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ブライアン・セッツァーはロカビリーの天才だ。そこに疑いの余地はない

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photo:SonyMusic  

ブライアン・セッツァーはロカビリーの天才だ。そこに疑いの余地はない。

かつてポール・マッカートニーがこんなことを言っている。「一番難しいのは本当のロックンロールを書くことなんだ。あの雰囲気がなかなか出せないんだよ。僕の曲だとアイム・ダウンかな。あれは割とうまくいったと思う」。

ポールが言うところの本当のロックンロールとは、初期のエルヴィス・プレスリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード、バディ・ホリー、エディ・コクランといったロックンロールのオリジネイター達の曲のことだ。つまり、それらに比べたら、洗練された曲を書く方が簡単だと言っているのだ。

なんとなくだが、それは僕にもわかる気がする。あのどこまでが冗談でどこからが本気なんだかわからない、ロックンロールのいかれ具合やみずみずしさを体現するには、技術を超えた何かが必要なのだろう。その何かとは学んで身につくものではなく、持って生まれた資質なのかもしれない。

ブライアン・セッツァーにはそれがある。ジョン・フォガティやデイヴ・エドモンズと同じように。

僕がロックを聴き始めた80年代初頭、ネオロカビリーというムーヴメントがあって、その中心にいたのがストレイ・キャッツだった。メンバーは、ブライアン・セッツァー(G,Vo)、リー・ロッカー(B)、スリム・ジム・ファントム(Dr)。

ロカビリーという音楽は、とかく隔世の感がつきまといやすい。純度の高い音楽だし、強固なスタイルが変化を拒むのか、時代の中で蘇生や再生がされにくいところがある。

でも、ストレイ・キャッツは違った。リーゼントにレザーファッション。25年前に流行ったロカビリースタイルの曲を演奏していたが、少しも古さを感じなかった。性急なビートと吐き出される熱量によって、彼らはロカビリーの間口を押し広げ、ノスタルジーを一掃し、中学生だった僕にもわかる容易さで、その楽しさを教えてくれたのだ。

そして、なにより曲が良かった。「ロック・ディス・タウン」、「ストレイ・キャット・ストラット」、「ラナウェイ・ボーイズ」、「セクシー&セブンティーン」等々、どの曲にも初期のロックンロールに宿るピュアな興奮が詰まっていた。

つまり、80年代初頭において、ロカビリーは最新のエキサイティングな音楽だったのだ。その期間は短かったけれど、後々に与えた影響は計り知れない。今も世界中で新しいロカビリーバンドが産声を上げているのだから。

では、もしストレイ・キャッツがいなかったら、ネオロカビリーはあれほどの広がりをもったブームになり得ただろうか? 僕にはそうは思えない。

古い音楽をそのまま演奏することは、努力すれば誰にでもできるだろう。しかし、そこに新しい息吹を与え、時代の空気に馴染ませることができる人は、それほど多くない。ブライアン・セッツァーが仲間とともにやったのは、そういうことだし、世界的なレベルでそれができたのは、おそらく彼らだけなのだ。それだけ稀有な存在だったのだと思う。

そして、ストレイ・キャッツ解散から数年後、ブライアンはビッグバンドを結成し、ロカビリーを大きくスウィングさせることになる。ブライアン・セッツァー・オーケストラの誕生だ。このバンドが今度はネオ・スウィング・ブームを牽引することになるのだから、まったく恐れ入る。

2003年の来日公演、愛器であるグレッチを高々とかかげ「グレッチギター」とつぶやいたブライアン・セッツァーはかっこよかった。表現の幅は広がっても、この人はあの頃と何も変わっていないのだなと思った。そのことはブライアンが奏でるギターのトーンが、なによりも雄弁に物語っていた。

2018.04.10
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  YouTube / debandana
 

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カタリベ
1970年生まれ
宮井章裕
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