4月1日

オマージュやパロディを超越、XTCの変名バンドは気合入りすぎ!

17
1
 
 この日何の日? 
ザ・デュークス・オブ・ストラトスフィアのシングル「25 オクロック 」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1985年のコラム 
夏はネオアコ!地味な夫婦デュオ「EBTG」がつくるちょうどいい清涼感

長州力のパワーホール、革命に酔い、心がざわめく圧倒的インパクト!

聴き惚れたホルンの音色、ストロベリー・スウィッチブレイド礼賛

朝ドラで殺人事件発生!「澪つくし」の衝撃展開… ジェームス三木にはめられた?

公共放送によるロックバンド養成番組!NHK教育「趣味講座 ベストサウンド」

中森明菜の豪華アルバム!井上陽水から吉田美奈子まで個性派アーティストが参加

もっとみる≫



photo:Discogs  

アルバムを何枚も出して、人気も安定しているバンドが本来のバンド活動を一時的に休止してメンバーのソロプロジェクトやサイドプロジェクトを始動したりすることは珍しくありません。80年代ならデュラン・デュランのメンバーによるパワー・ステーション、アーケイディアやフィル・コリンズのソロ活動時にマイク&ザ・メカニックスがそれに負けないヒットを飛ばしていたことも思い出します。

メンバーはそのままなのにバンド名を変えて覆面プロジェクト的に作品をリリースする場合もあります。それはカヴァー企画やクリスマスシングルをリリースする際だったりします。

しかし、ここに紹介するXTCの変名バンドはとてつもなく気合の入ったものになりました。その名は、ザ・デュークス・オブ・ストラトスフィア(The Dukes Of Stratosphear)。訳すと「成層圏の公爵たち」とでもいいましょうか。

85年に突如6曲入りEP『25 オクロック(25 O'clock)』を発表、当初どこまでXTCという正体を隠そうとしていたかは不明ですが、音を聴けばバレバレであることは定かでした。ただモロに60年代末頃のサイケデリックロックに影響を受けたというか、それを再構築したサウンドは、XTCの作品として発表するには無理があるというもの。

メンバーやプロデューサーの名前も架空の名前で表記されました。ちなみにアンディ・パートリッジは、サー・ジョン・ジョンズ。コリン・ムールディングは、レッド・カーテン。プロデューサーのジョン・レッキーは、スワミ・アーナンド・ナガラなどなど(笑)。

ファンや評論家にも予想以上に受け入れられ、XTCとしてのアルバム『スカイラーキング』を挟んだ後、87年にザ・デュークス・オブ・ストラトスフィアとしてフルアルバム『Pソニック・Pサンスポット(Psonic Psunspot)』を発表します。内容は『25 オクロック』をさらにポップに深化させたもので決して “お遊び” とか “企画モノ” とは言わせない、とてつもなく完成度の高い作品になりました。

ただやっぱり本家XTCと違うのは、ネタ元が割とはっきりしているということ。メンバーがいくつか明かしてもいます。

ビートルズやビーチ・ボーイズ、初期ピンク・フロイドやバーズ、ホリーズといったメジャーどころからエレクトリック・プルーンズやブルー・チアー、カウント・ファイヴ、ムーヴなどマニアックなものまで攻めまくってます。それでいてオリジナリティとアルバムの整合性がしっかりしているところはさすがです。

さらに『25 オクロック』収録の「ザ・モール・フロム・ザ・ミニストリー」のミュージックビデオはビートルズのTV映画『マジカル・ミステリー・ツアー』のオマージュともいえる内容。雰囲気満点のジャケットもすべてアンディ・パートリッジが手掛け、抜かりはありません。

自分たちの趣味をまる出しにしたと言えばそれまでかもしれませんが、このザ・デュークス・オブ・ストラトスフィアの作品には、パロディとか課外活動といったものを超越した一流ミュージシャンの意地みたいなものを感じずにはいられません。

XTCよりこっちのほうが好きという人もいるくらいですから、XTCとしてはこのリリース程度でとどめたのは正解だったかもしれません。

しかし今、アンディさんは「XTCとしての活動はこの先あり得ない」とまで公言しているので、「ここらでまたザ・デュークス・オブ・ストラトスフィアを」と提言させていただきたい所存です。

2017.09.20
17
  YouTube / Nick Kennerley


  YouTube / egidio sabbadini
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1968年生まれ
DR.ENO
コラムリスト≫
125
1
9
8
2
高見沢俊彦の飽くなき好奇心!80年代が育んだ比類なきギターヒーロー
カタリベ / 中塚 一晶
16
1
9
8
5
19年ぶりに武道館で響いた “レノン” の「デイ・トリッパー」!
カタリベ / 宮木 宣嗣
33
1
9
8
6
ウルフマン・ジャックと青春のひとコマ、僕らの夏は終わらない
カタリベ / 本田 隆
69
1
9
8
1
大事なことはだいたい坂本龍一の「サウンドストリート」に教えてもらった
カタリベ / 上村 彰子
14
1
9
8
0
1980年12月8日以降のジョン・レノン【フィクション】もし彼が2023年に生きていたら
カタリベ / 岡田 ヒロシ
36
1
9
8
5
ビートルズのいない80年代、そこにはニック・ロウがいた!
カタリベ / ソウマ マナブ