1996年、靴下を履かない種族によって「不倫は文化」であると認定された。遡ること1983年には曜日を限定した不倫、『金曜日の妻たちへ』というテレビドラマが大ヒットを飛ばし、ここ数年は破壊力抜群の週刊誌がドカンドカンと不倫砲を発射し続けている。
陸の上ではクジャクが美しい羽を広げてアピールし、海の中でもシロナガスクジラがフェロモンを出しまくっており、人間界のみならず動物界でも至る所で不倫が行われている。
もうあっちこっちで「Romanticが止まらない」(C-C-B / 1985)のである。
目を海外に向けると、白亜の御殿で葉巻を使って不適切な関係をしてしまったお偉いさんが、カミさんからがっつり大目玉を食らっていたのが記憶に残る。それまで順風満帆に航海していた船が一瞬で「難破船」(中森明菜 / 1987)になってしまった事例である。
転じて国内では “一線は越えていない” という先生が「時の流れに身をまかせ」(テレサ・テン / 1986)見事に当選していた。
さて私の大学時代にも妻子ある男と不倫をしていた同級生がいたが、その子が醸し出している雰囲気は大人の哀愁とでも言うのだろうか、同い年なのにどこかアンニュイな感じで、廻りのチャラチャラした女子大生とは一線を画した感じであった。それがまた彼女の魅力を増していたように思う。
1985年に『金曜日の妻たちへⅢ』の主題歌となった小林明子の「恋におちて-Fall in love-」の一節に、「土曜の夜と日曜の貴方がいつも欲しいから ダイヤル回して 手を止めた」という、2番手ゆえの何ともフォローのしようがない切なさがあふれた歌詞がある。
ちなみに当時はまだ週休二日制が定着していなかったので、現代で言えば金曜の夜及び土日ということになるのだが。
1986年に発売された久保田利伸の「Missing」には、「叶わないものならば いっそ忘れたいのに」「届かないものならば 見つめかえさないのに」「僕だけの君ならば この道をかけだして 逢いに行きたい」という分別のある2番手の苦悩が歌われている。
どうして人は1番じゃないのに恋をするのだろうか。
蓮舫議員が言う「2番じゃダメなんですか?」とは意味が違う。
きっとそこには本人にしか分からない甘美と苦悩が折混ざった唯一無二の世界があるのだろう。
残念ながら私のように不倫と縁遠い人間にはその苦悩は分からないが、これだけ哀しい恋の歌があるのだから、さぞや世間では……、と思ってしまうのは私だけだろうか。
歌詞引用:
恋におちて / 小林明子
Missing / 久保田利伸
2017.11.08
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