! ブレない浅香唯でいよう! みたいに思わせてくれる存在です。

アイドル、そしてシンガーとしての浅香唯の今の気持ち、そして、ファンへの熱い思いについて真摯答えてくれた浅香さん。絶頂期と変わらないチャーミングさに加え、ひとつひとつの質問を真正面から受け止め、丁寧に答えてくれるその姿は、素敵な大人の女性でもありました。


<次回予告:6月24日(木)掲載予定>
次回第2回は、絶頂期のアイドル時代を振り返り、上京、デビュー時期の心情や、『スケバン刑事』のエピソードなども含めたっぷり語ってもらっています。

インタビュー・文章:本田隆(ライター/リマインダー)

INFORMATION

▶ YouTube 生配信決定!
日時:6月23日(水)19:00〜
Blu-ray発売記念 浅香唯YouTubeチャンネルにて生配信トークライブ

▶ タワーレコード新宿店にて浅香唯ライヴ衣装展示&パネル展決定!
期間:6/22(火)〜 7/4(日)
場所:タワーレコード新宿店
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