11月1日

アメリカンハードロックの元気印!ナイト・レンジャー「緊急指令N.R.」

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ナイト・レンジャーのデビューアルバム「緊急指令N.R.」がリリースされた日
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photo:nightranger.com  

今日2018年4月24日は、アメリカンハードロックバンド、ナイト・レンジャーのジャック・ブレイズ、64回目の誕生日。

実は僕がレコード会社の制作ディレクターの頃、縁あってジャックとケリー・ケイギーのソロとナイト・レンジャーを3年ほど担当していた。そんな事情もあり、とりわけ思い入れの深いバンドのひとつだ。

彼らのデビューは82年だが、その斬新なバンドスタイルは多くのニューカマーが登場した当時の HM/HR シーンにおいても、新時代の到来を予感させる匂いを充満させていた。そのキーワードは、ある種の発明ともいえる、幾つかの「対比」だった。

まず、ブラッド・ギルス、ジェフ・ワトソンという2人の優れたリードギタリストの対比だ。ブラッドは赤のストラトキャスターを愛用し、ド派手なアーミングを駆使。トリッキーな効果音の数々を繰り出した。一方のジェフはゴールドのレスポールを愛用し、金属製のピックで全ての音符をフルピッキングする超絶な速弾きを披露。さらに、8本指のタッピング奏法を生み出し、ギターキッズの度肝を抜いた。

この2人が時にスリリングに掛け合い、時に絶妙にハモってバリエーション豊かにフレーズを紡いでいく。高度な技量を持つ異なるスタイルのリードギタリストが、お互いを対比させて最新のプレイを駆使するのだからたまらない。

そして、ジャック・ブレイズ、ケリー・ケイギーという2人のリードヴォーカリストの対比も重要なポイントだ。それぞれが楽器を兼任しながら選任ヴォーカリストの如く歌える強みは大きく、美しいコーラスワークも難なくこなす。主にロック系のナンバーはジャック、バラード系はケリーが担当することで、大きな振り幅のある楽曲の対比にもつながったのだ。

そうした「対比」はライヴにおいても視覚的に表現されている。本来ステージ中央にあるドラムが最も上手に位置し、5人のメンバーが平行に並び中央の3人が縦横無尽に動く様は、これぞナイト・レンジャー! といえるトレードマークになった。

全米チャートを席巻した「シスター・クリスチャン」や「クローズ・ユア・アイズ(When You Close Your Eyes)」等に代表される、80sの洋楽ポップソングに引けをとらない優れたメロディセンスと、「炎の彼方(Don't Tell Me You Love Me)」等で炸裂する、うるさ型のロックファンをも唸らせる群を抜くテクニック。この両方を兼ね備えた極上のアメリカンハードロックは、いい意味で計算し尽くされた「対比」から生み出された産物である。

その結果、ナイト・レンジャーの音楽は、HM/HR ファンのみならず多くのロック・ポップスファンの心をも捉えたのだ。

個人的には、ジャックと一緒に仕事をさせてもらう機会が多くエピソードも色々あるが、特に印象に残っているのは彼がソロとしてプロモーション来日した際に、宿泊先のホテルで2人だけで話し込んだ時のことだ。

当時担当していた彼のソロだけでなく、活動休止中だったナイト・レンジャー本体の新作をぜひ制作してほしい、と駄目元で直訴してみたのだ。彼は日本のファンが望んでいるのなら、とその願いを受け止めてくれ、それから2年後、その当時で9年ぶりの新作リリースが実現したのだった。その頃からナイト・レンジャーへの再評価機運も高まり、今に至るまで数枚のアルバムをリリースし、ライヴ活動もコンスタントに行っている。あの日話した事が活動再開への足がかりに少しでも繋がったようで、何だか嬉しく思う。

ジャックは普段から屈託のない笑みを浮かべて、周囲をパッと明るくさせる素敵なキャラクターの持ち主。圧倒的に楽しくエンタテインメントに満ちた彼らのライヴは、ジャックやメンバーの人柄を現しているかのようだ。

あの時代から色褪せることなく僕らに元気や感動を与えてくれる数々の楽曲とともに、ナイト・レンジャーにはこれからもずっと、名曲「ロック・イン・アメリカ」ならぬ「世界中でロック」し続けてほしい。

2018.04.24
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   NightRangerVEVO


  YouTube / 1984fandango
 

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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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