戦争による傷跡も癒えはじめ、日本の生活習慣も大きく変化していった高度成長期 ― 1966年に僕は生まれました。そう、ビートルズが来日した年であり、今なお続く『笑点』が始まった年でもあります。
もちろん戦争に関する記憶などありません。子供の頃、祖父母から当時の話を聞いたり、たまに出向く上野や浅草で傷痍軍人が物乞いをしている姿を見たことはありましたが、僕の身近にあった戦争は交通戦争や受験戦争といったもの。
でも、いま改めて歳月を見直してみると、1966年って太平洋戦争の敗戦からたったの20年しか経っていないんですよね。
そして、その敗戦から35年の時を経て1980年代は幕を開けます。奇しくも昭和のラストディケイドと重なるこの時期は、自分にとっても14歳から23歳という極めて多感な時期を過ごしたタイミング。今にして思うと、そんな時代の共有こそが究極の成功体験なんじゃないかと思う瞬間もあります。
いやいや、「あの頃はよかった」なんてことが言いたいわけではありません。
客観的に見て、80年代という時代は敗戦からの試行錯誤が一斉に花を咲かせた10年で、様々な業界における大きな到達点。この時代に生まれ(または輸入され)、今なお残っている商品やサービスは数多く存在しています。ことサービス産業やエンタテインメント産業においては、ほぼ全てがこの10年の間に実を結び、以降は改善や改良は加えられど「本質は何も変わってない」といっても過言ではないでしょう。
唯一無かったものといえばネット環境ですが、普及こそしてなかったものの、通信プロトコルがTCP/IPへ切り替えられ、今日インターネットと呼ばれているネットワークが起動したのでさえ80年代(1983年)なんです。
つまり、90年代以降は何も新しいものが産まれていないのでなはいか? そして、それを産み出せなかったのは、80年代という時代を思いっきり享受した自分の怠惰なのではないか? なーんて、ちょっとした自身への問いかけがリマインダーを始めようと思ったきっかけの1つでした。
もちろん、どんな時代にも新しいものなんて無いのかもしれません。連綿と連なる歴史にオマージュやリスペクトを積み重ねることがクリエイティブだってことも知っています。ただ、敗戦から80年代が始まるまでの30余年と、80年代から現在に繋がる30余年、この時間がどうしても均一だとは思えないのです。
―― 80年代に何が起こり、何を失って何を得たのでしょう。いまを取り巻く様々な問題を解く鍵=ヒントは、そのほとんどがこの時代にあると僕は思っています。
新しい時代を切り拓くためにとか、そんな大仰な目標はありません。ノスタルジーに浸るつもりも全くありません。ただ、昨今の大きな変化を目の当たりにすると、こんな <場所> があっても面白いんじゃないかなって。だからあまりかしこまらず、音楽をベースに終わりなきジクソーパズルを楽しみたいと思ってます。
さて、そんなリマインダーがβ版の運用を始めたのが、2015年の12月23日。次のクリスマスには3年目に突入します。ここまで続けることができたのも、スタッフ、カタリベの方々、そして何よりも日々訪れてくれる皆さんのおかげです。改めてお礼を述べさせていただくと共に、これからもご贔屓に。
ホントありがとうございます!
最後に… 80年代の空気をめいっぱい吸い込んだ1990年、世界最高のロックンロール・バンドが発表したこの曲をお届けしましょう。―― 大人だろ?
空がまた暗くなる / RCサクセション
作詞・作曲:忌野清志郎
2017.12.11
YouTube / woodisl