40年以上にも渡るキャリアの中、未だ日本で高い人気を誇るスコーピオンズ。2010年からのフェアウェルツアー中に引退宣言を撤回、さらには「永遠」に活動を続ける意思表示ともいえる最新作『祝杯の蠍団 リターン・トゥ・フォエヴァー』まで発表。ますます意気盛んだ。 80年代はスコーピオンズにとって最も成功した時代だが、とりわけ日本で評価が高いのは70年代の「仙人」ウリ・ジョン・ロート参加時期だ。 歴代最高のリードギタリストといえばウリという評価が大勢の中、3代目のマティアス・ヤプスはどうだろう。彼はリードギタリストとして最も在籍期間が長いのに、その功績の多くは語られず、むしろ過小評価され続けてきたように思う。 マティアスはウリの後任として『ラヴドライヴ』のタイミングで加入するも、ほどなくしてバンドは初代リードギタリスト、「神」マイケル・シェンカーを呼び戻してしまう。マティアスは正式メンバーか否か曖昧なまま、今度はマイケルがツアー中に再度失踪したことで、リードギタリストとして活動を開始することになる。 「神」や「仙人」の後釜として荷が重かったのか、マティアスが全編で正式参加した1作目『電獣〜アニマル・マグネティズム』では特筆すべき点は正直なかった。彼が本領発揮したのは、僕にとってのスコーピオンズの最高傑作である82年発表の『蠍魔宮〜ブラックアウト』だ。 水を得た魚の如く、縦横無尽に曲中の随所に挿入されるオブリガードのセンスがとにかく抜群に恰好よい。楽曲にマッチしたコンパクトなソロ旋律をふんだんに盛り込むという、ウリやマイケルとは全く異なる彼独自の方法論を確立して見せたのだ。 結果、全米10位と大ヒットを記録。さらに畳みかけるように84年の『禁断の刺青(Love at First Sting)』でスコーピオンズは大きな成功を手にする。ロックアンセムとなった「ハリケーン (Rock You Like a Hurricane)」は彼ら最大のヒット曲となり、マティアスが奏でたイントロ、ソロでの印象的な旋律は、メタル史に残る名演のひとつと言っていいだろう。 振り返ると、マティアス加入がもたらしたメリットは大きかった。まず、スタープレイヤーが抜けた事で、バンド全体のバランスが良くなり、1対4でなく、初めて5人均等になった。 ウリ時代は曲によってクラウス・マイネを差し置き、ウリがヴォーカルを担当する場面があったが、クラウスが全編でヴォーカルを取ることで、その力量の高さと豊かな個性が改めてフィーチャーされた。 また、ルドルフのリズムカッティングの妙も活きるようになり、そのルドルフを中心とした各メンバーの楽曲がフィーチャーされるようになったのも大きいだろう。 ライヴにおいても躍動的なマティアスが加わったことで、フォーメーションを活かしたお馴染みの組体操の如きパフォーマンスに代表される、より魅せるライヴを提供し全世界を席巻していった。 マティアス加入によるバンド内のさまざまな変化と80年代を支えた彼自身の頑張りがスコーピオンズを世界レベルに押し上げ、今「永遠」の存在となる大きな原動力のひとつとなったのだ。「マティアス・ヤプス」こそ、スコーピオンズを代表するリードギタリストだと今こそ認めようではないか。
2017.07.14
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