10月6日

GWに観たい3時間超え映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の見どころは?

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ゴールデンウィークに観たい3時間超えの映画 - vol.2「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」

巨匠セルジオ・レオーネの遺作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」


リマインダー世代、つまり80年代に多感な時期を過ごした世代にとって、最高のギャング映画は何だろう? 『ゴッドファーザー』(1972年)や『ゴッドファーザー PARTⅡ』(1974年)は確かに神がかり的に面白いが、この世代がスクリーンで興奮を味わうには公開が早すぎた。アラン・ドロンがメチャクチャかっこいい『シシリアン』(1969年)や『ボルサリーノ』(1970年)もしかり。ここら辺の作品は筆者もテレビ放映でふれたのが初鑑賞体験で、ひと世代上の映画という印象がある。

では、80年代を代表するギャング映画を選ぶとなると、これは迷う。ブライアン・デ・パルマ監督による2作『スカーフェイス』(1983年)と『アンタッチャブル』(1987年)は、それぞれ異なる味があり、甲乙つけがたいが、ノンビリできるゴールデンウィークに観るなら3時間以上の超大作… ということで、ここは巨匠セルジオ・レオーネの遺作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)を推させていただきたい。

複数のバージョンが存在する「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」


そもそもギャング映画は長尺の作品が多い。先に挙げた作品は『アンタッチャブル』を除けば2時間を超える大作で、『ゴッドファーザー PARTⅡ』は3時間20分もあり、テレビ放映時は前後編に分けて放映された。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』が初めて日本公開されたときのバージョンは、これを越える3時間25分。本作には他に複数のバージョンが存在するが、現段階でもっとも目にするのは、生前にレオーネが編集した3時間49分の “完全版” だろう。いずれにしても長尺だが、とにかく見応えがある。

主な舞台は1920年代初頭から1933年まで、そして1968年のニューヨーク、ブロンクス。ユダヤ系の少年たちが禁酒法下のギャングの世界に飛び込み、酒の密売でのし上がり、失墜し、その後どうなっていったのかを描いている。とはいえ単純な年代記ではなくて、時代を錯綜する『オッペンハイマー』(2023年)的な構成。さまざまな伏線が張り巡らされながら物語が進行する点も『オッペンハイマー』と似ている。

若さゆえの激しい感情が荒々しくもみずみずしい、青春ドラマのような味わい


ロバート・デ・ニーロ扮する主人公ヌードルスはユダヤ系少年のひとりで、1920年代にこの裏社会で成り上がった。禁酒法が終わり、儲けがなくなったことで、連邦準備銀行の襲撃という無謀な計画を立てた仲間たち。その命を救おうとして、ヌードルスは警察に密告するという手段を取る。しかし仲間は警官隊に応戦して命を落とし、ヌードルスも身の危険を察して街から姿を消す。35年後、彼は当時の彼を知る謎の人物からの連絡を受け、久しぶりにニューヨークに戻り、そこで意外な事実を知らされる。



このミステリーが観客を引き寄せる一貫した筋となっているので、長尺とはいえ決して退屈することはない。少年時代のヌードルスは貧しさから脱したい一心で仲間と悪事に手を染め、恋心に揺れる。怖いもの知らずゆえ、マフィアのボスに歯向かい敵を倒して、のし上がる。そんな若さゆえの激しい感情が荒々しくもみずみずしい。これが1920年代初頭から1933年までの物語には、そんな青春ドラマのような味わいが宿る。

夢を見ているような不思議な感情、それこそがこの映画の豊潤さ


一方、1968年の老ニードルスは、過去の良き思い出のノスタルジーを体現しつつ、ミステリーの真実に迫っていく。かつて暗黒街でさんざん悪さをしてきた身なのだから、復讐されてもおかしくないし、慎重にならざるをえない。そして少しずつ明かされていく、この間に起きた驚くべき事実。ネタバレは避けるが、それが明かされたときの切なくも悲しく、それでいて夢を見ているような不思議な感情は、うまく説明できない。裏を返せば、それこそがこの映画の豊潤さでもある。

『ゴッドファーザー』もそうだが、優れたギャング映画には、残酷な描写と対を成す美しい映像と音楽がある。本作も同様だ。ブロンクスの目抜き通りの賑わいを斜め上からとらえたショットや、少年の低い目線からとらえたビルや鉄橋。立ち上る蒸気や煙、霧がおとぎ話のようなムードを醸し出し、猥雑な世界のなかにほんのりと幻想美を宿す。

映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネによる流麗な音楽はもちろんだが、彼のアレンジによって現代に蘇った名曲「アマポーラ」は、本作を印象付けるナンバーでもある。劇中では少年期のヌードルスが、壁の穴から隣室を覗き見て、そこでダンスの練習をしている憧れの美少女デボラ(これがデビュー作となったジェニファー・コネリーの可憐さといったら!)の姿に重なる。このナンバーは日本公開時、沢田研二によるカバーバージョンも発売されヒットしたので、そちらで記憶している方も多いのでは?

1984年10月6日に日本公開された際、本作は鳴り物入りの大作としてアピールされた。有楽町マリオンの開館記念作として、同ビル内にある東宝洋画系映画館のメイン館である日本劇場のこけら落とし作品となったことが、それをよく表している。当時、田舎住まいの受験生だった筆者は上京後に名画座で初めて見たが、こんなにも美しく切ないギャング映画は新鮮だった。できるだけ大きい画面で、じっくり向き合っていただきたい。

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2024.04.28
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カタリベ
1966年生まれ
ソウママナブ
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カタリベ / ミゾロギ・ ダイスケ