3月31日

みゆき、タッチ、陽あたり良好!【80年代アニメソング総選挙】あだち充の時代がやってきた

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 1983年のコラム 
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リレー連載【80年代アニメソング総選挙】vol.8

“ひとつ屋根の下” “三角関係” “野球部” ――あだち漫画の三大要素


80年代は、あだち充の時代だった。

思いつくままに、当時のあだち先生の作品を挙げると――『みゆき』『タッチ』『陽あたり良好!』『ナイン』『スローステップ』『ラフ』―― etc。こう言ってはなんだが、どれも世界観がよく似ている。大抵、高校生の男女がひとつ屋根の下で暮らし、三角関係が描かれ、よく野球部が舞台になる。そう、“ひとつ屋根の下” “三角関係” “野球部” ―― あだち漫画の三大要素である。加えて、登場人物たちの顔もよく似ている。こちらは作者自ら “あだち一座” と自嘲する。

先ごろ、糸井重里サンが主宰する『ほぼ日』に、たまたま糸井サン(昨年初めて『タッチ』を読んで、その面白さに気づいたという羨ましい御仁である)と、あだち充先生の対談記事があった。その中で、あだち先生が自身の漫画家人生を振り返り、こう表現していたのが印象的だった。

「だからなぜウケたのか、じぶんでもよくわからないんです。時代としか言いようがないんですけどね。(中略)とてもありがたい時代というか、日の当たった時代が非常によかった。それまでぼくはずーっと日陰で、10年くらいくすぶってましたから」



一躍脚光を浴びたのが「みゆき」


あだち先生の漫画家デビューは、高校を卒業した翌年、19歳の時である。とはいえ、そこから10年ほどは、漫画『男どアホウ甲子園』の原作で知られる佐々木守先生を始め、原作者のいる作品で作画を担当していたという。本人曰く “くすぶっていた10年” と。それが28歳の時、突如自我に目覚めてオリジナルを描き始める。高校野球を描いた『ナイン』である。そして一躍脚光を浴びたのが、その2年後の80年9月に連載を始めた『みゆき』だった。

かくして80年代―― あだち先生は時代の顔になる。『みゆき』の次に発表した『タッチ』は、前作を上回る人気を博し、その余波で『みゆき』以前に描かれた作品も脚光を浴びる。それら一連の作品は次々にアニメ化・実写ドラマ化・映画化され、いわゆるメディアミックスで社会現象に。このあたり、1つのネタを何度も “コスる” やり方が実に80年代っぽい。一連の作品を時系列に並べると――

▶︎1978年10月『ナイン』連載開始(少年サンデー)~80年11月

▶︎1980年1月『陽あたり良好!』連載開始(週刊少女コミック)~81年7月

▶︎1980年9月『みゆき』連載開始(少年ビッグコミック)~84年9月

▶︎1981年8月『タッチ』連載開始(週刊少年サンデー)~86年11月

▶︎1982年3月『陽あたり良好!』実写ドラマ化(日本テレビ系)~82年9月

▶︎1983年3月『みゆき』アニメ化(フジテレビ系)~84年4月

▶︎1983年5月『ナイン』単発アニメ(フジテレビ系)

▶︎1983年9月 劇場版(アニメ)『ナイン』公開(監督:杉井ギサブロー)

▶︎1983年9月 劇場版(実写)『みゆき』公開(監督:井筒和幸)

▶︎1983年12月『ナイン2』単発アニメ(フジテレビ系)

▶︎1984年9月『ナイン完結編』単発アニメ(フジテレビ系)

▶︎1985年3月『タッチ』アニメ化(フジテレビ系)~87年3月

▶︎1986年4月 劇場版(アニメ)『タッチ 背番号のないエース』公開(監督:杉井ギサブロー)

▶︎1986年8月『みゆき』単発ドラマ(フジテレビ系)※月曜ドラマランド

▶︎1986年9月『スローステップ』連載開始(ちゃお)~91年3月

▶︎1986年12月 劇場版(アニメ)『タッチ2 さよならの贈り物』公開(監督:杉井ギサブロー)

▶︎1987年1月『ナイン』単発ドラマ(フジテレビ系)※月曜ドラマランド

▶︎1987年3月『陽あたり良好!』アニメ化(フジテレビ系)~88年3月

▶︎1987年4月 劇場版(アニメ)『タッチ3 君が通り過ぎたあとに』公開(監督:杉井ギサブロー)

▶︎1987年4月 『ラフ』連載開始(週刊少年サンデー)~89年9月

▶︎1987年6月 『タッチ』単発ドラマ(フジテレビ系)※月曜ドラマランド

―― いかがだろう。冒頭で述べた「80年代は、あだち充の時代だった」を可視化するとこうなる。壮観だ。それにしても、何ゆえ80年代にあだち作品がこうもハネたのか。

あだち充の “止まった時計” が、80年代、ピタリと時代と合致した


作詞家でプロデューサーの秋元康サンが唱える “止まった時計” 理論がある。曰く「止まっている時計は、日に2度合う」と。つまり、確固たる自分の世界を持っていれば、あるタイミングで “時代に合う” 瞬間がやってくる。時代の顔としてブレイクする、と。一方、いつも周囲に流される人生だと、永遠に時代から5分遅れで走り続けることになる――。

あだち先生のブレイク前、野球漫画といえば、いわゆる “スポ根” が主流だった。主人公は壮絶な特訓で魔球を編み出し、ライバルたちもその魔球を打ち破るため、時に生死に関わる特訓をした。それに対して、あだち先生が描く野球漫画は、登場人物たちがあまり練習しない。試合もそこまで白熱しない。ともすれば、試合が省略されることすらある。しかし―― そんな “止まった時計” が80年代、ピタリと時代と合致したのである。

「みゆき」はエンディング曲「想い出がいっぱい」をおいては語れない




かくして80年代、あだち充先生の時代がやって来た。実は、先に書いたメディアミックスの一覧の中で、省略したメディアがある。―― 音楽だ。主題歌を始め、エンディング曲、挿入歌、キャラクターごとのテーマ曲、等々。結論から言えば、あだち作品の音楽は、押し並べて良曲が多かった。それは、同氏のすべてのアニメ作品をフジテレビが手掛けたことと無縁ではない。同局は、ことアニメーションに関しては、作品の世界観を極めて大切にする局だからである。そして、制作会社も実にいい仕事をした。

例えば―― あだち作品で最初にアニメ化された、1983年の『みゆき』は、キティ・レコードを傘下に持つキティ・フィルムが制作を担当した。ある日、6年ぶりに海外から日本に帰国した、血の繋がらない妹・若松みゆき(声優はデビュー前の荻野目洋子だった!)と2人で、ひとつ屋根の下に暮らし始めた主人公・若松真人。彼は、同級生・鹿島みゆきにも思いを募らせ、そんな2人のみゆきの間で揺れ動く三角関係を描いた珠玉のラブコメだった。同アニメと言えば、なんと言ってもエンディング曲。キティ・レコード所属(当時)のH2Oが歌う「想い出がいっぱい」をおいては語れない。

 古いアルバムの中に
 隠れて想い出がいっぱい
 無邪気な笑顔の下の
 日付けは遥(はる)かなメモリー

作詞:阿木燿子、作曲:鈴木キサブロー、編曲:萩田光雄―― 紛うことなき名曲である。萩田サンの神イントロに始まり、キサブローさんの切ないメロディに、阿木サンの物語のような詞が一節、一節重なる名人芸。そしてH2Oのどこまでも澄んだ唯一無二のハーモニー。奇しくも、同じくひとつ屋根の下に暮らす年ごろの男女を描いたドラマ『翔んだカップル』(フジテレビ系)のエンディング曲「僕等のダイアリー」(作詞:来生えつこ、作曲:来生たかお)も彼らだった。この2人ほどエンディング曲が似合うデュオもいない。



あだち充、最初のオリジナル作品「ナイン」


続いては、アニメ版の『みゆき』から遅れること2ヶ月、同じくフジテレビで3本の単発アニメが作られた『ナイン』である。『みゆき』は音楽への造詣が深いキティ・フィルムが制作したが、こちらは伝説のアニメ演出家・杉井ギサブローを擁し、彼の古巣であるグループ・タックが制作を担った。そして、このチームも脚本・演出・音楽といい仕事をして、その結果、後の『タッチ』や『陽あたり良好!』も任される。

『ナイン』は先にも記した通り、あだち先生の最初のオリジナル作品である。名門進学校の弱小野球部が、1人の美人マネージャーと、彼女を慕う3人の野郎どもの活躍で、やがて甲子園出場を果たす物語。連載当時は知る人ぞ知る佳作だったが、あだち先生の『みゆき』と『タッチ』の大ブレイクで、過去作にも光が当たり、アニメ化された。同作で注目されたのは、毎回、倉田まり子サンが歌うエンディング曲『真夏のランナー』である。

 爽やかな 息を弾ませ あなたが
 いつもの坂道 駆けて来る頃ね
 気づかないことは 分かっているけど
 心の窓辺から そっと手を振るわ

作詞:売野雅勇、作曲:芹澤廣明。後にチェッカーズの数々のヒット曲を生む名コンビだが、当時は中森明菜の『少女A』を手掛けた新進気鋭の2人として知られていた。どこか懐かしいメロディと、疾走感あふれる歌詞が2人の持ち味。これをパワフルな歌声で歌う倉田まり子サンが実にハマっていた。



ところが、同曲は、単発3作目の完結編で突如、歌唱が作曲者の芹澤廣明サンに変更される。時に1984年9月――創刊前のFRIDAYがテスト版で出した号に、不運にも倉田まり子サンは投資ジャーナルの中江滋樹氏との2ショットが掲載される。後に、「投資ジャーナル事件」との関りも、2人の仲も何もなかったと証明されるが、一連の騒動に嫌気がさした彼女は芸能界を引退する。

視聴率は常時20%越え「タッチ」の圧倒的な量と完成度の高さ


そして、1985年―― あだち作品(アニメ)と音楽との親和性の高さを証明する最高傑作が登場する。同年3月から丸2年、フジテレビで放映された『タッチ』である。並行して劇場版も3作が公開された。音楽は『ナイン』から引き続いて作曲家の芹澤廣明サンが担当。彼は杉井ギサブロー率いる制作陣と同様、次作の『陽あたり良好!』も手掛ける。

さて、『タッチ』と言えば、全101話も作られた、その圧倒的な量と完成度の高さにある。視聴率は常時20%を越え、最終回は30.8%、和也が亡くなった回は31.1%もあった。そんな同アニメのオープニング5曲とエンディング4曲、更に劇場版の主題歌2曲を手掛けたのが芹澤サンである。その意味では、「あだちアニメの音楽とは、芹澤廣明のことである」と言っても過言じゃない。中でも、今も語り継がれる名曲と言えば、やはり同名主題歌のコレになる。

 呼吸を止めて一秒
 あなた真剣な目をしたから
 そこから何も聞けなくなるの
 星屑ロンリネス

作詞:康珍化、作曲:芹澤廣明。歌うは岩崎良美である。『タッチ』の世界観を表すのに、これ以上の楽曲はない。どこか懐かしくも疾走感あふれる芹沢メロディに、天才・康珍化の筆は芸術の匂いすら感じる。特に歌い出しの「呼吸を止めて一秒」は、日本のアニソン史に残る神ワードである。それをドキュメント感たっぷりに歌い上げる岩崎良美サンの歌唱力たるや。



ちなみに、同曲のオープニングは和也が亡くなる第27話まで使われるが、そのシークエンスのアートワークも絶品である。鉄橋のたもとで南が号泣するシーンもいいが、やはり冒頭、達也の顔にタイトルが重なるカットに尽きる。主人公の顔を隠す――これぞ、日本のアニソン史に残る神タイトルバックである。

これ以上ない秀逸なタイトル「背番号のないエース」


ストーリーは今さら説明するまでもないだろう。あだち作品の三大要素 “ひとつ屋根の下” “三角関係" “野球部” が見事に集約された逸品である。原作は全26巻中、和也はわずか7巻で亡くなるが、やはり7巻までの印象が強い。その意味で、3作が作られた劇場版も、その部分を描いた第1作が最も語られるが、こちらは原作と異なり、亡き和也に代わって達也がマウンドに上がるオリジナルストーリーに仕上がっている。そして、このエンディングを盛り上げる主題歌がまた絶品なのだ。

 好きな気持ちを打ち消しながら
 恋のマウンドひとりで降りる
 背番号のないエースさ

―― そう、「背番号のないエース」。作詞:売野雅勇、作曲:芹澤廣明と、やはり、最後はこの2人のコンビに行き着く。これ以上ない秀逸なタイトルで、曲・詞とも素晴らしい。そして、その世界観を切なく歌うラフ&レディの2人の声が、また胸に迫る。もはや、この曲が先にあって、それに合わせて劇場版のストーリーが作られたと思うくらいに完成度が高い。

これぞ、メディアミックスの妙である。


80年代アニメソング総選挙!ザ☆ベスト100

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2024.03.03
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カタリベ
1967年生まれ
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