6月15日
変わりゆく時代 — 国立競技場で開催された「オール・トゥゲザー・ナウ」②
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国立競技場で国際青年年記念「ALL TOGETHER NOW」が行われた日
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1985年6月15日、曇り空だったが雨の心配はなく、国立競技場には6万人を超える人が集まっていた。

会場のレイアウトもユニークだった。その後の国立競技場コンサートでは、正面席にステージが作られることが多く、客席はフィールド内にも設けられるが、この日はフィールドには一切客席は作られていなかった。そのかわり客席は全面的に解放され、本来の競技観戦のように満員の観客がフィールドを囲んでいた。

フィールド内には8つの円形ステージが、ぐるりと円を描くように配置されていた。ひとつのステージは直径10.8メートル。それぞれのステージにはアンプや楽器がセッティングされた状態になっていて、ブロックごとに8つの円形ステージが演奏時に交代でセンターに移動するのだ。これによって、セット替えの時間を節約して、限られた時間で多くのアーティストが演奏できる。この大がかりな仕掛けのために、投入される機材料は膨大なものだった。

配られた資料によれば、使用されたマイクは350本、コードの長さは5,000メートル。使用スピーカー854ユニット、アンプ266台。PA用メインコンソール17台、録音用コンソール14台、電源車13台、音響用スタッフのべ400人、大道具関係670人が投入され、スタッフ用弁当も5,000食用意されたという。

開演は午後4時。聖火台の下でファンファーレが演奏され、イベントがスタート。

司会役の吉田拓郎が登場して開会を宣言。最初のステージは吉田拓郎とオフコースの共演。オフコースのバックで吉田拓郎が「お前が欲しいだけ」を歌い、オフコースの「Yes・No」では吉田拓郎がコーラスに参加した。

2番目のステージはアルフィー。「星空のディスタンス」の演奏中、坂崎幸之助がトラックを一周するパフォーマンスを見せる。

ラッツ&スター、アン・ルイス、山下久美子、白井貴子が共演するステージに続き、武田鉄矢が会場をなごませるラジオ体操の時間。「贈る言葉」を聴かせたり、客席全体の三三七拍子をリードするなど、会場の空気をほぐして続くステージにつなぐ。

財津和夫とブレッド&バターのステージにはチェッカーズとつのだ☆ひろが飛び入りして、世代を超えたコラボレーションを展開。さらに南こうせつ、イルカ、さだまさしの共演に続いてはっぴいえんどが登場した。

「12月の雨の日」から始まるステージは30分弱と短いものだったが、ベテランらしく存在感あふれる演奏は見事なものだった。そして、これが名実ともにオリジナルメンバーによる最後のはっぴいえんどの演奏となった。ちなみにこの時の演奏はライブアルバム『THE HAPPY END』としてリリースされている。

はっぴいえんどに続いて登場したのは、やはりこの日の目玉のひとつとして再結成されたサディスティック・ミカ・バンドならぬサディスティック・ユーミン・バンド。ボーカルの松任谷由実に加えて、キーボードで坂本龍一が参加していた。さらにこのユニットで演奏された「今だから」では小田和正、財津和夫も登場し、歌声を聴かせた。

『ALL TOGETHER NOW』最後の出演者として登場したのは佐野元春 with THE HEARTLAND、そしてサザンオールスターズ。時代をリードするトップアーティストならではの圧倒的な演奏でイベントのトリを務めあげた。そしてエンディングにはイベントテーマ曲「ALL TOGETHER NOW」(作詞:小田和正、作曲:吉田拓郎)が演奏され、4時間半に及ぶイベントは幕を閉じた。

資料を見返しながら、あの日の気分を思い出してきた。それはけっして熱狂的ライヴという感じではなかった。しかし、アーティストたちがコラボレーションしながら作り出していった空気感には、どこか陽だまりのような暖かさが感じられた。

それまでの時代を作ってきたアーティスト、まさに今を作っているアーティスト、そしてこれからの時代に羽ばたいていこうとするアーティストが同じ場を共有して、ひとつの世界を繋いでいく。そこには、アーティストからアーティストへと受け渡されていくものが確かにあったと思う。

今振り返れば、あのイベントが時代の変わり目を象徴していたんだということもわかる。後に細野晴臣がこのイベントを「ニューミュージックの葬式」と評したそうだけれど、誤解を招きかねない言い方かもしれないが、僕もその見方に同意する。

『ALL TOGETHER NOW』は、フォーク、ロックと呼ばれていた音楽がニューミュージックとなり、さらにJポップへと変わっていく。そんな音楽シーンの流れを時間軸で捉えてみせたイベントだった。そこに時代の変化によって失われてゆくものを見るのは不自然なことではない。しかし、決して過去にノスタルジックな目を向けるだけではなく、ひとつの時代を作ったアーティストが今をどう生きているのか、という視点でシーンを観ていく必要もある… ということを示唆するイベントでもあったのだと思う。

さらに余談になるけれど、『ALL TOGETHER NOW』の資料を見直し、ライオン株式会社が協賛企業だったことにも興味がそそられた。ライオンといえば、1966年のザ・ビートルズ来日公演(6月30日~7月2日)の協賛企業(当時はライオン油脂とライオン歯磨)でもあった。偶然かも知れないけれど、複数の時代のエポックを飾るイベントに係った企業は、いったい何を考えていたのだろう。そんなことも、面白いテーマになるかもしれないなどと思う。

2018.06.15
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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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